GR III。PhotoShop Elementsで縮小
隙あらば登ろうと狙っているのに、今年はなかなか機会がありませんでした。都合の良いときは天気に恵まれず、天気がいいときに限って都合が付かない(号泣)。というわけでようやく機会を捕まえて、今年も鳥海山に登ってきました。
新山と七高山を踏んでくるのはもちろん、今回のお目当ては荒神ヶ岳です。マイナーながら山頂には標識があるようですし、数は少ないながらもヤマレコやヤマップ等のサイトに登頂例もあります。というわけで興味を持って行ってみようとおもった次第です。
今回選んだコースは象潟口。秋田側の鉾立から登っていく、鳥海山随一の人気ルートです。吹浦口より若干所要時間が短くて済むことと、下ったことは何度かあっても実はこれまで登りで利用したことが一度もなかったのが選択の理由です(おい)。
まだ暗い遊佐の町中を抜け、あたりが明るくなり始めた頃鉾立に到着。今回は時間に余裕を持たせたかったため、気合いを入れて早めの出発です。登山者用駐車場に車を駐めたら支度を済ませ、五時半前には登山開始です。
ふと西の方を見ると、鳥海山の影が日本海に伸びていました。「影鳥海だ?…!」。影鳥海とは、日の出直後のわずかな時間、朝日に照らされた鳥海山の影が日本海に落ちて見えるという現象で、鳥海山屈指の奇景とされています。これまでテレビなどで見知っていたものの、まさか直に拝めるとは。やはり実物は迫力があります。
影鳥海が出るということは、相当に天気が良いということです。鉾立の展望台からは、行く手の新山がくっきりと望めました。これはのっけから縁起がいいぞと期待も高まります。
さらに朝日の反対側となる斜面は日陰になるので、非常に快適に歩けます。象潟口は急登もなく、整備もよく行き届いてますからなおさらのこと。鳥海山自らが作る影の中をどんどんと登り、いつの間にやら稲倉岳を追い越し、御浜に近づいた頃、登山道のちょうど前方から朝日が昇ってきました。まぶしすぎてこのときだけ歩くのに難儀しました(おい)。
鳥海山はここからが本番です。御浜で鳥海湖を眺め*1楽しい御田ヶ原を経由して七五三掛を過ぎ、ひいこら言いつつ千蛇谷を登っていくと、新山と荒神ヶ岳が近づいてきます。
荒神ヶ岳登頂例を見ると、千蛇谷から御室の手前で稜線に上がっているのが多いです*2。大物忌神社が見えたあたりから、付近に分岐や踏み跡らしいものはないかと探してみますが、あたりは岩だらけでそれらしきものは見つかりません。どうやら道はないらしいと覚悟を決め、行くならこのへんからだろうと当たりを付け、岩場に取り付きます。
新山のような順路を示す目印はありません。浮き石で滑ったり転げ落ちたりしないようにするのはもちろん、道を見失わないようにルートを取るのにも気を遣います。かくして慎重に登ることしばらく、岩場を越えれば、荒神ヶ岳はもうすぐです。
今回のお目当て・荒神ヶ岳は、新山西隣の小ピークです。いざたどり着いてみると、岩でゴツゴツした新山のあたりと打って変わって草がちななだらかな平場が続き、「荒神」という名前の荒々しさからは想像できない穏やかさです。山頂には「荒神ヶ岳2170M」と記された小さな看板と「忍耐」と刻まれた石碑がひとつ。これでここが目指す荒神ヶ岳であるとわかりました。
荒神ヶ岳は新山の西に、バルコニーのように張り出しています。なので新山や七高山のように、岩場や外輪山が視界の邪魔をするということがありません*3。眺めは抜群。男鹿から温海岳に至るまでの海岸線が、遮られることなく続いているのが、眼下に一望できます。
しかもこの日は最高の天気と来ています。飛島や男鹿はいつも以上にくっきり見えますし、さらに遠くの白神山地や岩木山も望めます。目をこらせば沖の方に佐渡島の島影さえ浮かんでいました。
あたりには涼しい風が吹き渡り、多少寒さをおぼえるほど。休むうち、これまでの登りで噴き出た汗がすっかり退いていきます。
たどり着いた山頂は期待以上にすばらしい場所でした。にもかかわらず訪う者も少ないようで、あんまり人の姿がないのもいいところです。目の前に見える御室の賑わいが嘘のよう。新山から少し足を伸ばしてでも、十分に来る価値がある場所だとつくづく感じ入りました。
一見穏やかであっても、やはりここは火山です。ピークのすぐ脇には火口がありますし、50年前の噴火時には、ここから噴煙が上がったと言います。たまたま荒神ヶ岳で行き会った登山者さんに教えていただいたことによれば、荒神ヶ岳直下の険しいところには、先人が設けたらしい旧い祠や大黒様の像が祀られてあるのだとか。峻険さゆえ、ここが信仰の霊地のひとつとなっていたことが想像できます。
昼休憩を兼ね小一時間滞在後、名残惜しく荒神ヶ岳を出発します。戻りでも岩場を通過しなければ、目の前の御室には戻れません。
御室小屋はすでに今季の営業を終了していました。周囲では、後片付けに来た荷下ろしのヘリが忙しく飛び回っています。いちおう本殿に手を合わせてから岩場を登って新山山頂に到達。特にやることもないのですぐに下って外輪山の断崖を登り、すかさず七高山へ。今年もようやく山形県で一番高いところにある一等三角点を拝むことができました。
帰りは外輪山を下ります。湯の台コースと千畳ヶ原も歩きたいぜ、と伏拝岳・文殊岳を通過。急な下りで七五三掛に帰還すれば、あとは来た道を引き返すだけ。鉾立の駐車場に戻ってきたのは、15時をいくらか過ぎた頃でした。
この日の鳥海山はものすごい好天でした。のっけから影鳥海が出現し、男鹿と飛島は見放題。月山葉山も当たり前。御浜のあたりからは蔵王も望めました。
新山や七高山のあたりからは、奥羽山脈方面が非常によく見えました。栗駒山と虎毛山や神室連峰は間近に青々と望めましたし、早池峰山や岩手山、八幡平までくっきりと視認できます。岩手山*4もぜひ鳥海山から見てみたいと長らく願っていた山でした。
天気が良さそうな時を狙って、これで6回ほど鳥海山に登ってますが*5、その中でも今回は間違いなく最高の天気です。もはや周りの山並みがことごとく拝めるという。懸念していた7月の豪雨被害も、幸いなことに、登山道にはほとんど出なかったようです。大物忌神様に感謝するしかありません。
最高の展望に恵まれたものの、今回は妙に力が出ませんでした(おい)。少々急な登りにさしかかるだけで、やけに息が上がってペースが落ちます。荒神ヶ岳での昼食後、食欲が落ちてその後行動食を摂ることなく下山してきたのでありますが、うちに帰って夕食を食べたら即回復しました。どうやら事前のカーボンローディングが足りなかったようです(汗)。今後の課題ということで。
いつものコースタイム。水場は全て利用できなかったので、飲み水は持参するしかありません。
5:20/鉾立駐車場-5:24/登山口-5:31/鉾立展望台-5:50/県境-6:15/賽の河原-6:42-6:57/御浜-7:09/御田ヶ原-7:32/七五三掛-7:41/千蛇谷-8:58/千蛇谷出口-9:12-10:20/荒神ヶ岳-10:30/大物忌神社本殿-10:57-11:04/新山山頂-11:35/虫穴分岐-11:43-54/七高山-11:58/虫穴-12:17/行者岳-12:30-12:35/伏拝岳-12:57/文殊岳-13:25/七五三掛-13:50/御田ヶ原-14:06 御浜-14:30/賽の河原-14:52/県境-15:09/鉾立展望台-15:15/登山口-15:18/鉾立駐車場