何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

湯ノ台道を歩いてきた

滝ノ小屋を望む。小屋が道の中間地点にあたります。

 というわけで先日、鳥海山の湯ノ台道を歩いてきました。
 湯ノ台コースは鳥海山登頂最短ルートとして知られています。しかしそれは高原ラインで滝ノ小屋近くまで行けるようになったため。本来はふもとから登っていくもっと長い道です。これを「湯ノ台道」と称します。
 高原ライン経由の道は以前歩いています。ですので未踏の前半部分が気になって、新緑も見頃だろうからと、今度はこちらを歩きに行ってきたのでした。

横堂手前の森。このあたりの新緑は見頃を迎えていた。

 登山口は猛禽類保護センターや鳥海高原家族旅行村があるあたり。今回は旅行村のところから横堂を経由し、滝ノ小屋から河原宿まで行くつもりで登り始めました。
 序盤はブナ林の中を進みます。このあたりはすっかり雪も解け、新緑がまぶしいです。そしてわりと急(おい)。標識は少なめですが、道跡ははっきりしているので迷う心配は少ないでしょう。そして横堂で稜線に上がったら、基本尾根伝いに滝ノ小屋を目指します。

残雪の森。この時期こういうところが迷いやすい。

 しかしさすが鳥海山。そう簡単ではありませんでした。進むにつれて残雪が増え始め、しまいにはどこが道かわからないという有様に。目印のリボンを追いながらだましだまし歩くうち、そのリボンも途絶え、行く手を見失ってしまいます*1
 戻るか、もう少し粘って目印らしきものを探してみるか。しばらく逡巡して、やはり戻ろうかとおもいはじめたところ、後続の登山者さんがやってきました。あいさつすると、これから月山森の方まで上がる予定だから、途中まで一緒にどうぞというお返事が。ありがたく乗っかることにしたのは言うまでもありません。

湯ノ台道から高原ラインを見下ろす。
車道はところどころ雪に埋もれている。

 登山者さんは二人連れで、たびたび鳥海山に出入りしているとのこと。迷う様子もなく、雪や柴だらけの尾根を進んでいきます。今年は雪解けが早く、中途半端に茂みが現れているおかげで歩きづらいとか。例年今頃はもっと雪が残っていて、快適に歩けるのだそうです。荒井にとってはこれでも多いというのに。鳥海山の豪雪ぶりをおもいしります。
 標高950mを超えたあたりから残雪が増え始めます。合流してから歩いたルートはところどころ夏道が出ているところもあるものの、大半は雪の下でした。このあたりのブナはまだ芽吹いたばかり。新緑までは今少しといった具合です。森の切れたところは天然のゲレンデ。山スキーで滑りに来る方も多いのだとか。目の前には遮るものなく山頂が大きく望めます。

滝ノ小屋。春スキーを楽しみに来た一団が投宿していた。

 かくて登山者さん達のおかげでなんとか滝ノ小屋に到着。荒井は来た道を単独で迷うことなく引き返せる自信がないので*2、ここで撤退を決定。河原宿まで登るのはやめにして、余裕があるうちに、確実に道がわかる高原ラインをたどって下ることにしました。
 さらに登っていく登山者さんらにお礼を述べて見送った後、昼食を平らげたところで、一人高原ラインに向かって下山開始。こちらのほうは道を厚く覆うほど雪が残っている上、見通しもきいたので、中腹までは相当なショートカットができました。

高原ラインに降りる途中にて。沢も森も覆い尽くす残雪。

 路上の雪もなくなったあたりに、車が数台停まっていした。高原ラインはまだ冬季閉鎖中ながら、春山に登るため、ここまで上がってきている登山客が多いようです。ここで運良く、様子を見に来ていた一人のご老公と遭遇。歩いて下るのは大変だろうと、ご厚意で車に便乗させてもらえることになり、残る長い区間を下まで送り届けてもらったのでした。

高原ラインを下る。
距離は長くともこちらの方が安全確実と判断した結果。

 春の鳥海山は素晴らしい一方、想像以上に「おっかない」という印象でした。判断を誤ればいともたやすく危険に陥る箇所が、そこかしこに潜んでいます。
 結果的にはなんとか滝ノ小屋まで行って、楽々と戻ってくることができたわけですが、数々の僥倖のおかげです。一人では何もできねぇなと、己の力不足を痛感する山登りでありました。途中出会った登山者さんとご老公、どうもありがとうございました!

昼餉。ドライカレーにカレーをぶっかけたやつ。
カレー・オン・カレーなる暴挙(おい)

*1:湯ノ台道のブナ林にはところどころ松が植わっていて、これを目印にできるとのこと。先人が道しるべ代わりに植えたものであると、後述の登山者さんが教えてくれました。

*2:雪の上には来た時の足跡が残っているはずなのだが、ところどころ夏道も歩いているため、不慣れな自分はそこで足跡を見失う可能性が高いと判断したのだ(泣)