何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

一行プログラム五題

「どこまでつづいていくのかな」

 1990年当時、MSX・FAN誌は1行プログラムに力を入れており、何度か特集が組まれました。9月号の特集では、5本の作品が掲載されています。というわけで今回はその五本を一挙ご紹介。


 1本目「どこまでつづいていくのかな」。スクリーンショットにはスコアしか表示されていませんが、それもそのはず、本作は音を聴くゲームです。実行すると効果音が鳴り始めます。音は次第に高くなっていきます。限界ギリギリの所を狙ってスペースキーを押しましょう。粘った分が得点となります。限界突破するとゲームオーバーです。編集部曰く「音のチキンレース」。単純明快かつ駆け引きがある良品です。ところで鳴ってる音がシェパードトーン*1だったらイヤですな(おい)。

「200年カレンダー」

 2本目「200年カレンダー」は実用プログラム。カレンダーを表示するプログラムで、暦を見たい年と月を入力すると、その月のカレンダーが表示されます。この手のプログラムは”万年カレンダー”とも呼ばれますが、プログラムの都合上、正確に表示できるのは1900年3月からから2100年2月までの200年間。だから「万年」ではなく「200年」。あと78年したら使えなくなります(おい)。
 プログラム自体はなかなか実用的です。まだ2022年だもんな。

「DOWN DRAGON」

 3本目「DOWN DRAGON」はいわゆるスキーゲームのバリエーション。ひたすら障害物を避けるタイプのスクロールゲームです。緑色の”*”を操り、迫り来る赤い炎"WWW”*2をひたすら避けましょう。当たればゲームオーバー。それまで移動した距離がスコアです。
 この手のゲームはそれこそ数多く作られ、1行プログラムにも名作「DOWN DOWN」シリーズが存在します。他との違いを明確に打ち出せなければ採り上げてさえもらえないジャンルにおいて、本作はキャラクターごとに色設定をしているところが優れています。
 1行プログラムは255文字で完結しなければなりません。ルールの実装が最優先であるため、演出の優先順位はどうしても下に置かれてしまいます。そんな状況できっちり色設定処理を盛り込んだのがお見事! 単色で成立するゲームであっても、色が付くとやはり見栄えや楽しさが違います。

「Guln Guln」

 4本目「Guln Guln」は本特集の大本命。変型ヨッパライゲームとでも呼ぶべきアクションゲームです。ヨッパライ式に移動する自機を操り、画面内を7周しましょう。渦状に進むから「ぐるんぐるん」というわけですな。
 ただのヨッパライゲームと侮るなかれ。本作では外周に向かって重力が働いており、スペースキーを押すと画面中心に向かって上昇し、離すと外に向かって下降します。外周や自機の軌跡にぶつかるとアウト。スペースコロニーでヨッパライをしたらこういうかんじになるのだろうかというのはさておき、よくあるヨッパライとは異なる感覚が新鮮です。
 周回が進むほど進める場所は狭くなります。先を見越したライン取りと、微妙な操作ができなければ、7周達成は叶いません。一周するごとに軌跡の色が変わり、何周目かが一目でわかるのは、地味に優れた工夫です。1行プログラムでこれだけやればたいしたものですが、操作性の悪さが惜しいところです。

「Down Down Down」

 5本目「Down Down Down」。こちらもヨッパライゲームです。上下の壁にぶつからないよう、洞窟を突き進んでいくのは他と同様。しかし洞窟の構造が他とはひと味違います。洞窟は右下から左上へと流れていき、題名のとおり、ひたすら右下右下へと下っていきます。自機の速度や慣性の付き方も絶妙な難しさで、不思議な降下感覚が味わえます。
 ゲームオーバーになるとスコアを表示してプログラムが終了します。再開するには再び実行しなければならないのは少し面倒。欲を言えば、リトライ機能はぜひ欲しかったです。


 編集部のコメントによれば、この特集を組むに際して、どれを載せるか迷うほど良質な作品が集まったのだそうです。事実、特集ごとに作品のレベルが上がっている印象を受けます。
 一行に全てを詰め込み完結させる1行プログラムは、究極のプログラムでないかという感があります(おい)

*1:音の錯覚。無限に上がり続けたり下がり続けたりするように聞こえます。

*2:World Wide Webとか草ではありません