何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「U-BALL」

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題名は「うんとこどっこいバグ消すぞボール」の略らしい

 ゲームにおいて見た目は大事ですねということで本日も打ち込み終わったMSXプログラムネタ。Mファン90年5月号より「U-BALL」のご紹介。


 一言で言えばオーソドックスな固定画面パズルゲームです。画面上にブロックや青いパネルが散らばっています。青いパネルの正体はバグ。これをすっかり消してやりましょう。バグはピンクのボールで踏んづければ消せます。全部消せばステージクリア。全13面でエンディングです。


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 このゲームの場合、ボールの転がし方に特徴があります。画面上のつぶらな目の怪生物は自機です。静止しているボールとこいつのX・Y座標のいずれかが合うと、ボールは怪生物の方に転がってきます。プレイヤーが押して動かせるのは黄色いブロックだけ。ボールを直接押したり引いたりではないところが工夫ですな。
 ボールは座標が合うだけで転がってくるので、うかつに動くとあらぬ方向に転がってハマります。また、ボールが転がりはじめたら、次に備えてすかさずボールの前を横切って反対側へ移るという動作も必要になります。ですので頭を使う他、意外とリアルタイムな操作も求められます。
 ボールは壁やブロックにぶつかると止まります。怪生物とぶつかったり、画面外まで転がってしまうとミス。この特性を利用して、ああでもないこうでもないとパネルを消すのが本作の趣旨となります。

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謎めいたエンディング。ズルして見てやった(おい)

 作者GENさんは、早くからMファンに様々な作品が掲載された常連投稿者です。良好な操作性、明快かつ工夫されたルール、頭をひねるステージ揃いのマップデザイン等に、常連らしい実力の高さがありありとうかがえます。
 特にMSX-BASICで組まれたプログラムながら、動作している機種がMSX/MSX2であるかを自動判別して処理を変えたり*1、面データの効果的な圧縮法などの意欲的な試みが盛り込まれ、プログラム面でも自作派をうならせてくれます。

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いいゲームだが…「ありきたり」でもあった

 本作はこんな具合に常連らしい実力が遺憾なく発揮された良質なパズルゲームなのではありますが、やはり荒井の常というか…掲載当時はさっぱり注目しませんでした(おい)。
 当時この手のパズルゲームは非常にありふれたものでした。一定のルールに従いオブジェクトを動かしターゲットを消していくタイプの固定画面パズルゲームは、投稿ゲームの定番中のド定番です。ルールもゲーム画面も似たような―「オーソドックス」な―パズルゲームは、毎月のようにそれこそ升で量って台車で運ぶほど発表されてましたので、まず目にとまることはありませんでした。どんなに良質な作品であっても「ありきたり」なので、興味を惹かれなかったのです。


 見た目は相当に重要です。特にゲームプログラムが自分で入力するものだった時代、まずはプレイヤーにおもしろそう、入力してでも遊びたいと思わせなければ、遊んでもらえませんでした。ザ・リンクスのDLサービスを利用できた荒井でさえ、ダウンロードする基準は、(遊んで期待を裏切られることがあっても)スクリーンショットの第一印象だったのです。

*1:MSX2では割り込みでカラーパレット変更処理が実行されるようになり、青いパネルが明滅するようになります。