スクロールがゲーム作りの重要技術であることは、拙サイトや当ブログで何度も述べていることですが、中でも横スクロールは実装に工夫が必要なものでした。なぜならテキスト表示機能のスクロールダウンや、エスケープシーケンスでは実現できないから。やるならマシン語を使うか、BASICの場合は便利関数MID$を使うことが多かったと記憶します。
というわけで今回紹介する「鍾乳洞」は、「アクションゲーム38」では最も凝ったスクロールを実装したゲームです。
本作は横スクロールゲームです。巨大洞窟を舞台に、ヘリコプターを操作して、迫り来る壁に当たらないよう洞窟をひた進んでいきます。画面右端に達すると面クリア*1。右に行くほど地形をかわす余裕がなくなっていくので、面クリアは案外手こずります。
もっとも、内容はこれだけ。BASICで40行少々のプログラムですから、敵が出るとか弾が撃てるとかそういう要素は一切ありません。しかしながらマップが横に流れていくのは、それだけでときめくものがありますな*2。
スクロールはMID$やRIGHT$といった関数を利用しています。マップをテキストデータとして保持し、文字列操作によってマップを書き換え、随時表示するという手法です。BASICでも手軽にできることが利点ですが、速度が遅いのが短所で、動きはかなりカクカクです。むろん自機の移動もカクカク。文字1キャラ分こと8x8ドット単位で動くのでとまどいます。
一方、このカクカク移動ゆえ、後退しながら上昇・下降をして地形をかわさなければならないという、本作ならではの「工夫」が生まれているのはニクいと言えましょう。
ところで。80年代、高度なスクロール技術はそれ自体が売りになるものでした。その理由をかんがえてみたところ、スクロールによって表現の幅が各段に広がるから、であったようにおもいます。
「グラディウス」も「ゼビウス」も、流れるようなマップ表示ができなければ、決して作り得ないゲームです。「ロードファイター」や「アメリカントラック」等のレースゲームやカーアクションも、あれほどの臨場感は出なかったでしょう。「サンダーフォース」が画面切り替え式だったら、全く別のゲームになってしまいます。
迫力・リアリティ・テンポ等々。スクロールだからこそできる表現や、スクロールなしでは実現できない面白さは、確実に存在します。コンピューターの性能が現在ほど高くなかったあの当時、だからこそ自在の画面スクロール技術は開発者の技量の高さを示すと共に、創れるゲームの幅と同義に見なされていたようにおもわれるのです。