GR IIIで撮影。Photoshop Elementsで縮小
というわけで先日糸岳に登ってきました。糸岳は二口山塊の一座です。標高1227.5m。場所は山形と宮城の県境、奥羽山脈の稜線上、二口峠の北。二口林道の県境に向かう北側斜面から見て、左手にどっしり座っている台形の山ですな。
糸岳はこれまで2回登っています。しかしどちらも二口峠からお手軽に往来しており、小東岳への通過地点、というイメージでした(おい)。ところがその後、宮城側の登山道が見所満載らしいという情報を入手。折しも季節は10月末。紅葉も深まり、二口林道もまもなく冬季通行止めを迎えます。ならば今しかないだろうと行ってきたのでありました。
というわけで今回はその宮城側登山道こと、白糸の滝コースを登ってきました。登山口は風の洞橋を渡ってすぐのところ。白糸の滝ゲート脇のちょっとしたスペースに車を置いてスタートです。
道はなかなかハードです。のっけから二口沢の渡渉が待ち受けます。沢は幅がある上、ここのところの天気で増水してました。とりあえず水位の低そうなところを選んで無理矢理突破しましたが、まだ始まりに過ぎません。靴下が浸水しましたぜ(泣)
渡渉の次は急登です。すぐ脇は白糸の滝で、滝の上部は二口山塊らしいナメ沢です*1。足を滑らせたらひとたまりもありません。道はやがて沢筋を離れさらに登ってゆくのですが、急峻で足下が心細いのは変わらず。急登は二口沢から標高差にして500mほど続きます。
こんなに急なのには訳があります。というのも白糸の滝コースは磐司岩のすぐ脇を通っているのです。いわば磐司岩を歩いて登るようなもの。二口峠に出入りするようになって以来何度も見上げているあの磐司岩の高さを体感できる。そんなところも、荒井がこのコースに興味を持った理由であります。
急登の中腹にさしかかると、ふと目の前の展望が開けます。その名も磐司臨潭(ばんじのぞき)。南には日陰磐司の断崖がそばだち、その隣に端正な三方倉山が連なります。そして目の前に迫るのは磐司岩。展望台や林道からうかがうのとはまた違った迫力があります。谷は紅葉で埋め尽くされ、山はすっかり秋の装いです。この眺めに登りの苦労も報われるというものです。
絶景が広がる磐司臨潭ですが、即崖っぷちの際どいところにあります。うっかり一歩を踏み出せば磐司岩の谷底まで真っ逆さまなので、足下にはくれぐれもご注意を。
500mの高低差を登り切ると、風鳴平(ふうめいだいら)なる平場に出ます。ここからはゆるやかな登りで糸岳を目指します。このあたりまで来ると南の仙台神室や蔵王の熊野岳、北にはこないだ登った大東岳がなんとなく見えてきます。
太平洋が望めるという触れ込みの望洋平は、茂みのおかげであんまり展望がよくありません(おい)。笹藪っぽい道をたどり、北石橋への分岐を見送り、ブナ林を抜けたところでようやく眺めが得られます。くもってはいたものの見晴らしは効いて、仙台の街はもちろん、太平洋や牡鹿半島までもを見渡すことができました。ここまで来れば山頂はもうすぐです。
山頂からは山形方面の眺めがいいのは以前登って知ってのとおり。それでもこの日は息を呑みました。目の前に雲海が広がっていたのです。山形盆地は雲の下。雲の切れ間からは、底に沈む寒河江や天童が覗けました。目をこらせば山寺の寺社や門前街も認められます。観光客が焚いたのか、五大堂のあたりではときおりカメラのフラッシュとおぼしき閃光が点滅していました。
家を出たときはあたりも見えないような濃霧で、果たして山の方はどうかと心配したのですが、いざ登ってみれば、曇天ならではの光景に恵まれました。眺めのいいところに陣取って、湯を沸かしてカップ麺をすすり、例によっておやつも食べてから、来た道を引き返し、無事下山したのでありました*2。
二口峠から登れば、糸岳まで1時間足らずでたどり着けます。対して白糸の滝コースの所要時間は片道約2時間。にもかかわらず、あえて登る価値があるとつくづく感じました。道中随所に眺めのいいところがあり、目を飽きさせません。そして何より、二口山塊のシンボルともいえる磐司岩を間近に感じられるのが大きな魅力です。
コースタイムは以下のとおり。帰りはところどころで双眼鏡を取り出してたので余分に時間がかかってます。
9:07/登山口-9:13/二口沢-10:06-10:12/西磐司臨潭-10:25/風鳴平-10:35-10:43/望洋平-10:47/北石橋分岐-10:54/糸岳前ピーク-11:05-12:00/糸岳-12:10-12:15/糸岳前ピーク-12:20/北石橋分岐-12:25/望洋平-12:31/風鳴平-12:48-12:57/西磐司臨潭-13:42/二口沢-13:56/登山口