何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「コプ太くんの着艦訓練」




 80年代後半から90年代前半にかけて、「回転拡大縮小」が、ゲーム表現のトレンドとなっていた時期は確実に存在しました。アーケードでは「アサルト」や「キャメルトライ」等々。ゲーム機ではスーパーファミコンの「F-ZERO」等。
 その潮流は当然投稿プログラム界にも影響を与えました。しかしこれらアーケードゲームやコンソールがハードウェアで回転拡大縮小機能をサポートしていたのに対し、当時のホビーパソコンの多くは、それら機能を備えていませんでした。
 人気ゲームや最新ハードの迫力と醍醐味を我がマシンで。ハードでできないのなら、プログラミング技術でなんとかするしかありません。今回ご紹介する「コプ太くんの着艦訓練」(Mファン90/7)には、そんな時代の心意気がうかがえます。

驚きの拡大縮小表現。ページングによって実現している

 作者は名手Nu~さん。Nu~さん作品ではおなじみの主人公・コプ太くんをうまく操縦し、空母のヘリポートに着地させましょう。ただしコプ太くんの動きには慣性が付く上、燃料が尽きると墜落してしまいます。時間内にピタリと着地させるには、相当な慣れが必要です。 
 本作一番の売りは、なんといっても高度によって拡大縮小する空母の表現です。MSXに拡大縮小機能はありません。そのハードでいかに拡大縮小表示を実現するか。本作の場合、DRAW文のスケールマクロとページング機能を併用しています。DRAW文のスケールマクロを使うと、描画する絵の大きさを変えることができます。そのマクロで同じ空母の絵をサイズを変えて別々のページに描画しておき、コプ太くんの高度によって切り替えて表示することで、スピーディな拡大縮小表示を実現しています。ある種のフレームバッファですかね。

着陸成功! 上手に離着陸するには特訓が必要だ。

 いわばMSXに備わった機能を活用して、それらしく見せているに過ぎないのですが、その手法の見事さには舌を巻くばかりです。ハードがサポートしていない機能を技術と工夫でいかに補うか。そんなところも、当時のホビーパソコン用プログラムの鑑賞ポイントであります。