何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「CRAZY ROAD'91」




 「引き算の妙」。そんなことを想起させる作品です。というわけで本日のプログラムはMファン91年2月号より「CRAZY ROAD'91」です。


 本作はシンプルな3D風ドライブゲームです。画面上に道と車が表示されています。小難しいルールはなし。車を操り、ひたすら道路を駆けましょう。道はジグザグに曲がったり急カーブを描いたりと、予測不能な逝かれた線形を描きます。適宜ハンドルを切り、コースアウトしないよう気をつけましょう。コースアウトしたら即ゲームオーバー。それまで走った距離が得点となります。アクセルやブレーキ、シフトチェンジといった操作はありません。思う存分ハンドリングに集中できます。





 この作品、コース表示がとにかく高速かつスムーズです。ゲーム画面こそ小さいながら、道路は奥から流れるように迫ってきます。少しでもコースアウトすると即ゲームオーバーになる当たり判定の厳しさは気になるものの、抜群の疾走感が味わえます。


 作者さんは本作について、「ミジメな姿」になってしまったゲームと評しています。当初は画面はより大きく、ライバル車との競争ができて、アクセルとブレーキ操作もできるという、非常に凝ったものだったといいます。しかしそれでは遅すぎて遊べる速度にならなかったため、次々と機能を削っていった結果、このような内容になってしまったのだとか。そして編集部も、いつかはそういうゲームを作ってファンダムに送って欲しいと激励しています。

ゲームオーバー。シビアな当たり判定に泣かされます

 作者さんにとっては、ある意味不本意な出来だったようです。しかし削りに削った「ミジメ」な状態だからこそ、この作品は良いのでないか、という気がします。
 言うなれば当初のバージョンは「よくある」ドライブゲームです。MSX2上で十分な速度で動いたとしてもそれはすごいことですが、果たしてこれほど明快で潔いゲームになり得たでしょうか。機能をそぎ落としていった結果、最後に残ったのは「抜群の疾走感」という、ドライブゲームに最も必要なものでした。
 ドライブゲームやレースゲームは、突っ走る気持ちよさを味わうゲームです。ゲームシステムや技術に凝っても、走る気持ちよさがなければ台無しです。ドライブゲームの根本とも言えるものをしっかり備えているのなら、「ミジメ」であってもそれが大正解だとおもうのです。