何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

歳末一画面プログラム祭りファイナル~その4―SILVER SNAILさん編

「A-MAN」(92/6)。滑らかな動きはかの「プリンスオブペルシャ」を彷彿させた。

 個性際立つファンダムの常連投稿者の中でも、SILVER SNAILさんは忘れ得ぬ存在です。90年11月号掲載「Green Slime*1が初採用で、その時中学2年。その後1画面から大作に至るまで、様々な作品を発表します。後にMファン編集部は同氏の作風を「彼の本領は市販ソフトのツボをMSXの短いプログラムで表現するところ」と評しています。
 というわけで今回はSILVER SNAILさんの1画面プログラムをいくつかご紹介いたします。

「階段10x2」。これも中西さんに着想したゲームらしい。

 「階段10x2」(91/2)は、階段を登るアクションゲームです。主人公「H.V.C」を操り、階段をひたすら登りましょう。階段はところどころで折れ曲がっています。踊り場で切り返す際、足を踏み外して落下しやすいので要注意です。お邪魔キャラ「ホッピングマン」にぶつかると下に突き落とされますので、これはうまくかわしましょう。画面外に転落するとゲームオーバー。登れた段数が得点です。
 速いスクロールやH.V.Cの滑らかなアニメーションで、いかにも階段を登っているかんじが出ています。また、転落しても足場に着地できる限りはやられないので、あえて転落してホッピングマンをかわすといった駆け引き要素もあります。非常にシンプルで比較的見かけるタイプのゲームながら、ツボの押さえ方が上手いです。

「BASKET BALL」

 「BASKET BALL」(91/2)は読んで字のごとく。対戦型のバスケットボールゲームです。相手のディフェンスをかいくぐり、ボールを相手のゴールに放り込みましょう。選手はそれぞれ1人のみ。キャラクターデザインも含め、まさに最小限に絞った作りです。
 投稿ゲームにおけるこの手の対戦バスケットゲームはたいがい固定画面式で、同一画面内に二つのゴールがあるものです。しかし本作が他と大きく異なるのは、スクロールにより5画面分の広さのコートを実現していることです。
 本作にパスとかファウルの概念はなく、実はドリブルのアクションもバスケとはまるで違います*2。実際のバスケットボールとは相当に趣が異なりますが、このスクロールのおかげでコートを突っ切り敵ゴールを目指すかんじがよく出ていて、「これはバスケットボールだ」と不思議と納得させる作品になっています。

「SKELTON」

 ベルトアクションゲームというジャンルがありますが、「SKELTON」(91/4)はなぜかそんな単語をおもいださせるサイドビューアクションゲームです。スケルトンを操り、画面の右端にたどりつきましょう。落ちると一発アウトの穴はジャンプでかわせます。前からは鉄球が襲ってきます。ぶつかってもミスになるかわり、骨格が崩れて一定時間操作不能になります。
 本作で最も恐るべきは、床です。床を構成する矢印に乗ると、スケルトンが勝手にそちらの方に流されてしまいます。これと鉄球の混成攻撃が厄介といったらありゃしません。地形をかわしたとおもったらその先で鉄球にぶつかって行動不能に陥りズルズルと穴に突き落とされるなんてのはあたりまえ。鉄球の位置を絶えず気にしながら、床を歩くタイミングを計らなければなりません。
 ベルトアクションの「ベルト」は、おそらく自動で物を流す機械「ベルトコンベア」に由来しているものとおもわれます。スクロールこそしないものの、勝手に流されるという点で本作はまさにベルトコンベアと言えましょう。

「妖城伝II~浮遊城之巻」

 「妖城伝II」(91/5)。以前紹介した「妖城伝」の続編です。縦スクロールの前作に対し、今作は横スクロール。やはり鉤爪を使って足場を飛び渡り、ひたすら進むというゲームです。鉤爪を投げて引っかけるというギミック感の楽しさは相変わらずです。
 ただし横スクロールになった分、足場を渡るのが難しくなりました。鉤爪が引っかかる前に敵に邪魔されてすぐ落っこちます。というわけでやられてばかりでじきにイヤになって投げ出してます(おい)。

「ぶよよん」

 「ぶよよん」(91/7)。これもデビュー作「Green Slime」を彷彿させるアクションゲームです。しかし本作の目的はゴールにたどり着くことではなく、画面内のダイヤこと「すーぱーくりすたる」を一定数拾うこと。自機・ぶよよんは絶えずはねています。さらにすーぱーくりすたるを取るごとに画面の重力が反転します。ファミコンの「メタルストーム」みたいですな(おい)。それを見越した操作とコース取りをするのがクリアへの道。独特な浮遊感が気持ちよいです。
 本作はライフ制を採用しています。敵キャラ「めたるしゃーぷ」に当たると減りますして、なくなるとゲームオーバーです。面白いのはライフが減った状態ほど、すーぱーくりすたるを取ったときの得点が増えるという仕様。上手くなればあえてダメージを受けた状態で取りまくってハイスコアを目指すなんて遊び方もできます。

熊王」(91/12)「PEGUINGS」(92/4)。
どちらもキャラのスムーズなアニメが見物。

 こうして見てみますと、SILVER SNAILさんの作品には、キャラの動きにこだわったものが目立ちます。どの作品もスムーズな動きやアニメーションを肝としており、その作風は1画面プログラムにも顕著にうかがえます。市販ソフトのエッセンスをMSXで再現することはその一側面で、むしろ動きを活かしたゲームデザインこそが同氏の真骨頂という感を強くしました。

代表作「SILVER SNAIL」(91/10)。ドラクエを強く意識しただろうRPG
おもえばこれが最大の異色作だったのかも。

 同氏が活動したのは主に91年頃から93年にかけて。その間に20本の作品が採用・掲載されました。この採用数はファンダム歴代2位。活動期間は短いながらも、多くの印象的な作品を残しています。

*1:このときは別名で投稿してました。

*2:ボールを運ぶ際はキャラの頭でボールを小突きます。なのでむしろサッカーのドリブルに近いです。