何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

大東岳に登ってきたふたたび

二口林道から見る大東岳。糸岳の後ろに隠れてほとんど見えない(おい)

GR III。PhotoShop Elementsで縮小


 というわけで先日、仙台方面の天気が良さそうだったので大東岳に登ってきました。
 例によって山のあらましは略(おい)。荒井は去年表コースからの登頂を果たしています。ならば次は裏コースだということで、今回は周回ルートを歩いてきました。折しも山は紅葉の時期。二口山塊で紅葉狩りというのも悪くありません。
 大東岳には、同じ登山口から発する登山道が二つあります。ひとつが去年歩いた立石沢ルートこと「表コース」で、もうひとつが大行沢ルートこと「裏コース」。この二つをつなぐことで周回が可能です。
 裏コースは表より距離が長く、滑落の恐れのある場所や急登などもあるため、その分難易度が高くなっています。去年裏磐司を見に行ったのは、裏コースの下見も兼ねてのことでした。

裏コース入口。片道8.4kmの道のりの始まりです。

 今回は裏コースから登って表コースを降りてくるという、時計回りのルートを選択。あえて難しい方を先に持ってきたのは、気力体力が充実している前半に難所を持ってきた方が、より安全に登れるだろうというもくろみです。

白滝直後のロープ場。この前で先行者を追い越したときに鉛筆おっことした(泣)

 二口峠を越え、8時半過ぎに本小屋の登山口に到着。さっさと支度をして裏コースに突入します。順当に駒止の滝を通過し、白滝入り口を見送ります。ところが直後のロープ場を越えたあたりでメモ用の鉛筆*1を紛失するというアクシデントが発生(泣)。来た道を引き返し、15分ほど捜索する羽目になりました*2。とはいえこの程度なら予定に大きな影響はなし、むしろ見つかったのだから運は悪くない、と気を取り直し登山を続行します*3

裏磐司ふたたび。紅葉の盛りまではいま少し。

 雨滝、裏磐司展望台、梯子滝、と足を停めて見物したい気持ちを抑えて登山道を進み、1時間少々で京渕沢に到着。ここから先は未知の領域です。

きわきわの鎖場と滑床沢。京渕沢以降はこんな場所が次々と。

 京渕沢を越えると、道はにわかに険しさを増します。登山道はより細く、鎖を頼りに斜面を横切ったり、ナメ沢を渡ったりという難所が続けざまに現れます。足を滑らしたらはるか下の大行沢まで滑り落ちて死ぬ、というレベルの場所が続出し、全く気が抜けません。二口の厳しさを目の当たりにするようです。

北石橋に至る道と樋の沢小屋に向かう道。磐司磐三郎も歩いたのかな。

 険しいながらもどんどんと進んでいくほど、あたりのブナ林も美しさを増し、いよいよ二口山塊の奥地に足を踏み入れているのだという感が湧いてきます。北石橋への分岐にたどり着いたときには、とうとうここまで来てしまったのか、と分かれ道の行く先を見据えました。
 北石橋への分岐を過ぎれば、程なく樋の沢(とよのさわ)避難小屋に到着です。

樋の沢避難小屋到着。背後に見えるのはたぶん猿鼻山。

 山小屋まで来れば、大行沢に転げ落ちる心配はもうありません。しかし登りはここからが本番です。山頂近くまでの高低差約600mを、一気に登らなければなりません。その名も「弥吉ころばし」。そのむかし弥吉さんという方がここで転げ落ちたからそう呼ばれるようになったのだとか。

がくり沢。ここからが踏ん張りどころ。

 ネット上に転がっている周回ルート登山記録では、ここを下ってくる例が多いです。しかし荒井があえて登ることにしたのは、元気なうちに難所を通過した方が安全という件の配慮と、急登は下るより登る方が楽という経験則と、弥吉さんが転げ落ちたという急登がどんなものか登ってみたいという好奇心ゆえです(おい)。小屋前の水場で水を補充し、おやつも食べて気合いが入ったところで登りに取りかかります。

弥吉ころばしの紅葉。厳しい登りによい慰み。

 前半は「がくり沢」なるゴロゴロした石だらけの沢筋です*4。でもこの程度はまだ序の口。登るほど傾斜は急に、弥吉さんを転げ落とした急登がその急さ加減を見せつけやがります(おい)。

中腹から西を見る。県境の稜線が今いる高さを教える。

 一方でこのあたりは紅葉が盛りを迎えつつありました。赤や黄色に色づいた森が目を楽しませてくれます。登るほど背後の木立の合間に猿鼻山や小東岳といった県境の山々が見渡せるようになり、高いところに登りつつあると知ります。向かう森の合間に空の色が見え隠れし、まだかまだか、これでもか、と上り詰めると「弥吉ころばし」の看板とともに急登が終わり、二口山塊見晴が現れます。

二口山塊見晴の光景。去年天気のいいときに来といてよかったな。

 この日仙台付近は好天に恵まれていましたが、山形側はぱっとしない天気でした。去年抜群だった見晴台の展望はいまひとつ。山形側には低く雲が垂れ込め、月山も葉山も雲の中です。朝日連峰はおろか、もちろん鳥海山など見えません。

見晴の様子。山頂付近の紅葉はもう終いというかんじ。

 あたりの空はすっかり灰色でした。おまけに西から強風が吹き付け、ときおり小雨もぱらつきます。大東岳奥羽山脈の上から頭をのぞかせるように据わっている山です。そのため山頂付近には、大分水嶺を越え、日本海側の風や雲が直にぶつかってくるのでしょう。

東岳山頂にて。もちろん一等三角点も見てきました。

 このあたりは紅葉も終わり、木々はだいぶ葉を落としていました。停まっていると寒いので、見晴台は早々に退去。やたらぬかるみ藪っぽい平場を進み、山頂へと移動します。こちらもやはり寒いので、あたりの様子をひととおりデジカメに収め、祠にお参りし、おやつを食べたところでさっさと下ります。山頂からの展望は去年と逆。仙台方面の街並みがそれなりに見えました。

沼の平を過ぎ稜線を下る。この日一番の紅葉が迎えてくれた。

 帰途は一度見知った表コース。難なく鼻こすりの急坂を下ればあとは難所らしい難所もなく、気楽な道中です。下るうちに天候は回復し、八合目あたりで再び青空となりました。ちょうどこのあたりから六合目にかけての紅葉が最高潮を迎えており、歩いて楽しいことこの上なし。あれもこれもと撮りまくるので、すっかりデジカメの撮影枚数が増えてました。
 かくて順当に下り続け、五合目、立石沢の広場を通過。道のわかりづらい沢筋も迷うことなく、15時過ぎに無事本小屋の登山口に戻ってきたのでありました。





 今回、裏コースを往路に持ってきたのは大正解でした。進むほど楽になっていくので、心に余裕が持てます。途中鉛筆を紛失しかけるというハプニングこそあったものの、気づけば去年の表コース往復とそう変わらないタイムで回ってくることができました。

表コースで本小屋に帰還。待望の大東岳周回達成だ。

 周回ルートの踏破はこの山に興味を持ち始めた頃からの念願で、この時期に登ることは、以前三方倉山からこの山を見たとき以来の憧れでした。今回はその願いが叶って、大いに満足の山旅となりました。
 一方でアクシデントの際の気の落ち着け方など、個人的に反省すべき点も多い山行でもありました。例によってコースタイムは次のとおり。次はいよいよ北石橋だな。


8:40/本小屋登山口-8:45/小行沢-9:05/駒止の滝-9:10/白滝入り口-9:15-9:32/ロープ場-9:37/雨滝-9:50/裏磐司展望台-9:54/京渕沢-10:08/ケヤキ沢-10:23/滑床沢-10:48/北石橋分岐-11:03-10/樋の沢小屋-11:25/がくり沢-11:45/弥吉ころばし-12:28/二口山塊見晴-12:38-55/山頂-13:08/鼻こすり-13:10/九合目-13:18/八合目-13:25/東清水分岐-13:30/こぶし平-13:31/七合目-13:42/標高点-13:46/六合目-13:53/鹿打林道分岐-13:58-14:04/五合目-14:10/四合目-14:21/立石-14:26/三合目-14:31/立石沢-14:41/二合目-14:47/24山-14:50/一合目-15:03/本小屋登山口

この日撮ったデジカメ画像、全部で7G越えてた。

*1:パーフェクトペンシル。血眼になって探したぜ。

*2:ロープ場のすぐ手前に落ちてました。よかったよかった。

*3:そのかわりビジターセンターでもらってきた案内マップを落っことしてました(泣)

*4:いかにも膝がガクガクしそうな名前だなとおもったら、登りも下りも疲れがたまってくる地点でガックリするからこの名があるそうで。