何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「STAR ROAD」




 またプログラムを打ち終わったのでご紹介。今回ご紹介するのは「メインイベント」に続き、ログイン85年10月号掲載の3Dシューティング「STAR ROAD」です。


 本作は「は〜りぃふぉっくす」や「Xak」で知られるマイクロキャビンの制作。つまりプロのソフトハウスが作ってます。
 当時ログインでは年に一度、いくつかの人気ソフトハウスにオリジナルゲームプログラムを作ってもらって誌面で発表し、競いあわせる企画「プログラムオリンピック」を開催していました。現在以上にプロとアマの垣根が低かった当時だからこそできた企画ですな。
 日本ファルコムの「井上忠信のドラゴンスレイヤー」のように、プログラムオリンピックではソフトハウスがお蔵入りしたゲームを発表することもありました。本作「STAR ROAD」も実はそうした作品。発売寸前までこぎ着けたのだそうですが、当時の3Dシューティングブームに乗り遅れてボツになったというお話です。





 さておき本作は「エクセリオン」や「ゼクサス」を彷彿させる3D風STG。マイクロキャビンならむしろ「ポーラスター」*1と言うべきでしょうか。
 ゲーム内容は至ってシンプル。奥の方から迫ってくる敵や弾をかわしつつ、画面中央の照準に敵機を捉えて撃墜しまくるというもの。ちょっと変わっているのはTIMEがカウントされていて、増えると自機が減るところ。つまり時間制限がありまして、その間でどれだけ稼げるかというわけです。もっとも、100カウント程度では自機が減る気配がないので、制限時間はけっこう長くとってあるみたいです。


 「ゼクサス」や「ポーラスター」に比してもシンプルそのもの。ボスキャラやエンディングなどはありません。ただし迫り来る敵キャラや弾、やられた時の爆発アニメーション、そして10000点以上取ってから再プレイすると背景が海に変わるなど、なかなか演出に凝ってまして、単調さや淡泊さを感じさせません。さらにこのプログラムはオールマシン語で、動作はスピーディ、容量も8K以内、リストにして正味3ページに収まっています。それだけコンパクトなプログラムでこれだけのゲームを実現したところに、さすがマイクロキャビン、プロのソフトハウス謹製だと唸らずにいられません。





 ところでこの作品には掲載されたリストに誤植がありまして、そのまま入力して実行すると見事にバグります。いくら見直しても間違いが見あたらず「いったいどこにバグがあるんだ!?」と、動くまでひとしきり悩む羽目になりました(泣)
 さいわい、ログインのMSXゲームに詳しいM_tさんに、次号85年11月号に載っている訂正情報を教えていただき、無事動かすことができました。
 そのバグはA362h番地からA370h番地に格納されているハイスコアルーチンの処理が間違っているというもので、修正箇所は数バイト程度。


A360h:F8 C9 11 94 AB 21 97 AB
A368h:06 87 0F DE D9 0C 0C B7
A370h:C9 C5 06 03 7E E6 F0 1F


 となっているところが、


A360h:F8 C9 11 94 AB 21 97 AB
A368h:06 03 1A BE D8 C0 2B 1B
A370h:10 F8 B7 C9 C5 06 03 7E

 となるのですが、訂正後の処理が訂正前のバイト数と同じにならず、10月号掲載分リストのA371h以降の処理が3バイト押し出され、以降のチェックサムがまるきり変わってしまうという状態でした*2
 そのせいか11月号では訂正後のリストがまるまる掲載されています。リストを提供して下さった村上さんと訂正情報を教えて下さったM_tさんにこの場を借りて改めてお礼申しあげます。

*1:前作を作っているのがSPSだったりキャリーラボだったりと、所属がけっこう謎なゲームシリーズ。ところでMSX2で4メガROMで出す予定だった続編「ウィルビドゥ」は結局お蔵入りしたんでしょうか?

*2:つまりA371h以降が3バイト分後ろにオフセットされ、A374hから格納されることになります。末尾のAC00h以降に押し出された3バイトは切り捨てられてます。

しかしやるのはゼータ2000の話だぜ

Pixel is the sort of studio that, in the days before intensive research efforts like GDRI, would be hard to know ever existed. Working for only a short while as a small developer for the MSX, Pixel soon stopped making their own games to vanish into the Japanese industry’s confusing world of contract developers for the rest of their days.

先日たまたま発見した海外のあるblogから。
一部MSXユーザーの間では妙に人気の高い、ピクセルの「ゼータ2000」のエントリーです。
ピクセルの歴史に触れながら、ゼータ2000のあらましやゲーム内容を紹介するというもので、
「5部からなる壮大なバックストーリー。」「当時らしい鬼のような難易度。」
「ヒントはほとんど無し。マッピング必須。」「毎回のザコ戦が死闘。」
「僅かな回復手段。成長もなし。」「すぐ迷う。」
「ゲームとしてはアレだが妙な魅力がある。」等々、
けっこう遊んでから書いたとしか思われない内容。
ただでさえ日本語資料の少ないゲームで日本人にさえハードルが高いというのに、
この密度の濃さはよくやった!の一言です。わたしは、やりました(おい)。
引き続き「サンダーボルト」も採り上げるようなので、続きを心待ちにしているところです。
てかこのblog、創設後初のエントリーがゼータ2000ネタというのはどういうことだ!(笑)





申し訳程度にリリアさん画像を貼ってお茶を濁す(おい)。

「メインイベント」




またプログラムを打ち込んだのでご紹介。
今回ご紹介するのはログイン1985年11月号掲載「メインイベント」です。
内容はご覧のとおりのプロレスゲーム。
現在格闘ゲームといえば「ストリートファイターII」に代表される
無差別格闘・ストリートファイトものが主流となっていますが、
80年代中盤まで、格闘ゲームといったら多くはプロレスゲームでした。
それはおそらく当時はプロレスがもっともなじみのある格闘技で、
さらにゴールデンタイムのテレビ放送等で一般人の人気も高かったからだと思います。





さておき本作は非常にオーソドックスなプロレスアクションゲーム。
プレイヤーは主人公のレスラーことローブインを操り、
AWGPのリング上で、並み居るレスラーと勝負を繰り広げます。
敵レスラーは「叉焼力」「ミルク・ホーガン」「アンドレ・ジャイアンツ」等、
80年代当時の人気レスラーのパロディ。
登場時にはどこかで聞いたような入場テーマまで流れます(笑)
プロレスの魅力である多彩な技の数々はもちろん、
ロープアクションも可能なら、場外乱闘ももれなくフィーチャー。
これがMSX1用で、オールBASIC、RAM16KBで動くのも驚きです。
限られた容量にプロレスアクションのおいしいところを詰め込んだ意欲作です。





しかしこのゲーム...いまいちおもしろくありません。
理由は何と言っても「勝てない」こと。

プロレスゲームの醍醐味は、なんといってもレスラーを思うままに操り、
派手な技を決めまくってカッコよく勝つこととだと思うんですが、
このゲームの場合、かかる技は相手との間合いとかけるタイミングで決まります。
格闘ゲームによくある繁雑なコマンド入力が必要ないのは長所でもあるのですが、
オールBASIC由来の操作性の悪さと*1、下手に凝ったグラフィックゆえ、
この間合いとタイミングが非常に判りづらい上取りづらく、
思ったように技が決まりません*2
さらに相手に一度技を決められるとなかなか逃げられず、
ズルズルと連続で技を決められ続け、いつの間にやらフォール負け。
確かに85年制作のMSX1用打ち込みプロレスゲームとしてはかなりの力作なのですが、
こうした問題ゆえ痛快と呼ぶには物足りず、今遊ぶには堪えないと思います*3






ここで比較としてもう一本、16KBで動くMSX用プロレスゲームを紹介いたします。
こちらはMSX・FAN89年6月号に掲載された「COUNT3」。
アクション性こそ「メインイベント」より低いのですが、
そのかわり「技を魅せること」に大いにこだわって作られています。
リング上のレスラーのグラフィックは「メインイベント」に及びません。
ただし判定が非常に判りやすく、格段に技が掛けやすいのです。
相手レスラーと巧く組み合えば、使える技が画面上に文字で出てくるので、
一定時間内に選んで決定すれば即発動。
そしてここが本作の売りなのですが、技が決まると(または決められると)
レスラーが大写しになり、技をスプライトの華麗な
アニメーションで魅せつけてくれるのです。


「メインイベント」はプロレスアクションの王道というべき作品ですが、
それはMSX-BASICにはいささか荷が重いものでした。
逆に技を魅せることに絞り込み痛快さと迫力を再現してみせた
「COUNT3」の方法論には、かの名作「メタルギア」に通じる発想の巧さを感じます。


とはいえなんだかんだで勝てないのが悔しくてズルズルとやり続けた結果、
最強の敵「アントニオ田舎」を倒してしまうくらい遊び込んでしまったので、
「メインイベント」も、それだけの魅力がある作品であることは間違いないでしょう。





ところでこの「メインイベント」、クリアすると何かのおまけがあるようなのですが、
エンディングで「Undefined line number」エラーが出て止まってしまいます。
リストを確認するとどうやら誌面に誤植があるようで、
エンディング処理で存在しない行番号に飛ぶようになっていました。
後の号にフォロー情報が載っていると思うのですが、
ぜひご教示をお願いいたします。

*1:リストの大半は座標比較用のIF文と、PUTSPRITE命令で占められています。さらに悪いことにはREM文一切なし。

*2:もっとも、この「見切り」に慣れることが本作の駆け引きとなっているのだが。

*3:その後戦い方が判って、ぼちぼち勝てるようになってくると面白くなってくるんですが、そこに至るまでにはそれなりの遊びこみと慣れが必要です。

続・MSXdev'13出品作から




おとといに引き続き、MSXdev'13出品作のご紹介です。
本大会のルールは、MSX1以降用で容量16KB以内。
MSXでプログラムを組んだことのある方ならおわかりでしょうが、
あれもこれもと欲張るとすぐ容量が足りなくなります。
その中でどれだけ完成度の高いゲームを作るかは、
詰め込むプログラムの技術力はもちろん、
取捨選択のセンスも問われます。






The Pets Modeさんの「Stan,the Dreamer」は相当な意欲作。
なんとMSXでは珍しいリアルタイムアドベンチャーゲーム
内容は主人公スタンを操り、金銀財宝を探しに行くというものです。
MSX用リアルタイムAVGといえば、ログインの「ミッドナイトチェイス」を
思い出すところですが、そちらが32KBで動いているのに対し、
本作はなんと16KB。しかもマウス対応です。
16KBなのでゲームは瞬く間に終わりますが、絵本をめくるようなプレイ感覚が魅力です。
作者さんが「子供と一緒に遊ぶための小品です。暴力描写や難しい謎はありません。
自ら考えさせる一助になれば」といったことを仰っているのにはなるほどです。






最後のエントリー「Slender」はPentacourさん制作の迷路ゲーム。
寂れたキャンプ場に散らばる謎の手記を5枚集めることが目的です。
一番の特徴は可変式スポット処理です。
プレイヤーには懐中電灯が照らす範囲のみが見えており、
僅かな視界を手がかりに、マップを手探りしていくという趣向です。
以前拙blogで紹介したログインの「DARK ROAD」みたいなかんじですが、
操作性が良い分、こちらの方が遊びやすいでしょう。
「DARK ROAD」では「水の残量」がゲームを面白くしていましたが、
本作には「電池残量」があります。
プレイヤーは状況に応じて懐中電灯の照らす範囲を切り替えられるのですが、
広範囲に照らすほど電池を早く消耗します。クリアを目指すならマップを作るのが近道でしょう。


結果はKAROSHIホームページ掲示板の専用スレッドにて、各ユーザーの投票により決められます。
投票はもう始まっていて締切りは6月30日。投票にはKAROSHIへの登録が必要です。
気に入った作品がありましたら投票されてみてはいかがでしょう。


「Stan,the Dreamer」
http://www.thepetsmode.com/prods/TPM_StantheDreamer.zip


「Slender:The Camping」
http://pentacour.com/files/slender.zip


KAROSHI MSX community
http://www.karoshicorp.com/

MSXdev'13出品作から




MSX界的には本日はMSX生誕30周年記念日ということで、
スペインで開催されている「MSXdev'13」のネタをいろいろ。


http://msxdev.msxblue.com/


MSXdevというのは、ヨーロッパを中心として開かれている
MSX用インディーズゲーム制作コンテストです。devとはdevelopmentの略ですな。
インディーズといえど出品者のほとんどはセミプロ級の実力派揃い、
市販ソフト顔負けの良質なMSXゲームが数多く出品されています。
出品作のいくつかは上記リンクからDLできますのでどうぞご参考に。
2003年より毎年開催されていましたが、惜しまれながら2011年大会をもって終了。
現在はスペイン最大のMSXコミュニティサイト「KAROSHI」さんがその名を継いだ
ソフトウェアコンテストを開催しています。
その出品締切りが昨日(6月15日)で、今年も力作が集まったという次第です。
今年は全6作のエントリーがあったようですが、
とりあえずその中で遊んだ4本を軽くご紹介。






まずはDimension Zさん制作の「Gommy Medieval Defender」。
城壁をよじ登ってくる敵に、上から岩を落として撃退するという固定画面アクション。
いつかベーマガで見た感じの懐かしさがありながら、内容はぐっと洗練されています。
ボス戦モードや面パターン等々、飽きさせない工夫が見られるのも好感度大。
作者の一人nenefranzさん曰く「日本のMSXユーザーにもぜひ遊んで欲しい!」とのことで、
なんとニコ動にもプレイ動画をアップしてます。遊んだら感想等書きこんでください(笑)







次にRELEVO videogamesさんの「マライカ」。
RELEVOさんはスペインのホン・コルタサールさん率いる
ヨーロッパMSX界では著名なゲーム制作チーム。
日本ならば「La-Mulana」のNIGOROさん的存在でしょうか。
ハードの新旧を問わず、レトロゲームテイストのある作品を精力的に発表されています。
さておき本作は「バブルボブル」を強く意識しただろうアクションゲーム。
主人公の女の子マライカを操り髪飾りの骨を投げつけ、怪物たちをやっつけましょう。
内容の安定感はさすがRELEVOさん。作りに隙がないかんじです。
ついでにパケ絵イメージがやけに萌え萌えなので転載しときます(おい)。






三本目はPaxangaさんの「しょうがない」。
平面「テンペスト」とでも言えばいいのか、ヘンな題名にふさわしい奇妙なアクションゲーム。
外周のレール上を動くポンコツ宇宙船「アサダチ号」を操り、
画面内のダイヤモンドを拾いましょう。
ゲームの肝はアサダチ号のマニピュレーターアームこと「しっぽ」。
しっぽはダイヤモンドを拾うばかりか自機の移動にも使いまして、この操作が面白い!
ところで「しょうがない」とはもちろん日本語の「しょうがない」。
意味不明ですが、日本人が横文字タイトルをカッコよがるように、
海外のMSX開発者には、ゲームに日本語を使うのがカッコイイと考えている節があります*1
ゲームの舞台は「フニャチン太陽系(the Funya Chin system)」というのですが、
アサダチ号といい、どこかイカれてるとしか思えません(絶賛してます。念のため)。






四本目はImanokさんの「SHMUP!」。題名どおりのシューテムアップ、縦シューです。
PaxangaさんもImanokさんも実力派の開発チームで、
ヨーロッパのMSXゲームコンテストでは常連となっている存在です。
まず動いて撃って気持ちいいというのはSTGでは重要で、その点本作はいい感触です。
変わっているのは自機は二機一組で、どちらかがやられても一機失うところ。
遊んだかんじは一人ツインビーか、一人レイドックといった印象を受けます。
絶えず当たり判定を気にしながら、状況に応じてフォーメーションを
組み替えるのはもちろん、さらにそこに一ひねりしてあって、
両機にドッキングエネルギーを集めることで、なんと合体までできます。
合体すると火力が上がるばかりか当たり判定も小さくなるため、
一気に反撃するカタルシスがあるのがいいところ。
テンポもよければおやくそくのボスももれなく出現します。


驚きなのはこれら出品作が全て、MSX1の16K ROMに収まっているということ。
作品はいずれもROMイメージとして配布されていますが、
Flash ROMカートリッジ等に焼けば実機でも動作するはずです。
こんな作品がいまだに作られ続けているところが、
30周年を迎えたMSXというハードの魅力でもあります。
他にも出品作は二つあるのですが、こちらはまた次回にご紹介ということで。
今回紹介した作品は以下のリンクよりDLできます。


「Gommy Medieval Defender」
http://www.dimensionzgames.com/wp-content/plugins/download-monitor/download.php?id=26


「MALAIKA」
http://www.relevovideogames.com/wp-content/uploads/2013/06/RLV914_MALAIKA_R1.zip


「しょうがない」
http://paxangasoft.retroinvaders.com/files/shouganai.zip


「SHMUP!」
http://imanok.msxblue.com/files/shmup!.zip


KAROSHI MSX community
http://www.karoshicorp.com/

*1:そもそもしてMSXdev'13主催のKAROSHIさんの名前も「過労死」に由来してるから。

「オストリッチII」




またプログラムを打ち終わったのでご紹介。
今回紹介するのは月刊マイコン86年4月号掲載「オストリッチII」です。
「オストリッチ」は「センチメンタルグラフィティ」等の作品で有名な
ゲーム制作者多部田俊雄さん初期の代表作です。
PCエンジン移植版「スプラッシュレイク」でご存知の方も多いことでしょう。
本作「オストリッチII」は、その「オストリッチ」の続編。
多部田さんは80年代からセミプロとして活躍しており、
パソコン雑誌でたびたび自作ゲームを発表していました。
特に月刊マイコンでは雑誌の広告にも登場するなど、名物ライターとして知られています。





本作は古き良きタイプの固定画面アクションゲーム。
オストリッチことダチョウを操り、水上に架かる足場を動きまわり、
宿敵エグモンをやっつけていきます。
武器は自慢のクチバシ。しかしこれで直接エグモンをつつくことはできません。
そのかわり足場にヒビを入れ、橋を落とすことができます。
落としたところにエグモンがいれば、足場もろとも水中へドボンという寸法です。
ただし自分がいるところを落としてしまうと、逆に自分がドボンです。
一度に多くのエグモンをやっつければもちろん高得点。
広範囲を落とすほど、多くのエグモンを巻き添えにできますが、
逆に自分の移動範囲も狭くなってしまうという諸刃の剣。
一方エグモンは落とされた橋を直しながら移動するので、
壊しすぎて足場が狭くなったときなど助けられることもあります。
プレイヤーにはエグモンの動きを見きったり、巧くおびき寄せることはもちろん、
どこを壊すかを見極める判断力も求められます。
この「ディグダグ」の岩石落としに通じる一網打尽の爽快感と、
強力な攻撃を仕掛けるほど自分が不利になるというリスクのバランス感覚が見事。
その敵が足場を直せるというルールも心憎いです。
メインリストはBASICですが、主要な処理はマシン語化されているので、
操作性に関してはさほどストレスがありません。





ゲームシステムは前作と大きく変わらないようですが、
新しく追加されたステージコンストラクション機能が「II」のゆえんとなっています。
つまり自分で好きな面を作って遊べるのが「II」一番の売り。
そのためかデフォルトのステージデータは4面までしか存在せず、
残りは自分で作って遊んでねという投げっぱなしな仕様です(笑)。





オールドMSXユーザーには「オストリッチ」は市販のパッケージソフトとして知られています。
前作「オストリッチ」は1984年にテープ版が日本コロムビアより発売されているのですが、
そのリストも実は月刊マイコンに掲載されていました。
80年代中盤までは、こんな具合に市販ソフトのソースコード
雑誌で発表されることもけっこうありまして、お金はないが時間はあるというユーザーは、
自分でリストを打ち込んで市販品と同じものを手にすることができました。
プロの作ったものとハイアマの作ったものに大きな差が無かった当時だからこそ、
現在のように膨大なデータを擁するゲームが作れなかった当時だからこそ、
このようなことができたのかもしれませんが、それ以上に何より、
プロとアマチュアの垣根が今以上に低かったからこそできたことのように思います。
当時のアマチュアがどうやってプロになったかの一例をここに垣間見ることができます。

「ライーザ」解いた




ずいぶん前に買ってそのままになっていた「地球戦士ライーザ」に手を付けました。
本作は1985年にエニックスより発売されたSFRPG。
新たなる母星として地球を狙う侵略者ガルム帝国と、
地球最後の希望となってしまった超能力ロボット部隊ライーザ隊との、
互いの存亡を賭けた絶望的な戦いという内容で、発売当時はなかなかの人気作となったものです。
以前拙blogで紹介した「グインウルフ」や「サーナス」も、
このゲームの影響をかなり受けていることがわかりました(笑)。






さておき、ゲーム展開は、成長要素のある「お遣い」RPGとでも言うべきもの。
難易度高めな上UIが現在ほど親切でないので、今遊ぶとさすがに厳しいものがあります。
しかし「ライーザ」の売りはなんと言ってもカッコイイSFメカをはじめとするグラフィック。
グラフィック性能で劣るMSXでも、そこは頑張ってまして、
グラフィッカー入魂のグラフィックが堪能できます*1
このグラフィックのカッコよさと、進め方さえわかればわりとサクサク解けるゆえ、
不思議とまた遊んでもいいなと思わせる魅力があります。





本作の魅力を語るなら、ストーリーも忘れてはいけません。
超能力とカッコイイロボット、禍々しい敵メカ、ヒロインの美少女。
愛と友情、そして全編を貫く悲壮感と哀しい結末。
「ライーザ」には当時のロボットアニメのお約束が詰め込まれています。
思うに制作者はSFRPGというよりも、
ロボットSFアニメのようなゲームが作りたかったのでしょう。


もっとも、当時の技術では凝ったストーリーテリングができるでもなく、
そのかわり「反則的な」どんでん返しで物語を印象づけているのかなという気がします。
ゲームにいかに物語を載せるか、ゲームでいかにストーリーを語るかは、
今でも多くの制作者が頭を悩ます課題です。
「ライーザ」とはその難題に挑んだ作品だったのかもしれません。

*1:オリジナルのデザイナーは眞島真太郎さん。