何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「ズルポコ大作戦'88」




 例によって気まぐれに昔のプログラムネタです。


 「わかる!動かせる! プログラムが組める雑誌」をキャッチコピーに掲げるだけあって、ベーマガは初心者を対象にしていたわけですが、それは一方で専門誌に比べればディープさに欠け、「ログイン」や「ポプコム」に比べればスケールに欠け、という弱点でもありました。
 それゆえベーマガには、アイディアを重視した作品が数見られたわけですが、それは瞬発力勝負の一発ネタ的怪作を生むことになったのかもしれません。今回紹介する「ズルポコ大作戦'88」は、そんな怪作中の怪作であります。





 制作者のRandom田村さんはMZ-1500使いの常連投稿者で、「SHRAPを救え!」を皮切りに、いくつもの作品が掲載されています。本作「ズルポコ大作戦'88」は、1987年8月号に掲載された同氏のMZ-1500用プログラム「ズルポコ大作戦」を、同氏自らMSXに移植した作品ですが、こちらはベーマガ本誌ではなく別冊「MSXプログラム大全集II」に収録されています。


 プレイヤーは主人公大西くんを操作し、女子生徒が見守る中、ハッスルしながら校庭で懸垂をするのですが、懸垂し続けていると体力を消耗していきますので、時折ぶら下がって回復しなければなりません。体力が無くなると懸垂が続けられなくなり、ワンミスとなります。そして(ゲーム中の時間で)2時間粘ればステージクリア、4面クリアでオールクリアとなるのですが、ただのスポーツゲームにはあらず、数々のお邪魔キャラが出現し、大西くんを妨害してきます。
 左右からはなぜか野球部のボールが大西くんめがけて飛んできます。ぶつかると体力が減るので、適宜鉄棒にぶら下がり、かわさなければなりません。
 しかし足元には恐ろしい南川先輩が待ち構えてまして、ぶら下がっている大西くんのジャージを狙い、隙あらばと「怪物くん」のように腕を伸ばしてきます。この腕に捕まると、大西くんはパンツごとジャージをズリ下ろされ、大事なところを女生徒に見られてワンミスです。この時のグラフィックや台詞がやけに凝ってまして、遊べば「なんだよこれ!」と爆笑すること請け合いです。「ズルポコ」の由縁ですな。





 さらにMSX版では「ただの移植はしない」と制作者自らがお節介をしやがりまして*1、野球部のボールばかりか、頭上からは陸上部のハンマーまで降ってくるようになりました。
 操作性の悪さも手伝って難易度は激高、「チェッカーフラグ」の寸評でもゲーム内容ではなく、演出に使われているフェードイン・フェードアウト処理についてのみ言及されているという有様(おい)。
 まぁ、沙羅曼蛇の例を出すまでもなく、当時MSXに移植するにあたり、難易度が上げられるというのはよくある話でした(違)。無改造でオールクリアできた奴いるのかよ!


 さておき、制作者が「見て楽しむゲームをモットーとした」と述べるとおり、妙に細かいグラフィックと演出、独特のノリがある大西くんや先輩の台詞、中学男だった男子なら誰もが見覚えあるだろうことをゲーム化*2したという、バカバカしくも見事すぎる着眼点等々、ゲームバランスの悪さをものともしない底抜けの何かを備えていることも確かで、クリアすることそっちのけで、飛球やハンマーの直撃を受けつつ、大西くんがズルポコに至る展開をゲラゲラ言いながら楽しむことこそ、本作の正しい遊び方でしょう。


 市販ゲームを志向した他誌に対し、投稿作品でしか作り得ない、アイディアが先行しまくって突き抜けた作品が載るところも、ベーマガの真骨頂と言えましょう。
 MSX版で残念なのはゲームバランスではなくて、MZ-1500版に収録されていたテーマソングが収録されてなかったことだったりする荒井でした。


 今からすれば、MZ-1500はマイナーハードだったのですが、面白そうな投稿プログラムや市販ソフトがあれこれ揃っていて、MSX使いの荒井にとっては魅力的なハードの一つでした。


 例によって動画をアップロードしました。どういうゲームか気になる方はこれをどうぞ。


*1:ほめてます。

*2:というか、これはRandom田村さんが学校で実際に見たことをネタにしてますよな。