何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「赤い風船」

もう見ただけでワクワクするタイトル画面

 というわけで久々のMSXプログラムネタ。本日はポプコム85年7月号より「赤い風船」です。
 言わば古き良きタイプの面クリア型風船アクションゲームです。風船が少年の手から離れ、ファンシーワールドに迷い込んでしまいました。妖精を操り、風船を少年に届けましょう。しかし風船は気まぐれに飛び回る上、妖精は風船をキャッチすることができません。画面内に配置されたブロックこと「風の結晶」を動かし、風船の進路を変え、少年の手元まで導けばステージクリアです。

1面開始。最初なのでクリアは簡単だ

 風船ですので、当然、画面内に点在するトゲにぶつかると割れてしまいます。割れてしまったらワンミスです。また、制限時間内に風船を届けられなくてもワンミスです。

1面クリア。風船は再び少年の手を離れて次の面へ。
放さないようちゃんと捕まえとけよ!(おい)

 これではよくある、あらかじめ風船の軌道を読み切って、進路を作っていくパズルゲームだと思われるかもしれません。しかし、そうロジカルなゲームでもありません。それというのも、本作は風船の挙動がまるで読みづらいのです。

2面はビル街。思い通りにならない風船にやきもき

 風船は一定のアルゴリズムに従って動いているのですが、挙動がなかなかめんどうくさく、動きが非常に読みにくいです*1。リストを軽く解読した程度では、どう動くかの完全な予想ができません(おい)。
 もちろん、予想どおりにブロックを動かして道を作るというパズル要素はありますが、それだけでは解けません。ここで軌道を曲げればこちらに行くだろうなと予想して道を作っても、読めない動きのおかげで、あさっての方に行ってしまうということがしばしばなのです。

3面MSX面。当時のゲームでMSX面はよく見たもんだ

 ですので、少しずつ道を作っては風船を導き、うまくいかないところがあったらその都度やり方を変えるといった具合に、試行錯誤の方が重要となります。
 パズルゲームと呼ぶには理詰めで解けるわけでなく、アクションゲームと呼ぶにはボタンさばきだけでは決して解けません。それがこのゲームの特徴と言えるでしょう。悪く言えばどっちつかずということなんですけど(おい)

4面クリア! ゲームは予測と試行錯誤の連続

 ゲームはなかなかシビアです。コンティニューやギブアップ・リトライ機能はなし。全5面とステージ数は少なめながら*2、オールクリアは一仕事です。クリアにはおびただしい回数の試行錯誤を要する他、操作ミス等で行き詰まることも多いので、ぜひとも実装して頂きたかったところです。

最難関の最終面。どうやってクリアするか見当も付かないが…

 ステージ中にはボーナスアイテムが出現し、風船がこれを拾うとボーナス点が入ります。しかし風船を思い通りに導くのも難しく、まずはクリアするのに手一杯なので、かまけている余裕はありません。また、悪いことにボーナスアイテムはランダムに配置される「障害物」扱いです。妖精やブロックは、ボーナスを通過できません。ですので配置が悪いと狙い通りにブロックが動かせず、最悪クリアできない、なんてことになるのは一考の余地ありです。
 ただし、グラフィックがなかなかよくできてます。オープニングデモの風船が文字を書き換える演出は、何気ないようで目を惹きます。妖精のアニメや、ステージ終了時の風船が再び少年の手から離れるデモや、クリアボーナス加算時のスコア表示処理等、演出には気を遣って作られています。

ついに最終面クリア! コンティニュー機能ぐらいは欲しかったな。

 ゲームとしては少々問題ありという気もしますが、そのかわり画面作りが丁寧でとても雰囲気が良いため、感触は決して悪くありません。なのでやや不条理に難しいにもかかわらず、プログラムを改造することなく、全面クリアしてしまいました。不思議と自分で試行錯誤して先のステージを見てみたい、とおもわせる魅力があるのです。まぁ、エミュレーターのステートセーブ機能のお世話にはなったけどな(おい)。

あっさりしたエンディング。本作には妙に惹かれる魅力がある。

 ちなみに作者は以前採り上げた「GEM」と同じ方。グラフィックやゲームの雰囲気が確かによく似ています。

*1:アルゴリズムをおおざっぱに説明すると、壁に当たれば反転して、角に来ると当たった回数に応じて曲がる方向が変わるといった処理をやっている。念のため、風船の移動アルゴリズムに乱数は使っていない。

*2:作者さんのコメントによれば、データを自作してステージを増やすという遊び方も想定している模様。