
MSX2は1985年に登場しています。しかし専用の作品が掲載されるようになるまでには、少し時間がかかったようにおもいます。87年春創刊の「MSX・FAN」でさえ、ファンダムに2専用作品が掲載されたのは同年秋のことでした。今回ご紹介する「ポンタ物語」は、ベーマガ初のMSX2作品。87年2月号に掲載されています。

本作は固定画面アクションゲームです。主人公はポンポコピー星のポンポコナー共和国に住むペンタ族の王子パイポ。些細なことがきっかけで敵対関係になってしまったポンタ族と和平を結ぶべく、ポンタ族の王子に合いに行くのだが…というストーリーがあるんですが、まぁ、知らなくても遊ぶのに全く支障はありません(おい)。
プレイヤーはとにかくパイポ王子を操り、フィールド内に散らばる全てのアイテムを拾い集めなければなりません。王子の挙動には慣性がかかる上、軌跡を残します。この軌道にぶつかるとワンミスです*1。
フィールドには敵としてポンタ族も出現します。こちらも王子同様、軌跡を残しながら移動します。敵にぶつかってもミスにはなりませんが、こちらの軌道に当たってもやはりワンミスです。さらに敵が王子や自身の軌跡に当たっても自滅します。ゲームとしては変型「ライトサイクル」ゲームとでも言えばいいのでしょうか。

アイテムには様々な効果があります。敵の動きを止めたり、やられた敵を復活させてしまったり、自分の周囲の軌跡を消せる「CLS」ことボムが撃てるようになるものなど。クリアの条件となっているため、効果の有利不利に関係なく、アイテムは全て拾わなければなりません。敵と自分の位置と状態、画面上の軌跡を見て、どんなコースを取ってどんな順番でアイテムを拾っていくかを瞬時に判断するのが、本作の肝と言えましょう。
作者さんコメントによると、本作は以前ベーマガに掲載された「フラフラゲーム」(84/6掲載・パソピアシリーズ)を元に作ったのだそうです。「フラフラゲーム」の内容は、軌跡を残しながら移動するキャラクターを操り敵をやっつけるというもの。このMSX2版では、ゲームの目的が敵を倒すことからアイテムを拾うことに変わり、さらにそのアイテムに効果を持たせるという改良が加えられています。様々な効果のあるアイテムが展開に起伏を付けてくれるので、なかなかおもしろいです。

カラースプライトと色化けしない表示はMSX2ならでは
ゲームはスクリーン5を使用しています。内容自体はMSX1でも十分再現可能なものでしょう。ただし横8ドット2色制限がない分カラフルで色化けのない画面表示を実現しているのと、キャラクターにモード2スプライトを使用しているのがMSX2のアドバンテージでしょうか*2。ファンダムだったら1画面プログラムにありそうなかんじですが、リストは約120行あります。内容に比べれば若干長めですな。
ところで。内容とは関係なく特筆しておきたいのは、本作が「ランダムコーナー」に掲載されたことです。
ベーマガのプログラムコーナーには、毎月一定本数が掲載される機種のページとは別に、投稿数が少ない機種のプログラムを不定期で掲載する「枠」がありました。これをランダムコーナーと称します。
ランダムコーナーに掲載される機種とは、毎月レギュラーとして掲載できるほどプログラムが集まらない、すなわちユーザーが盛り上がっていない衰退した機種、ということでもあります。投稿数が減ってきた機種のユーザーに対し「このままではランダムコーナー行きだぞ」と編集部が発破をかける場面は、往年のベーマガ読者ならおなじみのものです。
初のMSX2用プログラムがそのランダムコーナー発だったということは、MSX2用プログラムは、当初それほど数が集まっていなかった、ということだったのでしょう。ベーマガのMSX2用プログラムは、翌3月にまた一本がランダムコーナーに掲載されました。そしてその次の4月、いよいよランダムコーナーを脱し、レギュラーの仲間入りを果たします。
MSX2が爆発的に普及したきっかけは、なんといっても86年末のパナソニックFS-A1*3の登場でしょう。A1により、それまで高級路線だったMSX2が手に届くものとなり*4、それにともないMSX2でのゲームプログラミングもぼちぼち広まっていきました。ベーマガでのMSX2用プログラムの扱いは、まさしくこれと歩みをともにしています。
本作がA1で作られたものであるかは不明ですが、まさにMSX2が普及し始めた頃に現れた作品であることは確かです。