豪快に久々ですが、やっぱり毎日プログラムの入力は続けています。そういうわけで本日ご紹介するのはこないだようやく動作確認が終わった3D RPG「ミネルバの城」です。
本作はアスキーのMSX叢書・ポケットバンクシリーズの一冊、「RPGの作り方」に掲載された作品です。同書ではアイディアや世界観をいかに掘り下げてコンピューターゲームにするかを、手本を示しながら紹介しているのですが、この「ミネルバの城」は、そのお手本の一つです。リストはなんと26ページ分。だから入力とバグ採りには時間が掛かりました(泣)。
アイディアをいかに具現化するかのサンプルですので、本作にはわりと凝った設定が用意されています。ストーリーは、水晶玉の呪いで醜くなってしまった主人公・輝璃娘(キリコ)が、美しくなる薬を求めて「ミネルバの城」を冒険するというもの。城の奥深くにある「真実の鏡」を覗けばクリアです*1。
本作のユニークなところは「美醜の概念」があること。主人公には年齢と「美しさ」が設定されていて、それにより称号が変わります。城の中は時の流れが速いのですぐに歳を喰ってしまいます。美しさや年齢は城の中に多数転がる薬によって上下します。結末は称号によって変わってくるので、グッドエンドを見たいなら、戦闘で成長することはもちろん、若く美しい状態を保つことが肝要です。
ところでストーリーを見る限り、輝璃娘は「醜いままでは家に帰れないから、元の姿に戻るために城を目指した」ということになっています。にもかかわらず、エンディングでは突然王子なる人物が現れ、ケチを付けてきたり、二人は仲良く暮らしましたみたいな終わり方をします。ストーリーで提示される目的とゲームの目的が違うので、そこは少々気を遣って欲しかったところ。美しくなりすぎて家に帰っても誰だかわからなかったとか、その程度のオチは期待したのですが(おい)。
制作はかのゲームアーツ、「テグザー」や「シルフィード」を作ったところがあたっています。ゲームアーツはMSXの立ち上げにも関わっており、その縁か、ポケットバンクシリーズでいくつかのサンプルプログラムを作っていたりします。
他のRPGと変わっているところはもうひとつ。本作にはマップエディターが付いていて、自分で好きなマップを作って遊べるようになっています。このマップエディターがグラフィカルかつ機能豊富で、複雑なマップがかんたんに作れるというスグレモノ。むしろゲーム本編よりこっちの方が出来がいいと思います(おい)。さておきゲーム制作にあたって、本編に先立ちツールを充実させるという作り方は、後の「グランディア」に通じるものを感じます。
さらにこのゲーム、差分プログラムが用意されてまして、別シナリオで遊べるようになってます。題して「くのいちお茶々よヘルプミー」。今度はくのいちお茶々になりかわり、妖怪イジャイムを退治して、捕まっている若様を助けることが目的です。差分はシナリオやグラフィック。適用すると西洋風ファンタジーから和風RPGに早変わりという寸法です。敵キャラは全取っ替えで、オバQなんてやつも出てきます。版権的に問題はなかったのかい(笑)*2。まぁ、ちょっと味付けを変えるだけでも別のゲームにできるよということなんですが、マップデータは同一なので、弄ったかんじはかわりなかったりして(おい)。
飽くまでサンプルゲームなので、全体的に作りは素っ気ないです。粗削りなところが目立つ上、ゲームバランスもあまりよくはありません。残念ながらすごくおもしろい、というほどではありませんが、「美醜の概念」というユニークなアイディアをうまくゲームシステムに落とし込んでいるところは、さすがプロのソフトハウスと納得させられます。