何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「34-鶴間さん死闘編」




昨日紹介した「アフターリミッツ」は、「沙羅曼蛇」のパロディ作品でしたが、
市販ソフトやアーケードゲームの醍醐味を打ち込みプログラムで、という作品は、
80年代の自作シーンではよく見かけるジャンルでありました。
今回紹介する「34-鶴間さん死闘編」は、そんな時代のそんな作品の一つです。





「34-鶴間さん死闘編」は、80年代中盤のベーマガに掲載されたMSX用アクションゲームです。
敵をよけつつ鍵を拾い、制限時間内に扉に入れば面クリアというもので、
まぁ、ご覧のとおりの「ドルアーガ」風迷路ゲームです。
一見意味不明な題名ですが、これは当時のパソコン少年に大人気だったラジオ番組
大橋照子のラジオはアメリカン」に因んでいます。
鶴間さんとは番組の放送作家鶴間政行さんのことで、34とは大橋さんの当時の年齢。
没ハガキの恨みが生み出したモンスターに連れ去られた大橋さんを救うため、
鶴間さんが奮闘するというストーリーだったかと記憶してますが、
なぜかカセットテープが敵キャラだったりするのはそういうことです。
ついでに制作者のPN「五代裕作」は、「めぞん一刻」が元ネタと思われますが、
このあたりも時代を感じさせますな。


本作は「ドルアーガ」を意識しているのでしょうが、やはりアーケード基板とMSX-BASIC、
相当の変更というかスケールダウンを余儀なくされているようです。
スクロールは横から縦に、敵キャラは3種類だけ、数々のアイテムは登場せず、
戦闘は「パワーエサ」式の体当たり方式、そして各面同一パターンの迷路等々、
ドルアーガ」というよりも、むしろ「ドルアーガパックマン」のような内容になってます。





本作は「ドルアーガ」に憧れ、見事に玉砕した作品の一つなのでしょう。
しかしそれでも遊べる作品に仕上げようと、同一の迷路であっても、
各面敵やアイテムの配置を変えることでバリエーションを付けたり、
敵の移動速度を上げたり、5面ごとに壁が見えなくなる面を設けてみたりと、
奮闘した痕跡が見られます。
「アーケードの醍醐味をご家庭で!」という作品には、
外見が似ているだけで中身はさっぱりというものも多かったのですが、
そうした作品に比べれば、本作は格段に出来がいいですし、
ドルアーガ」とはゲーム性が異なるとはいえ、遊べる作品に仕上がっています。
ドルアーガ」はその後MSXにも移植されましたが、MSX版と比べたら、
自分は「鶴間さん死闘編」の方が好きですね。
全20面で、クリアするとエンディングが見られますが、
高次面になると難易度がかなり高くなるので、自力クリアできた方がいたのか気になります。





アーケード基板に比し、あまりに貧弱な性能しかなかった当時のホビーパソコン、
マシン語を駆使するソフトハウスによる「完全移植」でさえ難しかった時代なのに、
それをアマチュアのBASICプログラムで再現しようというのは所詮限界があります。
しかしそれでも「マイマシンでアーケードの昂奮を! 市販ゲームの感動を!」というのは
当時のパソコン少年の夢でありまして、多くの自作派プログラマーが、
果敢な挑戦を繰り返し、挫折し、大いにもがき、腕を磨いたのでした。
死闘していたのは鶴間さんではなく、制作者だったのかもしれません。