GR III。PhotoShop Elementsで縮小
今年やりたいことのひとつとして、チョウカイフスマの花を見るというのがありました。チョウカイフスマとは鳥海山固有の植物のひとつです。その生態やたたずまいなどから、鳥海山を代表する高山植物とされています。
鳥海山に出入りするようになって、その名前を知るようになったものの、これまで開花時期以外にしか登ったことがないため、実際に咲いているところを見たことがありません。ですので鳥海山に登るようになったのなら、その山を代表する花というものをぜひ見てみたいなぁと、機会をうかがっていたのでありました。
というわけで梅雨が明け、いよいよ開花時期を迎えた先日、飽きもせずまた鳥海山に登ってきました(おい)。
チョウカイフスマが自生するのは外輪山付近の砂礫地。盛夏に花が咲きます。ですので見に行くにはその時期に頂上付近まで行かなければなりません。夏の鳥海山のてっぺん付近にしか咲かない花、と言うと幻の花感がありますな(おい)。
コースは先月下見済み。吹浦の大平口から自生地である外輪山を回ってくるというルートを採ります。先月行かなかったのがくやしいので、この際新山にも登ってきます(おい)。
日帰りのため出発は早めです。夜明けとともに家を出て、遊佐町の街中の湧き水で水を補充し、道の駅隣のファミマで朝食を買い込み、サンセット十六羅漢の駐車場で平らげてから、登山口に着いたのが朝6時半。駐車場に車を置き、すかさず登り始めます。
先月以上に雪は消えています。雪原状態だった清水大神やとよはすっかり夏道が現れています。一部沢と化していた登山道はもちろん干上がっていました。満開だったチングルマは多くが綿毛になっています。それでも残雪があったあたりは咲くのも遅いようで、ちらほらと花が残っていたりします。河原宿で水を補充し、愛宕坂から御浜に向かいます。
先月の鳥海湖は、あたり一面ハクサンイチゲやミヤマキンバイが満開でした。しかし一月経った今はあらかた姿を消し、湖面の氷もありません。一月でまるきり変わるのだなぁとしみじみ季節の移ろいを感じつつ先を目指します。
これからの登りに備え、七五三掛で早めの昼休憩にします。ルートはこの少し先で外輪山に上がる道と、千蛇谷に下りる道に分岐します*1。今回は外輪山ではなく、千蛇谷を選択。新山を目指す場合、虫穴そばの断崖を下りる必要がない分、外輪山を経由するより新山に近いことと、先月外輪山から見下ろすうち、歩いてみたくなったのが主な理由です(おい)。
分岐から急な下りで谷底に下りれば、あとは新山目指してひたすら登ります。この一月で雪は解け、雪渓はだいぶ小さくなっていました。それでも吹き渡る風は涼しく、道中はなかなか快適です。少し立ち止まればたちどころに汗が退いていきます。
鳥海山は火山です。外輪山のすぐそばから切れ落ちる千蛇谷の地形は、山体崩壊によってできたものと考えられています。2500年ほど前、山頂付近が大きく崩れたおかげでこの谷が現れ、その岩屑が象潟方面になだれ込み、九十九島と呼ばれる名勝を形作ったのだとか。
谷底には大きな岩がゴロゴロしています。山体崩壊の際は、こんなのがいくつも流れてきたのでしょう。自然の迫力に圧倒されつつも、えげつない急登がなく*2、両手両足を使ってよじ登るような難所もないので、外輪山コースと比べて気が楽なのが良いとこですな(おい)
歩くほど近づいてくる新山を見上げ、あたりがゴツゴツとした岩だらけになると、見覚えのある大物忌神社本殿が見えてきます。
新山への登りに取りかかる前に、あたりを見回してみます。すると白くて小さな花がそこかしこに群落を作って咲いています。これがお目当てのチョウカイフスマです。
チョウカイフスマは小さいです。花の大きさは2cm足らず。背も高くありません。そんな花が鳥海山を代表する植物となっているのは、その山頂付近の砂と岩だらけで冬になれば大雪に覆われる場所、いわば鳥海山で最も過酷な場所にしか自生しないという植生と、にもかかわらず可憐な花をいっぱいに咲かせるからなのでしょう。チョウカイフスマは遊佐町の花に指定されていたり、地元学校の校章にもなっていたりします。
花を目に収め、新山の山頂に立てば、あとは戻るだけ。前回歩いた外輪山を引き返します。先月いなかったトンボの大群は、いかにも夏山らしい光景です。噂どおり、そして外輪山の随所でもチョウカイフスマを見つけられました。今回一番の懸案は、果たして花が咲いているかどうか。時季を待った甲斐あって、無事念願を果たすことができました。
この時点でだいぶ時間が押していたので、あとは来た道をまじめに引き返し、16時過ぎに大平登山口に帰還。あとは車でブルーラインを下り、ふもとで鳥海高原ヨーグルトや吹浦産の岩牡蠣など仕入れた後、無事うちへともどってきました。
この日は雨こそ降らなかったものの、上の方は雲がちで展望はあまりなし。そのかわり厳しい日差しもなく、花を見たり歩くのには悪くない条件でした。恐れていた落雷もなく、夏らしい山歩きをおもう存分満喫。週末開けの月曜日だったからか、夏山の最盛期であるにもかかわらず、登山客も意外に少なめでした。
前回の反省を踏まえ、今回は十分休みを摂りながら歩きました。その甲斐あって、バテたり足がつりそうになるというトラブルは避けることができましたが、そのかわり予定していたタイムより1時間ほど遅くなってしまいました。水や食料を余分に持ったため、装備重量がかさんだことも一因でしょう。
例によってコースタイム。鳥海山は登る度に新しい課題が見つかります。歩いてみたいコースもまだあります。何度登っても飽きるということがありません。今後も入り浸るぜ。
6:32/大平登山口-7:08/見晴台-7:32-37/清水大神/8:00-18/河原宿-8:28/愛宕坂-8:44-59/御浜-9:13/御田ヶ原-9:41-10:00/七五三掛-10:07/千蛇谷分岐-10:20/千蛇谷-11:22-44/大物忌神社本宮-12:02-10/新山-12:30/本宮-12:50/虫穴分岐-13:06/行者岳-13:20/伏拝岳-13:45/文殊岳-14:04/千蛇谷分岐-14:11-19/七五三掛-14:46/御田ヶ原-14:58/御浜-15:10/愛宕坂-15:21/河原宿-15:32/とよ-15:42/清水大神-15:53/見晴台-16:20/大平登山口