何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

ポプコムと出会う




それでベーマガを購読するようになって以来、
荒井もMSX以外の機種の情報や、当時のパソコン界の様子といった情報に
触れられるようになったわけですが、そうすると程なく、
もっといろいろなことを知りたいと欲が出てきます。
その頃うちの兄の友人が、荒井兄弟に貸してくれたのが「ポプコム」(POPCOM)でした。


ポプコム」は新企画社が製作し、小学館が発行していたパソコン情報誌です。
小学館発行の強みを活かし、高橋留美子あだち充といった、小学館お抱えの
人気漫画家のキャラクターCGを独占的に掲載するなどして、他誌との差別化を図っていました。
他にもゲーム攻略情報がけっこう詳しくて、J.D.加藤さんや与志田拓実さんの
同時進行攻略記事、円丈師匠のゲーム評論記事など、面白く読んでいたものです。
岩崎美奈子さんのイースもの投稿イラストなんかも好きでしたが、
ミーちゃんが誌面が賑わすのは、まだまだ数年先のことです。
ついでにノワール小説で名を挙げた馳星周氏が、レーニンという筆名でライターを担当していたのも、
往年の読者にはよく知られた話であります。


さておき、ベーマガほどの数はありませんでしたが、
ポプコム」にはゲームプログラムも掲載されていました。
今回紹介する「シークレットルーム」は、そんな「ポプコム」に掲載されていたMSX作品です。
エンディングでは作者の本名と住所が表示されるのですが、
このあたり、個人情報とやらにうるさくなかった当時のおおらかさが感じられます。





「シークレットルーム」は、86年8月号に掲載された、RPG風味の面クリア型アクションゲームです。
プレイヤーは主人公JESをあやつり、ゴーストに乗っ取られた城を
取り戻すべく戦いを挑むのですが、各面には様々な怪物どもが控えている上、
謎が隠されており、これを解かなければ先へ進めません。
このあたりは当時大人気だった「ドルアーガの塔」の影響でしょうか。
もっとも、謎とは言っていますが、その内容は敵を決められた順番で倒すというものでして、
しかもゲーム序盤でその順番が明かされるため、そう難しいものではありません。


ともすれば単調な展開になりそうな内容ですが、
面構成や敵の攻略方法等に工夫が凝らされてまして、単調さを感じさせないようになってます。
JESの攻撃手段は、剣攻撃と魔法攻撃の二つがありまして、
どちらにも長所と短所があり、状況に応じた使い分けが可能です。
剣攻撃は全ての敵に有効ですが、一撃の威力が小さい上、タイミングを計らないと反撃を受けます。
魔法攻撃はほとんどの敵を一撃で倒せるほど強力ですが、体力を著しく消耗します。
さらに絶妙なのは、敵を倒せば体力が若干回復するところでして、
魔法による消耗は、回復量を遙かに上回るように設定されています。
ですから敵の強さや、こちらの被ダメージ量などを考慮して、
剣攻撃で凌ぐか、魔法で効率よく倒すかといった判断が必要となるわけです。





各面の謎を解いてクリアすると、ささやかなイベントが繰り広げられます
それはたとえばゲームのヒントだったり、体力回復ボーナスだったり、
果てはゾンビの踊りや、ポプコムの宣伝だったり。
こうした工夫が、ゲームのよいアクセントとなっています
動作速度が遅いのが玉に瑕ですが、それでもよくまとまった内容で、
謎解きアクションとして、十分楽しめる作品に仕上がっています。


本作のプログラムリストはB4版にして5ページ弱、
行数にして350行ほどでして、全てBASICで組まれています。
ベーマガのものとは比べものにならない長さで、入力には骨が折れましたが、
いざ走らせてみると、その凝った内容と面白さに、
MSXのユーザーレベルで、こんな作品が作れるんだ!」と、衝撃を受けたものでした。


ベーマガは飽くまで入門者向けでしたので、ダンプリストや長いリストが載せられなかった上、
プログラムの見やすさ・わかりやすさも相当に重視されていましたので、
そうしたものを度外視した面白さ第一の作品というものは、なかなか掲載されませんでした。
ところがそういう制約を取っ払ったところには、また見知らぬ世界が広がっていたわけです。
ポプコム」のプログラムには面白さ第一といったところがありまして、そこが魅力でありました。


なんだかんだで「ポプコム」は5年ほど購読しまして、
現在では当時を知るための貴重な資料となってます。