何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「THE STARTREK」

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 またプログラムを打ち終わったのでご紹介。今回は月刊マイコン84年8月号掲載のSLG「THE STARTREK」です。
 もはや「スタートレック」は説明無用でしょう。宇宙船エンタープライズ号が前人未踏の宇宙に勇敢に航海した物語ですな。本作はその「スタートレック」を題材にしたゲームです。


 本作は作者によるオリジナル作品ではありません。既存のSLG作品をMSX向けに再現したものです。
 SLGスタートレック」の歴史は古く、まだパソコンが登場するはるか以前の1970年代、ミニコン用ゲームとしてもともと誕生したものです。その後コンピューターの発達と普及にともないさまざまな機種に移植され、広く遊ばれるようになりました。そのためコンピューターゲームの古典の一つと見なされています。ちなみにこのMSX版を作ったのは、以前紹介した「PLANET EARTH」や「アタックモスキートン」の作者さんです。


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 ゲームの目的は、エンタープライズ号で銀河を飛び回り、期限内にクリンゴンの軍艦を全滅させること*1。移動・攻撃・防御等にはエネルギーが必要で、これがなくなれば敗北です。
 基本的に操作は全てコマンド式。移動や攻撃の際には、方向を具体的な角度で与えてやる必要もあります。まずはこれに慣れないとゲームになりません。カーソルorタッチなどという現代的なデバイスに慣れた身には酷ながら、フル・キーによるコマンド入力操作というところに、ミニコン発祥の古典らしさを感じます。


 さまざまな機種に移植されたとはいえ、そのほとんどは「勝手移植」ですから、移植による変更が加えられることもしばしばでした。おかげで無数のバージョンが存在しています。RPGの「ローグ」みたいなものでしょうか。それはこのMSX版も同じです。さらに制作者は「スタートレック」をやったことがなく、画面を見てこんなもんだろうと想像しながら作ったとのことで、よくあるバージョンとはあれこれ違っているようです。


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 このバージョンの大きな違いは、ロングレンジセンサー表示でしょう。
 銀河はいくつかの区画「クォドラント」より構成されています*2。画面上にマップとして表示されるクォドラントは、現在エンタープライズ号がいるところのみ。この現在地のクォドラントの様子は「ショートレンジセンサー」画面として表示されます。
 一方でそれ以外のクォドラントは概要が大雑把に示されるのですが、こちらの表示は「ロングレンジセンサー」と呼ばれます。一般的なバージョンでは、ロングレンジセンサーで他のクォドラントにいる敵の数や存在する基地の数などが表示されます。
 ところがこのMSX版ではそのクォドラントに存在する惑星や敵艦や補給基地の総量が16進数として表示されるだけ。つまりそこに何かがあるということは分かっても、それが何であるかの詳細までは分かりません。ですから生命線となる補給基地の位置がさっぱりわからず、苦戦は必至です。
 旧いゲームデザイン、煩わしい操作方式、高い難易度等々、今の遊びやすく、至って親切なゲームに慣れきった荒井の身にはあまり楽しめませんでした(おい)。しかしそれでもぶつくさ言いながら遊んでしまうのは、さすが古典中の古典といったところでしょうか。


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 先述のとおり、スタートレックライクゲームはさまざまな機種で制作されました*3MSXでも「スターフリート」「EARTHTREK」「宇宙戦艦ヤマトタケル」等々、スタートレックライクSLGがいくつか存在しています。
 商業ベースに乗った作品では、版権に配慮して題名はもちろん、「エンタープライズ」や「クリンゴン」等々の固有名詞を微妙に変えてあるものですが、このバージョンは作中の名詞がそのまま使われています。そのほか誌面では映像作品のショットが使われてますので、本作は配給会社の許諾を得ているようです。当時公開された映画「ミスター・スポックを探せ!」の紹介記事なんかも載っているので、本作には映画の宣伝の一環という性格もあったのかもしれません。

*1:初めて触れたスタートレックTNGなせいか、クリンゴンに宿敵というイメージがあまりなかったりします。

*2:TNGでは「象限」と訳してたのはコレでしょうか。

*3:ナムコの「スターラスター」なんかも影響を強く受けたと言われてます。