何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

刈田岳に登ってきた

刈田岳から見るお釜と熊野岳の図。
そういや車やリフトで来たおぼえがない(おい)

GR III。PhotoShop Elementsで縮小・切り出し


 獅子ヶ鼻湿原を歩いた程度では、登りたい欲は到底満足できません*1。そろそろ高い山に登らないと死んじまうぞ(おい)ということで、こないだの休日、蔵王に登ってきました。
 今回は久々に熊野岳を目指します。手を変え品を変え何度となく訪ねているところですが、今度は坊平からスキー場のゲレンデを上がっていくルートで登ることにしました。しばらく前から気になってた割に、これまで一度も歩いたことがありません。

坊平のお清水。毎度お世話になっております。

 スタートは蔵王ライザワールド。駐車場が広いので、車を置く場所には困りません。駐車場の片隅に車を駐め、ゲレンデを少し登ればすぐお清水の森に到着。ここの水場で水筒に湧き水を詰め、すぐ隣の階段を上っていきます。良い湧き水が得られるお清水の森は、坊平を起点にするコースのありがたい存在です。
 お清水の森は、ライザワールドのゲレンデのど真ん中に、そこだけ取り残された島のように存在しています。どうしてスキー場開設に伴い伐採されなかったのだろうと森を登っていくと、すぐに答えがわかりました。木々の間に無数の石仏が立っているのです。

ブナ林と石仏の数々。参詣者が奉納したものらしい

 もともとこの森は、蔵王信仰の要地だったのだそうです。蔵王詣での入口にあたり、かつては宿坊もあって、各地から集まってくる参詣者で賑わったのだとか*2蔵王信仰に関わる霊地とあらば、観光開発が進んだ時代にあっても、無下に切り倒すことはできなかったのでしょう。ここが蔵王の登山口であり、一大拠点となっている背景には、古来の蔵王信仰があるのです。
 ともあれこれら仏様に護られた森は周囲がスキー場であることを忘れてしまうほど緑が深く、ブナの大木もあちこちに生えています。お清水の森は確かに立派な森であることに、今さらながら気づいたのでありました。

ゲレンデを登る。
森を抜けてからのこの区間が一番キツいです(おい)

 標高1240m付近で森を抜けると、しばらくゲレンデ歩きとなります。スキー場ですから傾斜はあるし日当たり最高(泣)。歩いているゲレンデのすぐ脇には日差しからかくまってくれそうな林があるものの、そちらに登山道はありません。
 夏の太陽に炙られ、ひぃひぃ言いながら登ること約200m。ゲレンデが終わり、ようやく本格的な登山道が現れます。

どんどん登る。登山道はエコーラインのすぐそばだ

 このあたりまで来ると、あたりにはアオモリトドマツことオオシラビソ、樹氷の骨となる木が目立ってきます。勾配はキツくもなくゆるくもなく。蔵王らしいトドマツの森を歩いていると、ときおり車の音が耳に入ってきて、エコーラインから遠くないことに驚きます。

馬の背から熊野岳へ。こんな人の少ない蔵王は初めてだ

 エコーラインは東北有数の観光道路です。そんな道路のすぐ脇に、こんな自然豊かな道があるなんて。改めて蔵王は好いなと登るうち、何度も通い慣れた刈田峠の駐車場が現れます。ここでトイレを借り、リフト脇の登山道を登り詰めれば、お釜はもう目前。馬の背を渡り、最後のガレ場を登りきれば、蔵王最高峰・熊野岳の山頂に到着です。

山頂から北を眺める。
右上にかすかに見えるのはたぶん鳥海山だよな?

 お盆明けの平日だからか、山の上はいつになく静かです。蔵王なのでもちろん人の姿はありますが、盛夏ほどの賑わいではありません。いつの間にやら雲が増えて日差しはやわらぎ、あたりは涼しくいたって快適です。ふもとはよく見えないもののガスはなく、お釜はくっきりはっきり見えました。目をこらせば、地蔵山の奥の方の雲の上に、鳥海山らしき山のてっぺんが拝めます。夏の終わりの蔵王もいいもんです。

熊野岳から刈田岳を眺める。
雲こそ多かったがあたりはそれなりに見えた

 熊野岳から馬の背に下りていくと、反対側の刈田岳がよく見えます。時間も十分にあることだし、気が向いたのでこちらにも寄っていくことにしました(おい)。
 刈田岳は熊野岳の一つ南のピークです。直下まで蔵王ハイラインが通じており、レストハウスもあります。そのため車でやってきた観光客は、こちらを目指すことが多いようです。リフト乗り場を過ぎると人の数が格段に増え、大半は街着と変わりない軽装でお釜を見物してたりしています。

刈田嶺神社。何度も目にしている割に来たの2回目(おい)

 熊野岳に登るたび、刈田岳も目にはしています。しかしかえりみるに、登ったのは十数年前にたった一度しかありません。熊野岳からすぐ行ける距離で、行く機会も何度もあったにもかかわらず、なかなか足を運ばなかったのは、いつ行っても人が多いからかもしれません。

伊達宗高公命願碑。
寛永年間の大噴火を鎮めた恩人として領民に慕われる。

 山頂には刈田嶺神社があります。大きくて目立つので、遠くからでもよく見えます。神社の前には石碑がいくつも立っています。その中のひとつ、伊達宗高公の記念碑には、落雷で付いた稲妻模様がくっきり残っており、穏やかなだけではない、蔵王の自然の荒々しさも感じられました。

三等三角点「刈田岳」。神社のすぐ脇にあります

 刈田岳には三角点もあります。場所がわからずあたりをうろうろしていると、神社前のおみくじ掛けに「三角点神社の左上」なる掲示を見つけ、無事発見できました。初めて見た刈田岳の三角点に大いに満足です。

御田ノ神近辺の風景。晩夏にチングルマが拝めるとはおもわなかったぜ

 帰りは来た道を引き返しますが、途中、御田ノ神園地に寄ってきました。園地はエコーラインの脇にある高層湿原です。車や単車で通るたび、なんとなく目にしていながら、立ち入ったことは当然一度もありません。せっかくだからと寄ってみると、芝草平に負けない規模で、季節外れのキンコウカやチングルマの花までちらほらと咲き残っています。エコーラインのすぐそばにこんないい場所があったのか。満開の時期になれば、それは見事な光景が拝めるのでしょう。蔵王に来る楽しみが増えました。

途中見かけたものいろいろ。コマクサやアサギマダラにも会えるとはおもわなかったぜ

 今回のルートは、なかなか意外でした。エコーラインのすぐ近くにもかかわらず、まさかここまで自然豊かで変化に富んだ登山道だったとは。さらにどこでも人の気配がする蔵王のはずなのに、あまり人の姿を見かけません。刈田峠やお釜周辺を除けば、独りの登山客とも行き会いませんでした。スキー場やエコーラインに極めて近いため、あえて歩こうという人が少ないのかもしれません。

途中見かけた慰霊碑。
昭和31年、観光開発調査中、
猛吹雪で命を失った二人の調査員を弔うもの。

 登山道は比較的明瞭です。案内標識や地図を見ながら登っていけば、迷うことは少ないでしょう。トイレ等の施設もいくつかありますし、何かあったらエコーラインに逃げられるので、初心者にもお勧めしやすいかとおもいます。


 例によってコースタイム。次は中丸山と周回したい。


8:07/ライザワールド駐車場-8:16-8:23/お清水-8:28/石仏-8:36/クアオルト12番ポスト-9:00-9:05/かもしかパノラマコース分岐-9:13/迂回コース-9:30/御田ノ神-9:33/クラーク・阿部顕彰碑-9:48-9:53/刈田駐車場-10:17/お釜-10:47-10:10/熊野岳山頂-11:50-12:15/刈田岳-12:37/刈田駐車場-12:45-13:01/御田ノ神-13:15/迂回コース-13:21:かもしかパノラマコース分岐-/13:36/クアオルト12番ポスト-13:40/姥神様-13:44/お清水-13:54/ライザワールド駐車場

締め。高源のゆとコストコローストポークサンドイッチ
サンドイッチデカかったがわりとペロッといけた

*1:念のため獅子ヶ鼻湿原はスゴい良いから折に触れて歩きに行くことをオススメします。

*2:そもそも「坊平」という地名が、ここに宿坊があったことを示しているのだろう。