何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

月山森に登ってきた

月山森と千畳ヶ原。今回は新山目指しません

GR III。PhotoShop Elementsで縮小


 というわけで登ってきた山の話その1。
 今度の休みは晴れるという天気予報に居ても立っても居られず、飽きもせずまた鳥海山に行ってきました。今回の目的は登頂ではありません。かねてより気になっていた千畳ヶ原を歩いてきました。鳥海山今季5度目(おい)。
 千畳ヶ原は、鳥海湖の南東にある湿原です。一帯は広大な草原で、秋になると草紅葉が色づいてそれは見事なものだという評判です。
 おなじみ湯ノ台コースからは、河原宿から分岐する登山道で行けます。今回はこちらを利用して、鳥海湖まで往復するというルートを歩いてきました。それとせっかくなので、途中にある小ピーク・月山森にも登ります。

10月週末の高原ライン終点。
秋の鳥海山を楽しもうという人々が集結しているらしい。

 朝7時半前に高原ライン終点に到着。紅葉シーズンの週末だからか、駐車場にはここでこれまで見たこともないほどの数の車がすでに駐まってました。かろうじて空いていたスペースに滑り込み、身支度をして登山開始。滝ノ小屋から最初の難所・八丁坂を登り切り、河原宿に到着すればひとまずひと安心です。

干上がる澄郷沢。河原宿は原宿と化している(おい)

 この夏の猛暑で、鳥海山はだいぶ水が減ったようです。滝ノ小屋前の水場は停止中。澄郷沢は干上がり、滝ノ小屋の脇も河原宿のところもさっぱり水がありません。家から多めに水持ってって助かったぜ。

山頂方面から逸れ月山森へ。
いつもの道から離れるのってワクワクするよな。

 河原宿を過ぎると、月山森への分岐を示すペンキ字が現れます。これを目印に山頂からの道から離れ、千畳ヶ原方面の道に入ります。毎度脇を通る際、こっちには何があるんだろうと気になりつつも素通りしていた方です。






 千畳ヶ原への登山道に入ると、さっそく草紅葉が目の前に広がります。朝日があたりを照らし、歩いて楽しいことこの上なし。この先の道のりにも期待が高まります。
 この時期花はあまり見かけません。リンドウがちらほらと見える程度です。初夏に目を楽しませてくれたチングルマは綿毛も落ち、すっかり葉が赤くなっています。
 ボタ池なる小さな沼が見えてくると、月山森への登り口が現れます。ここで鳥海湖への道から逸れ、少し登りきると、月山森の頂上です。
 鳥海山なのになぜ月山。月山の眺めでもよいのだろうかと予想してましたが、あいにくこの日の月山は雲の中。確かめるのはお預けとなりました。

月山森山頂とそこからの眺め。
前に歩いた道を別の角度から眺める感慨。

 そのかわり反対側を向けば、外輪山や御浜方面が一望できました。猛暑で雪渓はすっかり雪が消え、石ころだらけの沢筋と化しています。そこから急斜面を登っていく道があざみ坂。あちらの稜線上に見える建物は御浜小屋。中腹はすっかり草紅葉に染まり、夏とは違った表情です。かつて歩いたあたりを目で追うと、新たな感慨が湧いてきました。

難所幸治郎沢。帰りもここ登った。

 月山森を下り西へ進むと、程なく目指す千畳ヶ原が見えてきます。しかしその前に、幸治郎沢なる急坂が待ち受けます。ここででかい岩だらけの急傾斜を100mばかり下らなければならず、コース中最大の難所となっています。上からのぞき込めば道らしいものは見えず、こんなところを下るのかと変な笑いがこみ上げてきます。滑ったら当然大けが。早く先に行きたい焦りを抑え、岩を掴みつつ、注意しながら下りました。新山より大変だったぜ(おい)









 幸治郎沢を下りきれば、お待ちかねの千畳ヶ原です。あたりは真っ平ら。一面に黄金色の草原が広がり、その真ん中に木道が一本続いています。こんもりと向こうに見える丘は扇子森。鳥海湖もあのあたりです。周囲の山肌はぼちぼち紅葉し、緑の中にちらほらと黄色や赤が混じります。草紅葉と織りなす風景は、あたかもパッチワークのよう。鳥海山の懐に、こんな場所があったとは。あこがれた風景の中を、今自分もその一部となって実際に歩いていることに、無上の喜びをおぼえました。

最後の登り返しからの光景。このあたりまで来ると新山が見えてくる。

 途中岩がちな沢をいくつか渡りつつ、ふもとから上がってくる万助道と蛇石流で合流した後は、少々きつい登りとなります。でも道がきちんと整備されているので、歩きづらさはありません。ここをひとふた登りして、目的地の鳥海湖に到着。長坂道に至る一角の眺めのいいところに陣取り、ここで昼休憩にしました。





 この夏あざみ坂から見た鳥海湖は、かなり干上がっていました。あれから何度か雨が降ったおかげで、いくらか水量が持ち直したようです。湖と山並みの奥には、先日初冠雪した新山が据わっています。だいぶ解けたにもかかわらず、ちらほらと白くなっている岩肌がはっきり見えます。
 少し離れた御浜の方からは、賑やかな声がこちらまで聞こえてきます。見上げれば結構な数の登山客が一休みしています。そこそこ天気に恵まれた秋の週末、あちらの方もたくさんの登山客が登りに来ているようです。
 こちらの目の前では、休憩している登山者さんがカップ麺をすすって「サイコー!」と声を上げています。これに続けと荒井も昼餉にして、サイコー!の気分を味わいました。

千畳ヶ原を引き返す。
山頂を目指さない山歩きはガツガツしなくて好いですな

 ここから鳥海湖を一周するのもよいですが、余裕をかんがえて、無理せず今回はここで折り返します。来た道を引き返し、ふたたび至福の千畳ヶ原を横断し、河原宿を経由して滝ノ小屋に戻ってきたのでありました。

千畳ヶ原スコリア堆積地露頭。
千畳ヶ原を構成する火山性噴出物が間近に見られる。

 小屋前では、管理に当たっているとおぼしき方が、薪の準備をしてらっしゃいました。月山森に登って千畳ヶ原を歩いてきましたよと話すと、とてもいいところだったでしょう、と嬉しそうに仰っていました。
 登山口に戻る道中、小屋に向かう方々の一群とすれ違いました。小屋は夏期の有人営業を終え、冬支度の最中のようです。管理に携わっている方々が、夏の片付けや冬の準備をするのでしょう。鳥海山の山登りは、この山を愛する人々によって支えられています。

八丁坂を下る。滝ノ小屋が見えてひと安心。

 時季と天気を読んだ甲斐あって、なかなか好いときに行ってくることができました。今回はかねてから気になっていたところに足を運んで大いに満足しましたが、「別の季節の様子も見てみたい」「もっと天気がいいときに行ってみたい」等々、欲はとどまることを知りません。鳥海山はどこを何度歩いても何度登っても飽きるということがありません。
 多分これが今年最後の鳥海山通いとなるでしょう。とりあえず来年は長坂道から笙ヶ岳に登ってみたいとおもいます(おい)。


 例によってコースタイム。今回は時間に余裕を持たせたおかげで、帰りに酒田のとがしスポーツさんに寄って、モンベルの限定鳥海山Tシャツ買えたぜ。


7:25/登山口-7:38/滝ノ小屋-8:17-8:22/河原宿-8:25/月山森分岐-8:42/ボタ池-8:53-9:10/月山森-9:22/幸治郎沢-9:48/千畳ヶ原-10:05-10:11/T字分岐-10:24/蛇石流分岐-10:40-御田ヶ原分岐-10:45-11:28/鳥海湖-11:36/御田ヶ原分岐-11:49/蛇石流分岐-11:53/千畳ヶ原-12:01/T字分岐-12:17/幸治郎沢-13:05-13:10/河原宿-13:52滝ノ小屋-14:08/登山口

帰りに見た鶴間池。こちらもそろそろ紅葉ですかね。