何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「フニクリ・フニクラ」

正しくは「Funiculi Funiculà」と綴ります。

 去年大量に入力したので、今年は入力のペースが遅めです。というわけで先日入力が完了したMSXプログラム。本日もログイン1986年10月号より「フニクリ・フニクラ」です。

登るぜ火の山ヴェスヴィアス(違)

 本作は世にも珍しい山登りゲームです。主人公の女の子を操作して、麓から山頂まで登りましょう。手段は徒歩。題名のくせにケーブルカーは開通してません(おい)*1
 しかしそうやすやすと登れるはずがありません。女の子の行く手には、落石や熊といった障害が立ちはだかります。落石はぶつかると即アウト。熊にぶつかると押し出され、下段に突き落とされます。転落しても死にはしませんが大幅なタイムロスとなってしまいます。
 女の子は上下左右の他、ジャンプができます。ジャンプでは落石以外の障害物を避けられます。うまく使って邪魔者をかわしつつ、どんどん登っていきましょう。ゲームとしては昔よくあったタイプのプラットフォームアクションの仲間ですな。

ジャンプで熊をかわしたとおもったら落石の直撃を受ける。「落!」(泣)

 本作がユニークなのはここから。女の子は各種栄養を消費しながら行動しています。栄養素はプロテイン・脂肪・デンプン・ミネラル・ビタミンの5種。どれかひとつでもこれが尽きたり、限界以上に摂取しても、行き倒れて死んでしまいます(おい)。
 道中に多数落ちている食べ物を拾うと、栄養は回復します*2。ただしパンはデンプン、チーズはミネラル、肉や魚はプロテインと脂肪、野菜はビタミン…といった具合に、食べ物によって回復する栄養素が異なります*3
 各食品が含む栄養素は、タイトル画面で見られます。これを頭に入れて、足りない栄養素を補いつつ、摂り過ぎないよう気をつけながら高度を上げ、山頂にたどり着けばステージクリア。クリアするとグライダーで飛び立ち、クリアボーナス獲得後、次の山のふもとへと向かいます。

ジャンプで肉をかわす。食べ過ぎても動けなくなるというのもやけにリアル。

 山野郎によく知られる症状に「シャリバテ」というのがあります。行動中に体内の血糖値が下がりすぎ、突然動けなくなるという症状です。ハンガーノックというやつですな。他にも水分や塩分が不足すると体温調節ができなくなって行動不能に陥るから注意しろ、ともよく言われます。
 予防のため行動中にちょいちょい水や食べ物を補給することは、山登りの常識。「栄養切れを起こさぬよう、食べ物を摂りながら行動する」というアイディアは実際の山登りと同じであり、一見荒唐無稽ながらも不思議なリアリティがあります。「山ガール」という言葉が生まれるはるか前に女の子を主人公に持ってきたところも、時代を先取りしてますな(違)。

クリアすると山頂からグライダーで飛び立つ。
ここは十分一山だったらしい(おい)

 先日紹介した「ブロッカー」「みてろ」同様、本作もログイン主催「プログラムオリンピック」出品作です。制作はソニー。実際はその下請けチームであるクロンが担当しているようです。クロンといえばMSXユーザーには「レプリカート」や「軍人将棋」等の個性的な作品で知られたところ。高品質なグラフィックに目を奪われる一方、個性派らしいユニークなアイディアが光ります*4

クロン作の「軍人将棋」。ふざけていながら手堅く遊べる隠れた名/迷作。

 ただしこの「フニクリ・フニクラ」、操作性が良くありません。方向キーの反応が鈍くて、機敏な操作ができません。押したのに動かないということがしょっちゅう。ちょっとだけ女の子を動かしたいときなどおもい通りに動いてくれず、ストレスが溜まります。おかげで何度熊に突き落とされたことか(泣)。まさに九仞の功を一簣に欠く。アイディアやグラフィックが良いだけに、この操作性の悪さだけが非常に残念です。


 タイトル画面を見ると、本作は1985年には完成していたようです。おそらくはもともとROMゲームとして市販する予定だったのでしょう。それが何らかの理由でお蔵入りしていたのを、プログラムオリンピック向けに提供したもの、とおもわれます。自作ゲームらしからぬ内容と操作性の悪さから、そんなことが推測されました。

山頂目前で熊に突き落とされる。
もっとキー反応が良かったなら!

 ついでにこのゲーム、当時のオールマシン語ゲームには珍しく、ディスクから起動できます。また、掲載されたリストをそのまま打ち込むと、ハイスコア表示が化けるというバグが生じます*5。MGN3303さんのブログに修正方法が載っていたので、バグを直した上で手軽に起動できるディスク用ローダープログラムを組んでみました。いちおう晒しときます。





meganekun.blogspot.com

*1:「フニクラ」とはケーブルカーという意味なんだぜ。

*2:解説によれば拾い食いをしている模様(おい)

*3:当初本作は食べ物の栄養素を勉強するための学習ソフトとして作られたのだとか。

*4:ちなみにプログラマーは「コースターレース」を手がけた楠本氏。美大出身だそうでグラフィックの品質に納得!

*5:記事によれば仕様らしい。