何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

不忘山に登ってきた

屏風岳を過ぎたあたりから見る不忘山の図

GR III。PhotoShop Elementsで縮小


 というわけで不忘山(ふぼうさん)に登ってきました。不忘山は南蔵王の一座です。標高は約1705m。場所は蔵王連峰の最南端。前からなんとなく関心を持っていたところ、去年中丸山経由で熊野岳登った際蔵王エコーライン越しに南蔵王の山々が連なるのを眺めて「エコーラインを使えばあちらにも登れるんでないか?」と気付いてしまい、だったら次はこちらだ、と登ってきたのでありました。蔵王だから夏でも涼しいし、たびたび変な病気がはやっていても人混みを避けられますし、荒井的な見どころもいろいろです。
 というわけで朝9時前に行動開始。エコーラインの道路工事のため登山口そばの駐車スペースが使えず、だいぶ手前のリフト乗り場に車を駐め、そこから15分ほど歩く羽目になりました(泣)

キンコウカでいっぱいの芝草平。その名は駒草平に対抗したのか(おい)。
ついでにチングルマはすっかり散っていた。

 今回歩いたのは南蔵王縦走コース。蔵王ハイラインの足元から屏風岳経由で不忘山に至り、そこから同じ道を引き返してくるというものです。登山道自体は白石市のスキー場を経て、硯石までつながっています。
 さすが蔵王の登山道。非常によく整備されています。そのむかし刈田峠の写真を撮るべく、避難小屋のあたりまで何度か出入りしたことがありました。道は至って明瞭で標識も充実。ところどころ階段や木道もあり、歩くのに困りません。えげつない急勾配や際どい痩せ尾根などもなく、やすやすとたどり着けたことをおもいだします。それは数年経った今も同じで、比較的らくらくと前山・杉ヶ峰と2つのピークを通過。キンコウカが満開の芝草平の湿地帯を通過してひとのぼりすれば、屏風岳に到着です。

屏風岳に到着。三角点は半分藪に埋もれてました。

 屏風岳は標高1825m。宮城県の最高峰です。遠くから見るなだらかな山容はまさに屏風のごとし。こちらには荒井的見どころのひとつ、一等三角点が埋設されてあります*1。一等三角点のある山は眺めがいいものですが、山頂付近は背の低い木に囲まれ、すっきり見渡せるというかんじではありません。それでもところどころ木が開けたところからは、周囲の山並みが望め、なるほど、一等三角点の山の面目躍如です。
 ちなみにそこからゆるやかな尾根道を1.5キロほど辿ったところにある南屏風岳の方が、開放的で眺めもよいです(おい)。

目の前に屹立する不忘山。これからあの急斜面を登るんだぜ。

 さて、らくらくと歩いてこられるのはここまで。道はここからいきなり険しくなります。登山道はえげつない急勾配の際どい痩せ尾根に変わり、しかも足元はガレ場の連続。落石や転落にも注意しなければなりません。この期に及んでこんなに険しくなくてもいいのに!とおもわずグチもこぼれますが、文句を言ってもしかたがありません。蔵王はやはり蔵王なのです。

不忘山山頂とそこからの光景。条件がいいと松島あたりまで見えるらしい。

 かくしてえげつない急勾配の痩せ尾根を越えた末、ちょうどお午時に不忘山に到着。屏風岳とは全く異なる岩だらけのピークで、ここも火山の一角であることを感じさせます。雲のおかげでふもとの眺めは今ひとつながら、足元の長老湖はかろうじて見えました。
 不忘山に来た一番の目的は、この山頂ではありません。「不忘の碑」を拝むことが最大の目的でした。

荒井的な見どころその2「不忘の碑」。
将兵の方々はきっと痛かったろうし寒かったろうし怖かったろうな。

 そのむかし太平洋戦争の末期の3月、アメリカ軍の爆撃機B-29がこの山中に墜落しました。墜落したのは3機。3機が立て続けに近い範囲に墜落するとか蔵王に飛来した目的など謎は多いものの、いずれにせよ合計34名の乗組員全員が死亡するという惨事となりました。この墜落事故の犠牲者を悼み、永久平和を祈念して、1961年に地元有志が建立したのが「不忘の碑」です。
 山頂から東に300mばかり進んだところ、高度差にして50mほど下ったところに、件の碑はあります。あたりは大きな岩だらけの急なガレ場で、冬になれば雪に閉ざされるだろう険しい場所です。
 事故の当日、周辺は吹雪だったのだそうです。異国の雪山の奥地で果てることになった兵士たちの気持ちをおもうと、当時は敵であったとしても、自然と黙祷を捧げずにはいられませんでした。

不忘山に至る登山道から屏風岳を振り返る。
左は南屏風岳

 どこの誰がどんな理由でそう呼び始めたのかはわかりません。古くは蔵王連峰そのものを指す名称でもあったようです。「忘れずの山」とは、実によい名前です。

屏風岳への帰り道。夏空にトンボが飛んでいた。

 不忘の碑を拝んだら、あとは引き返すだけです。ふたたび南屏風岳に至る険しい区間をひいこら言いつつ下っては登り、屏風岳を経てエコーラインを目指します。日射しこそ強かれど、山上は高地ならではの涼しい風が吹き渡り、気分は爽快そのもの。他の登山客と何度かあいさつを交わすことはあっても、お釜や熊野岳周辺の人混みはありません。空にはトンボの大群が舞い飛び*2、北には刈田岳がくっきり大きく見渡せます。この時期の蔵王はガスがかかることも多いのですが、この日はいかにも夏らしい好天に恵まれました。かくして15時半過ぎに無事リフト乗り場に帰還。エコーラインを山形側に下り、蔵王を後にしたのでありました。

刈田峠近くまで戻ってくる。とにかく歩いたなぁ!

 登山道はほぼ山上の尾根道です。途中に水場というものがありません。飲み水は自分で担ぎ上げる必要があります。夏の暑い時期であることを考慮して、荒井は5リットルほど水を持参して臨みましたが、2リットル余りました(おい)。
 例によってコースタイムは以下のとおり。今回は時間の問題から昼食休憩は取らず、ちょいちょい行動食を摂りながらの行動です。歩行距離は往復約17キロ。基本小さな上り下りを繰り返すコースなので、登ったというよりひたすら歩いた、という印象です。


8:55/リフト乗り場駐車場-9:10/登山口-9:20/刈田峠-9:42/前山-10:05/杉ヶ峰-10:20/芝草平-10:41/烏帽子岳分岐-10:55-11:05/屏風岳-11:20/水引入道分岐-11:30/南屏風岳-11:40/アイハギの峰-11:57/二番機墜落地碑-12:01/不忘山-12:13-12:30/不忘の碑-12:40-12:46/不忘山-12:50/二番機墜落地碑-13:05/アイハギの峰-13:20/南屏風岳-13:43/水引入道分岐-13:49/屏風岳-14:05/烏帽子岳分岐-14:15/芝草平-14:35/杉ヶ峰-14:53/前山-15:09/刈田峠-15:17/登山口-15:35/リフト乗り場駐車場

締め。コストコパッションフルーツソフトクリーム・ミックス。
下山後の甘いものは堪りませんな。

*1:三角点の標高は約1817m

*2:変わった柄の蝶もよく見るなとあとで調べたところ、アサギマダラでした。