何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「カギを探せ!」




 というわけで昨日に引き続きポプコム掲載ショートプログラム。86年4月号よりアクションゲーム「カギを探せ!」です。
 青色の主人公を操り、赤い敵から逃げつつカギを探し、宝箱を開けましょう。宝箱は全部で9つ。そのうちのどれかに宝物が入っています。宝を見つければステージクリアです。
 カギは画面内に散らばる水色の「卵」のどれかに入っています。体当たりで壊せば現れます。壊すにはパワーが必要です。消耗したパワーは紫色のマスに体当たりすると回復できます。回復マスも敵も一定時間で別のところにワープするので気をつけましょう。
 卵はカギのありかである一方、敵から身を守るための障壁でもあります。数を壊すほどカギが見つかる確率も上がりますが、壊しすぎると敵を足止めしづらくなって不利になります。このジレンマが巧みですな。





 展開はけっこう乱数に左右されます。しかしプレイヤーの立ち回り次第でリカバリーできる部分が大きく、運が悪くてなすすべもなくやられるということがあまりないのがよいところです。画面に大きく表示された宝箱は存在感抜群。これくらい大きいと見栄えがするので、見た目のインパクトと楽しさが格段に上がっています。


 次回はいよいよ一画面プログラム祭り最終回。

「ファイター」

なぜ人は傷つけ合うの(おい)

 ベーマガの次はポプコムのプログラムが入力したくなったぜということで本日はポプコム86年4月号より「ファイター」のご紹介。
 フル画面横スクロールの簡易STGです。宇宙戦闘機ファイターを操縦し、スプートニク1号人工衛星を撃墜しましょう。障害物にぶつかるとミス。5ミスでゲームオーバーです。
 スプートニクは多種多様な障害物に紛れて画面右から流れてきます。しかしインストで「これがスプートニクですよ」と図示されているわけではないので、どれがスプートニクなのかわかりません。てかどれも珪藻の集合にしか見えません(おい)。まずは流れてくる物体の中から、スプートニクを探し当てるところからゲームは始まります(おい)。

自機の前の足の生えた球体がスプートニクです

 さておき、スプートニクがわかったところで、ようやく土俵に上がれます。障害物は大量に流れてきます。さらにどんどん数が増えていきます。こいつらをかいくぐり、スプートニクを撃墜しなければなりません。ただ「安全装置」によって、弾は障害物をスルーする仕様です。標的とY座標さえ合っていれば撃ち墜とすのは難しくありません。
 時間が経つと数が増えた障害物が壁をなし、まるで迷路ゲームのようになります。そしてしまいには障害物で行き場がなくなってやられる、というパターンが多いでしょう。最大の敵はスプートニクではなく、この障害物です。

ちょっと進めたところ。もうこんなに障害物が増えた。

 スクロールにはマシン語を使用しているものの、基本BASICのゲームなのでスピードは遅めです。ガチのSTGというよりも、まさに昔自作ゲームでよく見かけたタイプの素朴なスクロールゲームといった風情ながら、難易度低めで遊びやすく、不思議と悪くない手触りがあります。それとBGMまで付いてます。BGMはなぜか「風の谷のナウシカ*1。ゲームの雰囲気に合ってるかどうかはさておき、BGMがあると、にぎやかでやはりよいです。リズムが調子外れなのはご愛敬(おい)。

ゲームオーバー。デブリ問題は深刻だな(違)

 ちなみにコメントによると、作者さんのハイスコアは21100点。荒井は初見で20900点獲得しました…果たして高いのか低いのか。

*1:安田成美さんが歌ってたアレです。

「36」

作者さんの名前が1面です

 ファンダム作品が一段落したので、久々にベーマガプログラム。本日はベーマガ89年6月号掲載「36」です。
 作者はかのトコちゃんシリーズの作者さん。それで本作の主人公はトコちゃんです。どうやらこちらもトコちゃんシリーズのようです。

壁を壊して鍵を集めよう。動かない壁が目安だ。

 トコちゃんを操作し、部屋に隠された鍵を三つ集め、扉から脱出しましょう。部屋の壁は押して動かせるほか、トコちゃんが連れ回している砲台で撃つと壊せます。砲台は斜め方向への発射が可能。静止した後、撃つ方向をカーソルキーで指定しながら、スペースキーで発砲です。撃つには弾薬が必要なため、無駄撃ちは控えましょう。
 壁の中には動かせないものがあります。ここにはアイテムなどが隠されています。アイテムは弾薬、脱出に必要な鍵、扉。中には落ちるとやられる落とし穴もあるので要注意です。めくらめっぽうに壁を動かしまくると、どれが動かない壁か―すなわちアイテムのありかが―わかりづらくなってしまいます。どの壁に手を付けていないかの記憶力も試されます。

敵に弾を当てると足止めできる。重要なテクニック。

 部屋にはクラゲのような黄色い敵がいます。これにぶつかってもワンミスです。砲弾を当てると一定時間動きが止まります。止まっている隙にブロックで閉じ込めるなどしてうまく足止めするのがクリアのコツです。
 トコちゃんは残機制ですが、それとは別にHPが設定されています。HPは経時で減少し、タイマーのような役割をしています。これが0になってもミスですので、うかうかしてもいられません。
 壁を壊し、鍵を三つ集めて扉に行けば面クリアです。部屋は全部で36。脱出すると全体の見取り図が現れ、次に進む部屋を選べるのはおもしろい趣向です。部屋の難易度は様々。簡単なルートを探すのも良ければ、あえて難しいルートに挑むのもありです。かくして次々と部屋をクリアして、一番右下の部屋にたどり着けばオールクリアとなります。部屋の数は全部で36。これが題名のゆえんでしょう。

クリアすると次の面を選べる。ルートによって難易度が変わる。

 ゲーム自体はさすがトコちゃんシリーズの作者さん。若干の操作性の悪さは気になるものの、なかなか楽しめます。壁を壊したり敵から逃げるアクション要素もあれば、効率よく壁を動かしたり敵のはめ方を考えたり、壁の位置を記憶しておくパズル要素もあります。砲台の打ち方がよくわからず最初こそ少し戸惑いましたが、打ち方や敵を足止めできることがわかると、俄然面白くなってきます。各面にはデザインに沿った名前が付けられてあり、どんな面があるのか確かめたくなる楽しさもあります。
 同じ面でも鍵や扉の位置はランダムで、毎回変わります。攻略法のパターン化よりも、臨機応変なプレイが求められるゲームと捉えるべきでしょう。

「コザカイ」。
個性的な面揃いだが、それだけでは物足りないのも確か。

 こんなふうにゲームシステムは悪くないのですが、遊んでいると物足りなさも感じます。36面*1もあるのに、各面やることが大きく変わらないので、面が進むと口飽きしてきます。どのルートを選んでも展開が変わるわけでもないので、せっかくのステージセレクトシステムも有効に活かせていない感があります。「源平討魔伝」のように、どこかの面に隠されたアイテムがなければクリアできないとか、その後の展開が楽になる回復アイテムや強化アイテムなどが見つけられるといった、ゲーム展開に変化を付けるようなフィーチャーが欲しかったところです。あと長丁場のゲームなので、コンティニュー機能はぜひ欲しかった(泣)。
 ゲームシステムは完成しています。あとは36面を遊ばせ切る構成や仕掛けさえあれば。もっと作り込めば間違いなくもっともっと面白くなったのに!という惜しさを感じる作品です。

*1:厳密には35面

「BOM」




 変わったプログラムが見つかったので入力してみました。というわけで本日は「BOM」という作品をご紹介。
 一筆書きパズルというのも、自作ゲームプログラムでは、しばしば見かけるものでした。一筆書きの要領でマイキャラを移動して、フィールド上の空いたマスをすっかり埋めなさい、というやつ。
 本作は「基本」その一筆書きパズルです。フィールド上に青と白のパネルが敷き詰められています。自機・矢印を動かすと、踏んだパネルの色が反転します。自機は向きに対して前方・左右への移動が可能です。後退だけはできません。この性質を利用して、フィールドを青か白一色に変えましょう。タイムはより早く、手数は少ないほど好成績です。

クリア目前。最短手を要求されないのがよいところ。

 「基本」なのは、その自由度の高さゆえです。よくある一筆書きパズルは、たいがい解法が決まっているものです。決められた手順を間違えると手詰まりになってギブアップ、最初からやり直し…というパターンですが、本作の場合、フィールド上に障害物はなし、後退以外は自由に移動可能・何度でもパネルを塗り替えできるというルールであるため、「ハマリ」というものが存在しません。パズルらしく最短手を模索する遊び方ができる一方、好き放題にフィールドを塗り替えて暴れ回るという「ドラゴンスレイヤー」のような遊び方も可能です。ですのでこの手のパズルゲームにありがちな、一手でも失敗したら即アウト、といった緊張感がありません。本作にはルービックキューブのような、ギミックを楽しむおもちゃのような感覚があります。成績を気にせず気軽に好きなように遊べるので非常に良いです。


 さて、本作が変わっているのは、発表された媒体です。本作は雑誌掲載プログラムではありません。ブラザーが展開していたソフトウェア自動販売機「TAKERU」の広報誌「TAKERUわぁるど」Vol2に掲載されたものです。
 1991年、TAKERUの新モデル切り替えに伴い、ブラザーではユーザークラブ「TAKERU CLUB」を発足。それを記念したプログラムコンテストを開催すると同時に、ショートプログラムを募集していました。本作はそのショートプログラム応募作です。ブラザーでは、優秀作をTAKERUで販売する腹づもりだったようです。
 記事によるとショートプログラムはけっこう応募があったようですが、コンテストは低調でした。コンテスト応募作は全機種合わせてもたったの5本。時代が昭和から平成に変わり、新しい年号に慣れつつあった1991年という時期、ホビーパソコンでのプログラミングという文化はすでに下火になっていました。

「BATTLE MISSION II」。TAKERUで販売された同人ソフトの一つ。
即売会や現金書留による通販が中心だった当時、
TAKERUは同人ソフト購入のハードルを大幅に下げた。

 にもかかわらずこのような企画を開いたのには、その後のTAKERUの展開とも関係があるようにおもわれます。90年代、TAKERUは同人ソフトの販売に力を入れるようになります。後世語られたところよると、パッケージソフト全盛の当時、TAKERUは苦戦を強いられていたのだそうです。そのためブラザーは、TAKERUならではの売りとなるものを模索していたのだとか。そのひとつが同人・自作ソフトだったのです。
 ブラザーは同人ソフトにTAKERUの活路を見いだそうとしていたのかもしれません。その展開は一次市場の衰退にともない同人が盛んになったMSX界の動向と合致し、TAKERUは末期のMSXを支える存在となりました。

「THE BADMINTON」

これから熱戦が繰り広げられるんだぜ

 今年の目標は「未入力のファンダム作品を全て入力する」ことでした。数あったファンダムN画面プログラムのトリを飾るのはMファン91年9月号掲載「THE BADMINTON」です。
 その名のとおり、バドミントンのゲームです。ゲームは対戦専用。シャトルコックを落とさないよう打ち合いましょう。サービス権を得た状態でシャトルが相手のコートを割れば得点。9点先取で勝利です。

選手は表示されない。この割り切りがゲームの完成度を高めている

 本作は非常にデフォルメされていながら、相当にリアルです。この手のゲームでは、通常、操作すべき選手なりラケットなりのグラフィックが表示されているものですが、本作はどちらも表示されません。かの「コナミのピンポン」以上の省略ぶりです。画面はサイドビューで、表示されるのはシャトルのみ。果たしてこれでゲームになるのかとおもいきや、ちゃんとゲームとして成立しているのです。
 打ち返すのに使うのは基本カーソル/方向キーのみ*1です。自コート上にあるシャトルが白くなっているときだけ打ち返せます。カーソル/方向キーの各方向にはスマッシュ・ドロップ等の4種類の打ち方が割り振られてあり、対応するボタンを押せば、即座に打ち返せるという仕組みです。

白いシャトルをボタン一つで打ち返そう。
シャトルの挙動も見事!

 この手の自作バレーゲームやラケットスポーツゲームでは、たいがいボールの他に選手やラケットが表示されていて、ボールを捉える位置になければ打ち返せない、なんてのがあたりまえです。つまり「自機」を動かす必要がありまして、ボールの動きの他に「自機」の状態も気にしなければなりません*2。当然やるべき動作が増えるので、複雑になってしまいます。
 本作の優れたところは「自機」を省いたことです。プレイヤーが判断するのは、シャトルを打ち返すタイミングと、打ち返す方法だけ。このおかげでシャトルの動きにだけ集中でき*3、遊びやすくなっているばかりか、簡便な操作でリアルな応酬が可能となっています。ついでに基本方向キーだけで打ち合えるので、ぼっちプレイでもスクリーンショットがまぁ、撮りやすい撮りやすい(おい)。


 リアルのラケットスポーツでも、ラケットでシャトルや球を拾ってうまく打ち返せるようになるまでには、それなりに慣れが必要なものです。思い切ってそこを省略して、ラケットスポーツの楽しさである打ち合う醍醐味のみを手軽に味わえるようにしたのが、本作の見事なところです。

「THE BADMINTON大会」(92/4)。あまりの出来の良さに対COM対戦版も作られた。

 こんな具合に本作は非常に出来が良いのですが*4、対戦専用なのが玉に瑕でした。そこでMファン編集部が音頭を取り、後に一人プレイも可能なバージョンが制作されています。ユニークなのは、COMプレイヤーのアルゴリズムを読者公募したこと。掲載翌月の91年10月号でアルゴリズムを募集する旨が告知され、新たなコーナーが立ち上げられます。題して「アルゴリズム甲子園」。その成果として、寄せられた中でも優れたアルゴリズムを搭載した改造版「1人バドミントン」が92年3月号で、「THE BADMINTON大会」が92年4月号にて発表されています。「大会」は5種類のCOMプレイヤーと対戦可能なほか、アルゴリズムどうしを対戦させる観戦モードも搭載された豪華版となっています。
 バドミントンが一段落した後も「アルゴリズム甲子園」は各種思考ルーチンの作り方・考え方を採り上げるコーナーとして、94年まで継続したのでありました。

*1:スペース/トリガーでインパクトの勢いを殺すこともできます。

*2:コナミのピンポン」の場合、ラケットの移動こそ自動だが、バックハンド/フォアハンドの切り替えは手動だった。

*3:プレイヤーのみならず、プログラム面でもシャトルの動きを作り込めるということでもある。

*4:後に季間奨励賞を獲得しています。

「YOPPARAI SPECIAL」

背景のグリッドがクールだぜ

 未入力のファンダム作品も数が少なくなってまいりました。というわけで本日はMファン91年9月号より「YOPPARAI SPECIAL」。
 ヨッパライゲームはドがつく定番中の定番です。ピープホールゲームもMSX2のド定番です。本作もそんなド定番中のド定番と言えるピープホールヨッパライゲーム。軌跡を描いて移動するドットを操作し、障害物に当たらないよう生き延びましょう。操作はいつものヨッパライ式。スペースキーのオンオフで上昇・下降、カーソルキーで左右移動です。
 フィールド内には球状の障害物がちりばめられ、しかも時間経過でどんどん増えます。プレイヤーに見えているフィールドは一部のみ。慎重な移動が必要です。

ゲームオーバー画面。フィールドの全貌が表示される。

 はっきり言って、ここまではありきたりなヨッパライゲームです。しかし本作がひと味違うのはここから。自機が描く軌跡は、目盛りのように一定間隔で赤くなっています。この赤い部分も障害物で、ここに当たってもアウトとなります。自機の軌跡にも交差していい部分と悪い部分がありまして、そんなところも見ながら操作・移動しなければなりません。かの「斑鳩」の属性チェンジをどこか彷彿させる工夫で、その手があったか、と感心させられます。操作性は至って良好。MSX2ならではのグラデーションの効いたグラフィックも見た目にきれいです。さすが自ら「スペシャル」を名乗るだけの工夫と作りが見られます。

歳末一画面プログラム祭りファイナル~その9―Nu~さん編

「青い地球に帰りたい」作者コメントから。
娘さんが描いたイラストがNu~さんの目印。

 入力した1画面プログラムには、Nu~さんの作品もいくつか含まれています。
 Nu~さんはファンダムの常連投稿者です。主に1画面プログラムを中心に投稿し、その掲載数は全26本。ファンダム掲載回数歴代1位を記録しています。数のみならず技術や品質も高く、特にスクリーン3を活用した作品には定評があります。質と量を兼ね備えたまさに名手。個性派揃いのファンダムの中でも特に際だった個性を放っています。
 というわけで本日は満を持して、ここしばらく入力していたNu~さん作品を一挙ご紹介いたします。

「なわとびしよ!」

 「なわとびしよ!」(91/2)は長なわとびアクションゲームです。回ってくる長縄に引っかからないよう、タイミングを合わせてひたすら飛び跳ねましょう。最大3人まで同時参加可能。3人で掛け声を出しながら足並み揃えて飛び跳ねると最高に楽しいとNu~さんはコメントしてますが、もちろん一人で遊べるのも、ぼっちプレイヤーにうれしい配慮です(泣)。リアル長なわとびみたいに「お前引っかかったろ!」と、責任を追求されることもありませんしな(おい)。

連続画像で見る長縄の挙動。ページング機能でスムーズに回ります。

 見所はなんと言っても、Nu~さんお得意のスクリーン3のページング機能を使用したスムーズな長縄のアニメーション。そういや最近、テレビとかで小学生の長なわとび大会をあんまり見なくなったような気がします。

「青い地球に帰りたい」

 「青い地球に帰りたい」(91/3)。定番のランディングゲームですが、Nu~さんですからただのランディングゲームではありません。操るのは宇宙船です。宇宙船は楕円状の軌道を描きつつ、青い球体こと地球の周りをぐるぐる回っています。逆噴射で減速したり軌道を小さくして着陸を決め、地球に帰還しましょう。宇宙船が十分減速していないと、地球に衝突して木っ端微塵です。宇宙船の燃料はごく限られています。やたら吹かすと燃料切れで宇宙の迷子と化してしまいます。

着陸失敗。地球が崩壊するかのようなエフェクトで木っ端微塵(おい)

 とにかくシビアです。上手く着陸するには相当な修練が必要です。このあたりは以前の「コプ太くんの着艦訓練」に通じるものがあります。
 Nu~さんによると、本来地球を周回する宇宙船はケプラーの法則に従うが、その計算をすると遅すぎてゲームにならないとのこと。本作ではそれっぽい挙動をする簡素な計算式によって宇宙船の軌道を求めています。Nu~さん作品には短い中でできる限りのリアリティを追求したところがあり、そこが他との違いになっているとおもいます。

「棒立て一番星」

 「棒立て一番星」(91/5)。棒立ての星を目指し、夜な夜な特訓を重ねるアクションゲームです(おい)。長い棒が倒れないよう、バランスを取り続けましょう。バランスを取るには自分の位置を動かし微調整してやります。ただし少しでもバランスが崩れると、長い棒は容易に倒れてしまいます。倒れたらゲームオーバーです。こないだの「TOPPLE V2」に似てますが、発表はこちらの方が先で、棒は1本だけです。

あえなく失敗。パフォーマーたつみさんの凄さをおもいしった(おい)

 「TOPPLE V2」がそうだったように、この手のゲームはだいたい、保持できた時間がスコアとなるものです。しかし本作では「夜が明けるまで保持し続けろ」というルールを採用しています。具体的には上方にある星(これが「一番星」らしいです)が左から右へとすっかり画面を横切るまで保持し続ければステージクリアとなります。クリアすると棒が短くなってより難しくなった次のステージが始まりますが、面クリア型の耐久ゲームにしたことで、イライラ度やもどかしさが増した感があります(おい)

「グルリン」

 「グルリン」(91/5)。こちらもNu~さんお得意のスクリーン3のページング機能を利用したアクションゲームです。チューブの中を突き進む自機を操り、白い球を拾い続けましょう。黒い球を拾ってしまうと最初からやり直しです。自機は左右回転ができるのみ。画面下方にいるときはカーソルの左右通りに移動できますが、上方に移ると右と左が入れ替わる形になるのでこんがらがります。
 こんなゲーム、前にどこかで遊んだことがあるなと振り返ってみたら、かのアタリの名作「テンペスト」でした。内容はほぼ、弾の撃てない「テンペスト」です。「テンペスト」はベクタースキャンによる立体感が大きな売りでした。本作はページング機能による迫力あるアニメーションが売りです。もしかするとMSXでも「テンペスト」が再現可能ということなのか。それにしてもスーパーザッパーぐらいは撃てるようにしてほしかったぜ(おい)。

「トマホーク発射!」

 「トマホーク発射!」(91/6)は時事ネタを扱った作品です。当時は湾岸戦争の直後。アメリカのトマホーク巡航ミサイルがカメラ越しに捉えた軍事施設に命中する映像もよく見かけたものでした。本作はそれに着想を得た3DSTG。トマホークを誘導し、敵軍事施設に命中させましょう。トマホークは風の影響を受けます。プレイヤーはそれを考慮して適宜軌道を修正し、標的に導かなければなりません。

命中!ミサイルはゲームの中だけに。

 MSXのスクリーン2でワイヤー描画された地平線や軍事施設のグラフィックの粗さが、かえって件の搭載カメラ越しの映像を彷彿させて、妙に雰囲気があります。内容はさすがNu~さん、きちんと遊べるゲームに仕上がっています。
 ゲーム自体はオーソドックスなものでありますが、着想が着想だけに、悪乗りしているようで戦争中は投稿できなかったとご本人がコメントしています。

「大宮操車場」

 「大宮操車場」(91/8)。Nu~さんの兄上がかつて勤めていた職場に着想を得たというアクションゲームです。操車場の運転士となって、白い電車を一番左に導きましょう。4本のレール上にはそれぞれ電車が走っています。その隙間を縫ってレールを移り、左側を目指します。レールは4画面分の長さがあります。左端にたどり着くと画面が切り替わり、隣の画面に移ります。青色の画面で左端にたどり着けばステージクリアです。





 自車が何画面目にいるかは背景の色でわかります。スタートの薄い赤色の画面は右から2番目。他の車両にぶつかると右に押し戻され、一番右の真っ赤な画面で画面右端に押し戻されると失敗です。
 他の車両の動きはイヤらしく、見る見る間に隙を埋めてしまいます。また、スピードを上げていると少し近づくだけでも吸い込まれるように衝突し、右側に押し戻されることが多々あります。画面が切り替わっても車両の位置は同じです。これを頭に入れつつ、スピードを抑えめにしてレールを移動するのが、クリアのコツです。
 スクリーン3でスムーズに流れる線路のグラフィックはさすがNu~さん。動かしているだけでも気持ちよいです。しかし気持ちよいからと調子に乗って動かしていると痛い目に遭うのでご注意を!

「RCホバー」

 「RCホバー」(91/9)。当時小学1年生の息子さんにラジコンのホバークラフトを買ってあげたのはいいけれど、さっぱり貸してくれないのでMSXで再現しましたという作品。ホバークラフトを操り、フィールド上に散らばる色のついた丸を順に拾っていきましょう。すっかり拾えばステージクリアとなります。丸の順番はMSXのカラーコード順。そんなもん覚えてないよという方でも、次の色は画面下を転がる円の色として示されている心配無用です。
 この円は残り時間のメーターも兼ねています。これが画面左端に到達したらタイムアウト。同じステージを最初からやり直しとなります。Nu~さん作品にはゲームオーバーになっても最初からではなく、ステージ最初から仕切り直し、というのが多いですな。
 画面真ん中の黒いところは沼です。ここにはまると動きが遅くなってタイムロスにつながります。面が進むほど広がりより操作が難しくなるという趣向です。

ホバークラフト作成中。
グラフィック画面に描画したものをスプライト化している

 Nu~さん自身がコメントで仰っているように、ホバークラフトの動きが非常に良いです。カーソルの左右で旋回し、スペースキーで加速。グラフィックこそシンプルながら、動作とアニメーションが非常にスムーズ。回転したり浮遊している感覚が気持ちよく、動かしているだけで楽しいです。ところがやはり調子に乗って飛ばしているとコントロールが効かず、拾うのに苦労することになります。長い距離を移動するときは飛ばしつつ、目標物の近くでは減速して細かな操作をするというメリハリが大事です。
 ちなみに息子さんが貸してくれなかったというホバークラフト。電池の消耗の激しさに悩まされたそうです。そこで充電セットも買いそろえたら、飽きてしまったようでぱったり遊ばなくなってしまったとか。


 Nu~さんは当時40代の会社員。某有名企業勤めで子供さんもいて、投稿者コメント欄の挿絵は娘さんが描くのが常でした。中高生をはじめとする若年層が読者の中心だったMファンでは異色の存在です。その作品群にはいずれも年長者らしい機知があり、筋の通ったものがあります。そこがNu~さん作品の魅力でしょう。


 気づけば今年も聖誕節です。地球はあいかわらずですが、せめて今日ぐらいは世界が平和でありますように。そして子供らに明るい未来を。