何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「タコ&イカ~さらわれた友達編」




 ファンダム発のタコが主人公のゲームとして、真っ先に挙がるのはなんといっても米屋のチャチャチャさんの「たこの海岸物語」シリーズでしょう。しかしそれと並んで人気を博したのがOFUKOさんの「タコ&イカ」シリーズです。本日ご紹介するのは記念すべきその1作目、Mファン90年4月号に掲載されたMSX2用作品「タコ&イカ」です。

まずは1面。あっさりクリアしよう。

 「さらわれた友達編」というサブタイトルどおり、イカにさらわれた友達を助けに行く、というストーリーがあるようですが、別に知らなくても遊べます(おい)。本作は固定画面の面クリア型アクションパズルゲームです。主人公はタコ。各面彼を操り鍵を取り、ドアへとたどりつきましょう。もちろん敵キャラのイカが現れたり、複雑な地形が行く手を阻んだり、と一筋縄ではいきません。適宜イカを撒いたり、ブロックを動かして道を作ったりしなければなりません。全32面をクリアして、友達を助け出しましょう。

3面。タコ・イカカニの海鮮そろい踏み

 はっきり言って目新しいものはありません。斬新なルールや独特なゲームシステムの類いもありません。言うなれば荒井が苦手とする、至って「オーソドックスな」アクションパズルゲームです。
 しかしこの作品、ダメかというと全くそんなことはありません。むしろ逆。ファンダム作品でもトップクラスに出来がよいのです。

「タコ」の文字の7面。冗談のようだが廻り方を考えなければクリアはできない。

 本作、とにかく全てに亘ってソツがありません。操作性、動作速度、ゲームシステム、グラフィック、演出等々…ゲームを構成するあらゆる要素がそれぞれ高い品質を誇ります。
 特に見事なのはステージデザイン。ルールは明快ながら、どの面も簡単には解けません。良好な操作性と滞りのない動作速度は、微妙なアクションを可能とします。各ステージはいずれもその微妙なアクションを活かしたもの。テクニカルなキー捌きも、パズルを解く頭脳も必要です。しかしやたら難しいというものではなく、どの面も「少し」頑張るだけで先が見えてきます。この「少し」の加減が全く絶妙! 難易度はやや高めながらも、難しすぎて二日も三日も悩むようなステージがありません*1。ああでもない、こうでもないと何度も試行錯誤を繰り返すうち少しずつ解き方がわかってきて、クリアできるようになる快感、悪戦苦闘しながら自力で解く楽しさが堪能できるのです。この手のゲームは苦手であるにもかかわらず、次の面見たさについ夢中になって、気付けばオールクリアしてしまったぜ。

 

印象的なステージをセレクト。パズルとアクション。どの面も解きごたえ十分。

 この手のゲームはそれこそ「フラッピー」の昔から数多く登場しました。グラフィックに優れた作品もあれば、ステージデザインに工夫を凝らしたものもありましたし、アクションを志向したものもありました。しかしここまでそろいもそろって全ての要素の完成度が高いものはちょっと見かけません。目新しさはないものの、既存のもの―いわば「オーソドックスな」要素―の完成度をことごとく高めた結果、非常に良質なゲームになった感があります。本作は打ち込みアクションパズルの決定版と言ってよいでしょう。
 文句があるとすれば、スタートメニューのデフォルトのカーソル位置が「START(最初から始める)」なので、ゲームオーバー後タイトルに戻ってコンティニューしようとしたら、勢い余ってスペースキーを押してしまってそれまでのプレイがおじゃんになることぐらいのものです(おい)。

最終面の対決。巨大イカがラスボスだ。

 「タコ&イカ」シリーズは本作を皮切りにその後も制作が続き、全4作が発表されました。リストの形式で掲載されたのは1作目のみ。本作発表後程なく、Mファンは付録ディスクを開始します。ファンダム作品は全てそれに収録されるようになったため、2作目以降は入力の労を執ることなく遊べるようになりました。Mファン前期を代表する「たこの海岸物語」に対して、後期Mファンを代表する人気シリーズとも言えましょう。
 当然荒井は当時ノーマークで、ディスクに収録された以後のシリーズもほとんど遊んでいない*2という有様ながら、そんな荒井が夢中になって全32面をクリアしてしまったのだから、その出来の良さは保証いたします。

あっさりしたエンディング。あっさりしすぎて真のEDの存在を勘ぐってしまう。

 ちなみに1周すると、敵の動きが速くなって難しくなった2周目で遊べます。2周クリアすると真のエンディングがあるのかもしれませんが、大変なのでそこまで検証するのはやめときます(おい)。


 はてな見てたら詳しいレビューがありましたので挙げときます。荒井以上に詳しいよ!


iza-namakura.hateblo.jp

*1:各面開始時、スペースキーを押すまでゲームが静止します。始める前にステージを観察して解き方を考えられるのは、非常によい配慮です。

*2:いつでも遊べるという安心感と、展開の手間が面倒くさいという理由で、荒井が付録ディスク作品に意外と手を付けていなかったことは、以前言及したとおりです。