何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

岩部山に行ってきた

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GR IIIで撮影。Photoshop Elementsで縮小


 かねてより気になっていた岩部山に行ってきました。岩部山は上山と南陽の境あたり、中川地区にある里山です。現在は国道13号線のバイパスの「岩部山トンネル」が貫通してまして、むしろそちらのほうで有名かもしれません。荒井もトンネルでその名を知った口ですが、どうやらあのトンネルの上の山には登れるらしいということを近年知りまして、ならば行ってみようぜとおもった次第です。


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 厳密には登山道ではなく、巡拝路。江戸時代後期、飢饉で苦しむ人々の様子に胸を痛めた金毛和尚という人物が、三十三観音の聖地を当地に築いたのがそのはじまりです。山中にはこの三十三観音を巡る道が整備されてまして、こちらが今でも歩けるようになっています。
 三十三観音南陽市文化財に指定されています。荒井が行ったときも中学生の一団が歩いているのを見ましたので、現在でも慣れ親しまれている様子です。


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 その名のとおり、岩部山は岩がちです。巨岩奇岩があちこちに顔を出し、先日歩いた山寺天台の道を彷彿させます。なるほど、観音様の聖地を作るならここだ、と金毛和尚が思い定めたのも自然なことでしょう。三十三体ある観音像の多くは、そうした岩に刻まれた磨崖仏です。どれも素朴な造形で、名のある仏師が作るような精巧さや洗練された美しさこそありませんが、地元の腕自慢が鑿を振るったんだろうなという力強さや親しみやすさがあります。


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 低山ながら道は急峻で狭く、岩場の多さゆえ鎖場などもあって、いかにも修行の地といった雰囲気。天狗岩と呼ばれる岩を上がると、眼下に中川地区を一望できます。
 この岩がちな地形ゆえ、当地は永らく交通の難所でもありました。近代的な道ができたのが明治初頭の三島通庸時代。そして山腹のトンネルが開通したのがつい9年前。天狗岩からは、ふもとの吉田橋やバイパスももちろん見下ろせます。


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 巡拝路は里に非常に近いところにあります。途中、ふもとの民家や畑がちらちらと見え、国道を行きかう車の音も聞こえてきます。しかし山道であることに違いはないので、油断は禁物です。標識こそあるものの気を付けなければ迷いそうな場所もありますし、整備されて至れり尽くせりというわけでもないので、山歩きに向いた靴や服装でなければ難渋しそうです。


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 全部で33体ある観音像のうち、27体を廻ったところで、時間のことも考えて行程を終了。岩部山の駐車場からこぶし荘近辺に出て、バイパスのアンダーパスを通って再び駐車場に戻ってくるまで1時間半ほどでした。残る6体は次の課題ということで。桜が終わり、新緑を楽しみながらの道中でした。
 岩部山は去年たずねた中山の諏訪神社に近いところにあります。近々見頃を迎える芍薬見物のついでに廻ってくるというのもいいかもしれませんな。