最近用事やらなにやらですっかり遅れてしまってましたが、ようやくプログラムを打ち終わったのでご紹介。今回はポプコム1985年12月号掲載の「ドリームランナウェイ」です。
内容は3Dカーアクションゲーム。レーシングカーを操り、ワイヤーフレームで描かれた3D迷宮から制限時間内に脱出するのが目的です。出口は迷宮のどこかに存在し、そこにたどり着ければ次の面へと進みます。迷宮の数は全部で12。各面のコーナーには順に番号が振られており、現在地はこのコーナー番号で示されます。各コーナーのつながりを把握し、マップを明らかにすることが攻略の近道です。
マイコンが普及しだした昔から3D表現がゲームプログラミングの一大テーマだったことは、これまで何度か述べていますが、中でもワイヤーフレームによる立体表現は、よく目にするものでありました。当時の非力なコンピューターでも、BASICの命令だけで比較的容易にそれらしい表示ができたためとおもわれます。
しかしこのワイヤーフレーム表示、それらしく表示するだけなら簡単ですが、高速かつスムーズに表示させるとなるとなかなかたいへんでした。MSXの3D迷路ゲームとしてまず名前が挙がる「イリーガス・エピソードIV」*1はスクリーン3を使ってましたし、「ゼータ2000」*2や「激走ラビリンス」は、PCGベースでした。
この「ドリームランナウェイ」が凄いのは、無印のMSX1で、その高速かつスムーズなワイヤーフレーム3D表示を実現してしまったことです。リストは大部分がマシン語で、12ページを越える長大なもの。当然ながらテープ専用です。
マシン語のおかげか動作は極めて快速で、アニメーションも至ってスムーズ。自車の速度はギアシフトで4段階に変えられるのですが、最高速にすると飛んでいくような勢いで背景が迫ってきます。この、マシンを操り高速に駆け抜ける疾走感と爽快感こそ本作の魅力です。
本作の3D表示は、コーナーを曲がるごとに表示が切り替わる「ゼータ2000」式。弄った感覚は「ゼータ2000」でゼータザッパーに乗っている時に近いです*3。カラフルさでは「イリーガス」や「ゼータ2000」に敵いませんが、スムーズさは決して引けをとりません。各面クリア時にはきりもみ急降下して次の階層へと向かうデモが見られますが、グリッドが回転しながら拡大して迫ってくるアニメーションも見物です。
MSXの限界に迫るハイテクを実現する一方、作品自体はけっこう粗が目立ちます。停止状態からいきなりトップギアに入れると画面がバグります。また、敵車との当たり判定におおざっぱなところがあって、十分距離をとったにもかかわらずクラッシュと見なされてミスになったり、さらにミス後のリスタート時に画面内に敵車がいると走り出す前からクラッシュとなって続けざまにミスになってしまうといったバグまであります。BGMはなし*4。エンディングというものもなく、12面をクリアしても何のメッセージも表示されないまま、何事もなくまた1面が始まるという素っ気なさです。
こんな具合に欠点こそ多いのですが、この抜群の疾走感と突っ走る気持ちよさの前には、そんな粗など吹っ飛びます。レースゲームに必要なのは疾走感と迫力。高い技術力を爽快感につなげるのは、あたりまえのようでいて案外難しいのですが、その点本作は見事なものです。
このゲームの作者さんは、以前紹介した「ザ・忍」や「DEMAND」と同じ方でして*5、それを鑑みれば(時に素っ気ないほどの)クールなカッコよさも納得です。静止画よりも動いているところをご覧いただいた方がこの作品の凄さが判るだろうので、久々に動画も用意してみました。ここに貼っときますのでどうぞご覧ください。
www.youtube.com