何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

Mファン90年11月号の1画面プログラムから

ご存じ「激走LABYRINTH」。今回は別のゲームの紹介です(おい)

 例によってプログラムは毎日入力してはいるのです。動作確認とレビューが追いついていないだけ(泣)。というわけで本日はMファン90年11月号掲載の1画面プログラム4本のご紹介です。
 この号に掲載されたゲームプログラムは全部で9本。そのうち5本は「ザ・リンクス」からすでにダウンロードしてました。半分以上ですから比較的多い数です。同年10月号と11月号では「第4回MSXファンプログラムコンテスト」が開催中でした。「ゲームの真髄」「激走LABYRINTH」「惑星歩兵戦」「THE EARTH」等、見るからにおもしろそうな作品が数揃っていたので、DLしていたのでしょう。というわけで残り4本が30年くらい後回しになってたわけでして(おい)

「LAST LONG」

 1本目「LAST LONG」は、3Dフライト風アクションです。地平線の向こうを目指し、ひたすら飛び続けましょう。自機は燃料を消費して飛んでいます。そのままではどんどん燃料が減り、やがてガス欠になって飛べなくなります。前方から飛んでくる黒い球体を取れば、燃料が若干回復します。飛び続けるには黒い球をできるだけ漏らさず取り続けなければなりません。ガス欠になるまでの飛行距離が得点です。
 自機の挙動によって地平線が傾く表現が、よりフライト感を高めています。ところでこんなふうに飛んでいく場面、どこかで見たおぼえがあるとおもったら、かの「イースII」のオープニングでした。じゃあ、あの黒い物体は黒真珠だな(違)

「ぴろぴ~ろ」

 2本目「ぴろぴ~ろ」は、他とはひと味もふた味も違うバレーボール風2P専用対戦ゲームです。
 画面上に試合の舞台となるコートが表示されています。中央の赤い線を境に左側が1Pのコートで、右側が2P。プレイヤーはそれぞれ自分のコートにボールが落ちないよう、ボールを受け跳ね上げましょう。相手のコートにボールを落とせば得点。先に15ポイント取った方が勝利です。
 しかし画面には1Pと2Pの分身となるマイキャラが表示されていません。それではどうやってボールを打ち返すのか? 画面の下の方で黄色い「車」が往復しています。1Pも2Pもこれを使うのです。


 本作にはマイキャラというものが存在しません。そのかわりボールと車のスピードを制御して、減速させることができます。ボールと車の制御権は、ボールを打ち返すごとに入れ替わります。1Pがボールを制御できる間2Pは車を、同じく1Pが車を制御できる間、2Pはボールの速度を操れます。攻守がめまぐるしく入れ替わり、頭がこんがらがりそうになりながら、互いにフェイントを仕掛け合うという対戦ゲームで、そのアイディアのユニークさと斬新さに脱帽ですが、例によって2人プレイはやってません(汗)。

「けんけんぱー」

 3本目「けんけんぱー」。「けんけんぱ」は、荒井が小学生だった頃、女子がよくやってたものでした。詳しいルールは知らないものの、地面の上に描いた丸の上を、はみ出ないよう跳び跳ねる遊びだ、ということはなんとなく認識しています。
 画面上に丸が続々と表示されます。そのパターンに応じたキーを押し、ひたすら進んでいきましょう。どれだけ続けられたかが得点です。パターンに応じてマイキャラがポーズを取る演出が、「けんけんぱ」っぽくてよいです。
 ググってみたところ、実際の「けんけんぱ」は対戦ゲームでした。丸の上を跳び跳ねるという主要な部分だけを取り出して、1人で遊ぶゲームに仕立てたのが本作です。実質、手本や指示通りにボタンを押すという点で、「けんけんぱ」よりもむしろ旗揚げや音ゲーと似たようなものなのですが、見せ方で違った風味に仕上がっています。

「Green Slime」

 4本目「Green Slime」は今回ご紹介する4本の中でも一推し。緑色のスライムを操り、ゴールを目指すアクションゲームです。
 自機はスライムですので、動きに特徴があります。床を這って移動できるのはもちろん、天井に張り付くこともできます。ジャンプの高さは垂直方向に無制限。これら動きを巧く利用して、床から床へと飛び移り、ゴールを目指します。ゴールするには、床を跳び移るコース取りを考えなければならず、パズルゲームのようなおもしろさがあります。

敵の名はエルファイヤ。そんな車あったっけ(おい)。

 加えて、敵キャラももれなく登場します。動きは単純で読みやすいものの、それゆえに不要に動くとぶつかってやられやすいです。移動したりジャンプしたりする際には、タイミングを計って敵の隙を突くことも必要で、アクションゲームとしてのおもしろさを高めています。プルプルいうスライムのアニメーションもスムーズで凝ってます。よく1画面でこれだけやったよ!

ゴール間近。タイミングを読んで敵の隙を突き、的確なコース取りで移動しよう。

 といった具合に本作は非常に出来がよいです。件のMファンプログラムコンテストにおいて「ほほえましい作品・作者」に贈られる「ちえ熱あっちゃん賞」を獲得。数々の大作力作が居並ぶ中での1画面プログラムの受賞ですから、相当なものです。ついでに作者さんは当時中学2年生。同コンテスト応募者最年少でありました。
 後に作者さんは「SILVER SNAIL」と名を改め、ファンダムで活躍することとなります。

大賞作「惑星歩兵戦」。高速スクロールに目を奪われる双六ゲーム。

 それにしても91年1月号に掲載された同コンテストの結果発表を見ると、参加者の若さに驚かされます。投稿者はもちろん、審査員として参加した読者もあらかた中高生です。当時のホビーパソコン界を支えていたのは、こうしたティーンエイジャーの情熱でした。彼らはコンピューターに親しむ中でみずみずしい感性と創造性を発揮し、あまたの力作や斬新な作品を次々と生み出します。
 やがて彼らが成長し、日本のIT業界を支える人材になったのでありますが、果たして、プログラミングが必修となった現代に、これほどの熱気はあるのでしょうか?

おまけ「ゲームの真髄」「THE EARTH」。どちらも同号掲載の「遊べる」銘品