何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

歳末一画面プログラム祭りファイナル~その9―Nu~さん編

「青い地球に帰りたい」作者コメントから。
娘さんが描いたイラストがNu~さんの目印。

 入力した1画面プログラムには、Nu~さんの作品もいくつか含まれています。
 Nu~さんはファンダムの常連投稿者です。主に1画面プログラムを中心に投稿し、その掲載数は全26本。ファンダム掲載回数歴代1位を記録しています。数のみならず技術や品質も高く、特にスクリーン3を活用した作品には定評があります。質と量を兼ね備えたまさに名手。個性派揃いのファンダムの中でも特に際だった個性を放っています。
 というわけで本日は満を持して、ここしばらく入力していたNu~さん作品を一挙ご紹介いたします。

「なわとびしよ!」

 「なわとびしよ!」(91/2)は長なわとびアクションゲームです。回ってくる長縄に引っかからないよう、タイミングを合わせてひたすら飛び跳ねましょう。最大3人まで同時参加可能。3人で掛け声を出しながら足並み揃えて飛び跳ねると最高に楽しいとNu~さんはコメントしてますが、もちろん一人で遊べるのも、ぼっちプレイヤーにうれしい配慮です(泣)。リアル長なわとびみたいに「お前引っかかったろ!」と、責任を追求されることもありませんしな(おい)。

連続画像で見る長縄の挙動。ページング機能でスムーズに回ります。

 見所はなんと言っても、Nu~さんお得意のスクリーン3のページング機能を使用したスムーズな長縄のアニメーション。そういや最近、テレビとかで小学生の長なわとび大会をあんまり見なくなったような気がします。

「青い地球に帰りたい」

 「青い地球に帰りたい」(91/3)。定番のランディングゲームですが、Nu~さんですからただのランディングゲームではありません。操るのは宇宙船です。宇宙船は楕円状の軌道を描きつつ、青い球体こと地球の周りをぐるぐる回っています。逆噴射で減速したり軌道を小さくして着陸を決め、地球に帰還しましょう。宇宙船が十分減速していないと、地球に衝突して木っ端微塵です。宇宙船の燃料はごく限られています。やたら吹かすと燃料切れで宇宙の迷子と化してしまいます。

着陸失敗。地球が崩壊するかのようなエフェクトで木っ端微塵(おい)

 とにかくシビアです。上手く着陸するには相当な修練が必要です。このあたりは以前の「コプ太くんの着艦訓練」に通じるものがあります。
 Nu~さんによると、本来地球を周回する宇宙船はケプラーの法則に従うが、その計算をすると遅すぎてゲームにならないとのこと。本作ではそれっぽい挙動をする簡素な計算式によって宇宙船の軌道を求めています。Nu~さん作品には短い中でできる限りのリアリティを追求したところがあり、そこが他との違いになっているとおもいます。

「棒立て一番星」

 「棒立て一番星」(91/5)。棒立ての星を目指し、夜な夜な特訓を重ねるアクションゲームです(おい)。長い棒が倒れないよう、バランスを取り続けましょう。バランスを取るには自分の位置を動かし微調整してやります。ただし少しでもバランスが崩れると、長い棒は容易に倒れてしまいます。倒れたらゲームオーバーです。こないだの「TOPPLE V2」に似てますが、発表はこちらの方が先で、棒は1本だけです。

あえなく失敗。パフォーマーたつみさんの凄さをおもいしった(おい)

 「TOPPLE V2」がそうだったように、この手のゲームはだいたい、保持できた時間がスコアとなるものです。しかし本作では「夜が明けるまで保持し続けろ」というルールを採用しています。具体的には上方にある星(これが「一番星」らしいです)が左から右へとすっかり画面を横切るまで保持し続ければステージクリアとなります。クリアすると棒が短くなってより難しくなった次のステージが始まりますが、面クリア型の耐久ゲームにしたことで、イライラ度やもどかしさが増した感があります(おい)

「グルリン」

 「グルリン」(91/5)。こちらもNu~さんお得意のスクリーン3のページング機能を利用したアクションゲームです。チューブの中を突き進む自機を操り、白い球を拾い続けましょう。黒い球を拾ってしまうと最初からやり直しです。自機は左右回転ができるのみ。画面下方にいるときはカーソルの左右通りに移動できますが、上方に移ると右と左が入れ替わる形になるのでこんがらがります。
 こんなゲーム、前にどこかで遊んだことがあるなと振り返ってみたら、かのアタリの名作「テンペスト」でした。内容はほぼ、弾の撃てない「テンペスト」です。「テンペスト」はベクタースキャンによる立体感が大きな売りでした。本作はページング機能による迫力あるアニメーションが売りです。もしかするとMSXでも「テンペスト」が再現可能ということなのか。それにしてもスーパーザッパーぐらいは撃てるようにしてほしかったぜ(おい)。

「トマホーク発射!」

 「トマホーク発射!」(91/6)は時事ネタを扱った作品です。当時は湾岸戦争の直後。アメリカのトマホーク巡航ミサイルがカメラ越しに捉えた軍事施設に命中する映像もよく見かけたものでした。本作はそれに着想を得た3DSTG。トマホークを誘導し、敵軍事施設に命中させましょう。トマホークは風の影響を受けます。プレイヤーはそれを考慮して適宜軌道を修正し、標的に導かなければなりません。

命中!ミサイルはゲームの中だけに。

 MSXのスクリーン2でワイヤー描画された地平線や軍事施設のグラフィックの粗さが、かえって件の搭載カメラ越しの映像を彷彿させて、妙に雰囲気があります。内容はさすがNu~さん、きちんと遊べるゲームに仕上がっています。
 ゲーム自体はオーソドックスなものでありますが、着想が着想だけに、悪乗りしているようで戦争中は投稿できなかったとご本人がコメントしています。

「大宮操車場」

 「大宮操車場」(91/8)。Nu~さんの兄上がかつて勤めていた職場に着想を得たというアクションゲームです。操車場の運転士となって、白い電車を一番左に導きましょう。4本のレール上にはそれぞれ電車が走っています。その隙間を縫ってレールを移り、左側を目指します。レールは4画面分の長さがあります。左端にたどり着くと画面が切り替わり、隣の画面に移ります。青色の画面で左端にたどり着けばステージクリアです。





 自車が何画面目にいるかは背景の色でわかります。スタートの薄い赤色の画面は右から2番目。他の車両にぶつかると右に押し戻され、一番右の真っ赤な画面で画面右端に押し戻されると失敗です。
 他の車両の動きはイヤらしく、見る見る間に隙を埋めてしまいます。また、スピードを上げていると少し近づくだけでも吸い込まれるように衝突し、右側に押し戻されることが多々あります。画面が切り替わっても車両の位置は同じです。これを頭に入れつつ、スピードを抑えめにしてレールを移動するのが、クリアのコツです。
 スクリーン3でスムーズに流れる線路のグラフィックはさすがNu~さん。動かしているだけでも気持ちよいです。しかし気持ちよいからと調子に乗って動かしていると痛い目に遭うのでご注意を!

「RCホバー」

 「RCホバー」(91/9)。当時小学1年生の息子さんにラジコンのホバークラフトを買ってあげたのはいいけれど、さっぱり貸してくれないのでMSXで再現しましたという作品。ホバークラフトを操り、フィールド上に散らばる色のついた丸を順に拾っていきましょう。すっかり拾えばステージクリアとなります。丸の順番はMSXのカラーコード順。そんなもん覚えてないよという方でも、次の色は画面下を転がる円の色として示されている心配無用です。
 この円は残り時間のメーターも兼ねています。これが画面左端に到達したらタイムアウト。同じステージを最初からやり直しとなります。Nu~さん作品にはゲームオーバーになっても最初からではなく、ステージ最初から仕切り直し、というのが多いですな。
 画面真ん中の黒いところは沼です。ここにはまると動きが遅くなってタイムロスにつながります。面が進むほど広がりより操作が難しくなるという趣向です。

ホバークラフト作成中。
グラフィック画面に描画したものをスプライト化している

 Nu~さん自身がコメントで仰っているように、ホバークラフトの動きが非常に良いです。カーソルの左右で旋回し、スペースキーで加速。グラフィックこそシンプルながら、動作とアニメーションが非常にスムーズ。回転したり浮遊している感覚が気持ちよく、動かしているだけで楽しいです。ところがやはり調子に乗って飛ばしているとコントロールが効かず、拾うのに苦労することになります。長い距離を移動するときは飛ばしつつ、目標物の近くでは減速して細かな操作をするというメリハリが大事です。
 ちなみに息子さんが貸してくれなかったというホバークラフト。電池の消耗の激しさに悩まされたそうです。そこで充電セットも買いそろえたら、飽きてしまったようでぱったり遊ばなくなってしまったとか。


 Nu~さんは当時40代の会社員。某有名企業勤めで子供さんもいて、投稿者コメント欄の挿絵は娘さんが描くのが常でした。中高生をはじめとする若年層が読者の中心だったMファンでは異色の存在です。その作品群にはいずれも年長者らしい機知があり、筋の通ったものがあります。そこがNu~さん作品の魅力でしょう。


 気づけば今年も聖誕節です。地球はあいかわらずですが、せめて今日ぐらいは世界が平和でありますように。そして子供らに明るい未来を。