何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「BALLBALL」




 かなり久々のMSX打ち込みゲーム紹介。書けと言われたような気がするので今回はこんなプログラムをご紹介。


 今回紹介する「BALLBALL」は、ベーマガ1986年10月号掲載のMSXプログラムでして、二人対戦バレーゲームとでも言やいいのか、二匹の猫がボール遊びで得点を競いあうゲームです。
 プレイヤーはそれぞれ赤猫くんと白猫くんを操作して、ボールをラリーしつつ、相手コートに打ち込めば得点で、15点先取した方が勝ちとなります。
 プレイヤーはジャンプとアタックが可能で、地上でアタックすればトス、空中ならスパイクといった具合に変わります。サーブ権とタッチネット、デュースのないバレーと言えばわかりやすいでしょうかね。作者さんは「はっきり言って変則バレーボール」と説明していました。ちなみにゲームは二人専用で、遊ぶにはジョイスティックが2本必要となります。





 この作品の巧いところは、そのシンプルさにあります。
 スポーツゲームに限らず、数あるゲームが犯しがちな失敗なのですが、リアリティやルールの再現等にこだわりすぎた結果、盛り込みすぎて難解になったり遊びづらくなるということがあります。
 本作ではプレイヤーは二人だけ、とにかく相手コートにボールを落とせば得点、トスとスパイクは自動切り替えと、ルールを大胆に省略したおかげで、誰でも単純明快に遊べるようになっているのです。


 また、シンプルでありながらも手を掛けるべきところは手抜きをしていません。プログラムはオールBASICですが*1、このシンプルさのおかげか操作性は良好で、ボールは完璧な放物線を描き、滑らかに跳ねまわります。スパイクが決まると「バシッ!」と気持ちのいい効果音が鳴ります。単純ながらも、駆け引きを許すだけの懐もありまして、コート間際でスパイクを決めると見せかけて、そのまま相手コートに落とすといったフェイント攻撃や、サーブ中にいきなりスパイクで先制を狙うといった戦法も可能です。
 

 この「ボールを追っかけて打ち合うだけなのに単純に気持ちがいい」「単純なのに駆け引きがある」というところが重要でして、シンプルながらも、熱く楽しめる対戦ゲームに仕上がっているのです。
 末節を省略し、重要なところに絞って徹底して作り込むというのは、現在に通じるゲームづくりの方法論かもしれません。





 このゲーム、やはり残念なのは、二人対戦専用で一人では遊べないこと。だから今回スクリーンショットを撮るのはなかなか苦労しました。もっとも、一人プレイ用のアルゴリズムを組み込むとその分リストも長くなりますし、対人プレイほど盛りあがらないでしょうから、これもシンプルに割り切ったゲーム設計の妙なのかもしれません。
 Dr.Dは本作を、「なまじコンピュータ相手のゲームより、2人用で対戦できる方がおもしろいゲームが作れる。」と評していました。パッド内蔵のMX-10ユーザーだったので、スティック1本買うだけで遊べた荒井でした。

*1:長さは約80行ちょい。短いです。