何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「THE BADMINTON」

これから熱戦が繰り広げられるんだぜ

 今年の目標は「未入力のファンダム作品を全て入力する」ことでした。数あったファンダムN画面プログラムのトリを飾るのはMファン91年9月号掲載「THE BADMINTON」です。
 その名のとおり、バドミントンのゲームです。ゲームは対戦専用。シャトルコックを落とさないよう打ち合いましょう。サービス権を得た状態でシャトルが相手のコートを割れば得点。9点先取で勝利です。

選手は表示されない。この割り切りがゲームの完成度を高めている

 本作は非常にデフォルメされていながら、相当にリアルです。この手のゲームでは、通常、操作すべき選手なりラケットなりのグラフィックが表示されているものですが、本作はどちらも表示されません。かの「コナミのピンポン」以上の省略ぶりです。画面はサイドビューで、表示されるのはシャトルのみ。果たしてこれでゲームになるのかとおもいきや、ちゃんとゲームとして成立しているのです。
 打ち返すのに使うのは基本カーソル/方向キーのみ*1です。自コート上にあるシャトルが白くなっているときだけ打ち返せます。カーソル/方向キーの各方向にはスマッシュ・ドロップ等の4種類の打ち方が割り振られてあり、対応するボタンを押せば、即座に打ち返せるという仕組みです。

白いシャトルをボタン一つで打ち返そう。
シャトルの挙動も見事!

 この手の自作バレーゲームやラケットスポーツゲームでは、たいがいボールの他に選手やラケットが表示されていて、ボールを捉える位置になければ打ち返せない、なんてのがあたりまえです。つまり「自機」を動かす必要がありまして、ボールの動きの他に「自機」の状態も気にしなければなりません*2。当然やるべき動作が増えるので、複雑になってしまいます。
 本作の優れたところは「自機」を省いたことです。プレイヤーが判断するのは、シャトルを打ち返すタイミングと、打ち返す方法だけ。このおかげでシャトルの動きにだけ集中でき*3、遊びやすくなっているばかりか、簡便な操作でリアルな応酬が可能となっています。ついでに基本方向キーだけで打ち合えるので、ぼっちプレイでもスクリーンショットがまぁ、撮りやすい撮りやすい(おい)。


 リアルのラケットスポーツでも、ラケットでシャトルや球を拾ってうまく打ち返せるようになるまでには、それなりに慣れが必要なものです。思い切ってそこを省略して、ラケットスポーツの楽しさである打ち合う醍醐味のみを手軽に味わえるようにしたのが、本作の見事なところです。

「THE BADMINTON大会」(92/4)。あまりの出来の良さに対COM対戦版も作られた。

 こんな具合に本作は非常に出来が良いのですが*4、対戦専用なのが玉に瑕でした。そこでMファン編集部が音頭を取り、後に一人プレイも可能なバージョンが制作されています。ユニークなのは、COMプレイヤーのアルゴリズムを読者公募したこと。掲載翌月の91年10月号でアルゴリズムを募集する旨が告知され、新たなコーナーが立ち上げられます。題して「アルゴリズム甲子園」。その成果として、寄せられた中でも優れたアルゴリズムを搭載した改造版「1人バドミントン」が92年3月号で、「THE BADMINTON大会」が92年4月号にて発表されています。「大会」は5種類のCOMプレイヤーと対戦可能なほか、アルゴリズムどうしを対戦させる観戦モードも搭載された豪華版となっています。
 バドミントンが一段落した後も「アルゴリズム甲子園」は各種思考ルーチンの作り方・考え方を採り上げるコーナーとして、94年まで継続したのでありました。

*1:スペース/トリガーでインパクトの勢いを殺すこともできます。

*2:コナミのピンポン」の場合、ラケットの移動こそ自動だが、バックハンド/フォアハンドの切り替えは手動だった。

*3:プレイヤーのみならず、プログラム面でもシャトルの動きを作り込めるということでもある。

*4:後に季間奨励賞を獲得しています。