何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「サテライト3.3」




 80年代後半には、古典的ゲームを今様に作り直すムーブメントみたいなものがあったようにおもいます。たとえば「アルカノイド」や「レイメイズ」とか「バトランティス」とか。どの作品も新しいルールやパワーアップ、ストーリーや演出などが加えられ、より進化した内容を追求していましたが、今回ご紹介するMファン90年9月号掲載作品「サテライト3.3」は、そうしたリノベーションを趣旨とする作品です。


 古典的アクションゲームのジャンルとして「ヘビゲー」というものがあります。ヘビ状の自機を操作し、餌を食べまくるというアレですな。本作は今風に作り直したヘビゲーです。
 ルールは基本ヘビゲーです。ヘビ状の自機を操作して、フィールド内のエサを食べましょう。自機は自動で前進し、左右ターンのみが可能です。頭部が障害物や敵の他、自分の体にぶつかるとアウトです。一つエサを食べると体の長さが一つ伸びます。動くときは敵の動きやカベはもちろん、自機の軌跡にも気をつけなければなりません。各面決められた数のエサを食べると右下に出口が開きます。そちらに入ればステージクリア。面が進むごとに食べるべきエサの数は増え、どんどん難しくなっていきます。全8面。オールクリアを目指しましょう。

高次面の展開。
レーザーやトラップアイテムも加わりしっちゃかめっちゃか。

 本作が「今風」なのは、なんと言っても様々な攻撃を仕掛けてくる敵キャラの存在です。敵は単純に動いているばかりではなく、面が進むごとに新たなものが増え、様々な攻撃を仕掛けてきます。レーザーを撃ったりトラップを落としたりと、敵や攻撃はいずれも趣向を凝らしたものばかり。各面それまでの敵や攻撃パターンに追加するように増えていくのがよい変化で、先の面が見たくなる楽しさがあります。

最終面。ラスボス・ハンドラとの一騎打ち。
逃げるしかできないけどなw

 ゲーム自体はなかなかよい出来ながら、難易度は非常に高いです。攻撃の激しさはもちろん、残機というものがありません。やられたら即ゲームオーバー、容赦なく1面の最初からやり直しです。先が見たくなるゲームですので、せめて面ごとのコンティニュー機能くらいは付けて欲しかったとおもいます。荒井はエミュレーターのステートセーブ機能を使ってクリアしてやりました(泣)。
 メインプログラムはほぼマシン語です*1。極めて快速に動作する一方、作りが最小限のため、雰囲気が素っ気なくなった感は否めません。テンポがいいと言えばいいのですが、もう少しくらい外観や細部に凝っても良かったのでないかという気もします。

エンディング。いちおうメッセージが表示されます。

 本作は以前紹介した撃ち合い対戦ゲーム「サテライトI」の作者さんの作です。グラフィックやレーザーなど、内容に相通じるものがあります。題名から察するに、続編的な位置づけとおもわれます。

*1:似た文字が並ぶためエラー箇所が特定しづらく、デバグに手こずりました(泣)

登竜門だったから

gigazine.net

その後業界で活躍するゲーム制作者のアマチュア時代の作品いろいろ

 投稿プログラムの打ち込み趣味を続けていると、その後業界で活躍することになる開発者が制作したプログラムはわりと見かけるので、行方不明になっていたとかニュースになるような事件という認識がなかったりしまして(おい)

「賭け」

静止画では伝わらないスムーズなコップ移動アニメーション(おい)

 本日もMSXプログラムネタ。Mファン90年9月号より「賭け」です。


 伏せた三つのコップがあります。そのひとつにコインが入ります。その後適宜シャッフルされますので、どのコップにコインが入っているかを当てましょう。「賭け」ですので、最初に掛け金を決めます。当たれば掛け金は2倍になって戻ってきます。外れれば当然没収、おけらになったらゲームオーバーです。

見事的中! てきとうそうですが肝心な部分はしっかり作られてます

 ゲーム自体はよくあるものですが、本作が優れているのは2点、高速かつスムーズなシャッフル処理と、憂愁に満ちたBGMです。特にメロディとも効果音とも付かないBGMはSOUND文に数値を与えることで演奏しており、独特のもの悲しさをかもしだしています。あたかもいずれ破産する結末を予期しているようで、妙にゲームの雰囲気にマッチ。演出で完成度が上がったと言っても過言でありませんな。

Overflowで強制終了。エミュのステートセーブ機能で見てやったぜ(泣)

 ちなみに本作にはゲームクリアというもがありません。そのかわり全ての変数が整数型であるため、手持ち金が一定数値を超えるとOverflowエラーで止まります(おい)。
 シャッフル処理はてきとうなものではなく、きちんと順番を入れ替えています。エミュレーターの速度調節機能で遅くしてみると、イカサマなしで、ちゃんとコップが入れ替わるアニメーションのとおりにコインが移動しています。これこそが本作の最も優れた部分で、動体視力がよければOverflowで打ち止めを狙うことも可能です(無理)。もっとも、その前にスッカラカンになるか、途中で飽きてBreakするかで終了することが大半ですけど(おい)。

スカンピンの結末。

一行プログラム五題

「どこまでつづいていくのかな」

 1990年当時、MSX・FAN誌は1行プログラムに力を入れており、何度か特集が組まれました。9月号の特集では、5本の作品が掲載されています。というわけで今回はその五本を一挙ご紹介。


 1本目「どこまでつづいていくのかな」。スクリーンショットにはスコアしか表示されていませんが、それもそのはず、本作は音を聴くゲームです。実行すると効果音が鳴り始めます。音は次第に高くなっていきます。限界ギリギリの所を狙ってスペースキーを押しましょう。粘った分が得点となります。限界突破するとゲームオーバーです。編集部曰く「音のチキンレース」。単純明快かつ駆け引きがある良品です。ところで鳴ってる音がシェパードトーン*1だったらイヤですな(おい)。

「200年カレンダー」

 2本目「200年カレンダー」は実用プログラム。カレンダーを表示するプログラムで、暦を見たい年と月を入力すると、その月のカレンダーが表示されます。この手のプログラムは”万年カレンダー”とも呼ばれますが、プログラムの都合上、正確に表示できるのは1900年3月からから2100年2月までの200年間。だから「万年」ではなく「200年」。あと78年したら使えなくなります(おい)。
 プログラム自体はなかなか実用的です。まだ2022年だもんな。

「DOWN DRAGON」

 3本目「DOWN DRAGON」はいわゆるスキーゲームのバリエーション。ひたすら障害物を避けるタイプのスクロールゲームです。緑色の”*”を操り、迫り来る赤い炎"WWW”*2をひたすら避けましょう。当たればゲームオーバー。それまで移動した距離がスコアです。
 この手のゲームはそれこそ数多く作られ、1行プログラムにも名作「DOWN DOWN」シリーズが存在します。他との違いを明確に打ち出せなければ採り上げてさえもらえないジャンルにおいて、本作はキャラクターごとに色設定をしているところが優れています。
 1行プログラムは255文字で完結しなければなりません。ルールの実装が最優先であるため、演出の優先順位はどうしても下に置かれてしまいます。そんな状況できっちり色設定処理を盛り込んだのがお見事! 単色で成立するゲームであっても、色が付くとやはり見栄えや楽しさが違います。

「Guln Guln」

 4本目「Guln Guln」は本特集の大本命。変型ヨッパライゲームとでも呼ぶべきアクションゲームです。ヨッパライ式に移動する自機を操り、画面内を7周しましょう。渦状に進むから「ぐるんぐるん」というわけですな。
 ただのヨッパライゲームと侮るなかれ。本作では外周に向かって重力が働いており、スペースキーを押すと画面中心に向かって上昇し、離すと外に向かって下降します。外周や自機の軌跡にぶつかるとアウト。スペースコロニーでヨッパライをしたらこういうかんじになるのだろうかというのはさておき、よくあるヨッパライとは異なる感覚が新鮮です。
 周回が進むほど進める場所は狭くなります。先を見越したライン取りと、微妙な操作ができなければ、7周達成は叶いません。一周するごとに軌跡の色が変わり、何周目かが一目でわかるのは、地味に優れた工夫です。1行プログラムでこれだけやればたいしたものですが、操作性の悪さが惜しいところです。

「Down Down Down」

 5本目「Down Down Down」。こちらもヨッパライゲームです。上下の壁にぶつからないよう、洞窟を突き進んでいくのは他と同様。しかし洞窟の構造が他とはひと味違います。洞窟は右下から左上へと流れていき、題名のとおり、ひたすら右下右下へと下っていきます。自機の速度や慣性の付き方も絶妙な難しさで、不思議な降下感覚が味わえます。
 ゲームオーバーになるとスコアを表示してプログラムが終了します。再開するには再び実行しなければならないのは少し面倒。欲を言えば、リトライ機能はぜひ欲しかったです。


 編集部のコメントによれば、この特集を組むに際して、どれを載せるか迷うほど良質な作品が集まったのだそうです。事実、特集ごとに作品のレベルが上がっている印象を受けます。
 一行に全てを詰め込み完結させる1行プログラムは、究極のプログラムでないかという感があります(おい)

*1:音の錯覚。無限に上がり続けたり下がり続けたりするように聞こえます。

*2:World Wide Webとか草ではありません

一画面プログラム四題ふたたび

「高速回転寿司」

 入力と動作確認が終わったプログラムが溜まってます。というわけで本日はMSX・FAN90年9月号から一画面プログラムを4本ご紹介します。


 1本目「高速回転寿司」は早押しアクションゲーム。始めると画面上にお寿司が流れてきます。食べたいネタが画面上に表示されてますので、それと同じだったら流れている間に手を伸ばして食べましょう。所望のネタを食べると空腹度が下がります。違っていたら上がります。空腹度が0になれば満腹になってゲームクリア、100になったらなぜか餓死してゲームオーバーです(おい)*1。寿司の流れるスピードは次第に速くなります。時々流れてくるお茶はお助けアイテムで、飲むと元のスピードに戻ります。

お茶が流れてきた。「上がり」だけど飲んでもクリアにはなりません

 ゲームはわりと乱数に左右されます。食べたいネタがさっぱり流れてこないとおもえば、立て続けに同じネタが流れてきたりと、なかなかやきもきさせられます。しかしそれでもクリアは十分可能なので、バランスは悪くありません。判断が必要な早押しゲームとしてはなかなか悪くないでしょう。「食べ過ぎても餓死するのかよ!」「キュウリも握り鮨なのか!」「そもそも今の回転寿司はタッチパネルで好きなネタを注文する方式だろ!*2」等々、突っ込みたいところはいろいろありますけど(おい)。
 ところで。シブがき隊の代表作としていまだ真っ先に「スシ食いねェ!」を挙げるのはどうかとおもうぞ。

VULCAN

 2本目「VULCAN」。燃えさかる洞窟の上下の壁にぶつからないよう、自機を操り飛び続けましょう。スペースキーを押せば上昇、離せば降下。つまるところのよくある横スクロールヨッパライゲームです。内容は以上(おい)。
 グラデーションの効いたグラフィックが美しく、それでかなり得しています。「たんなる酔っぱらいだって美しければ許される」の煽りどおり、ゲームのグラフィックは大事という好例と言えましょう。スクリーン5を使っているため、MSX2以降用です。

地獄道

 3本目「地獄道」は、一風変わったドライブゲームです。車で隘路を走り抜けましょう。前からは岩が転がってきます。左右の退避スペースに逃げ込んで避けましょう。しかし道路は絶えずスクロールし続けます。地形に引っかかったりスクロールについて行けなかったりで画面外にはじき出されるとゲームオーバー。無論岩にぶつかってもアウトです。岩を1個やり過ごすごとに1点獲得。できるだけ長く生き残り、ハイスコアを目指しましょう。
 ゲームはどこかへっぽこな雰囲気が漂いますが*3、すこぶるテンポがよいです。とにかくコロコロとやられるので、そのたびクキィー!!と悔しくなりつつも、もう一回とプレイを重ねてしまうタイプのゲームです。まさに地獄道、編集部では複数人数でのハイスコア勝負を勧めています。

「PYON PYON」

 4本目「PYON PYON」。点在する狭い足場を跳び移りつつ、上へ上へと昇っていくジャンプアクションゲームです。ゲームとしては可もなく不可もなく、いかにも一画面プログラムなかんじ(おい)。
 本作はMSX2以降用となってますが、効果音用に2以降でサポートしているSET BEEP命令を使っているだけです。ここを潰してしまえばMSX1でも遊べます。変更するたびいちいちデフォの音に戻すのが面倒なので、SET BEEP命令を使ったプログラムは個人的に嫌いです(おい)

*1:寿司を1個見送っても空腹度が1上がります。ですので食べなければいずれ空腹度が100になります。

*2:1990年当時にタッチパネルオーダーシステムはありません

*3:BGMがわりに鳴り続ける効果音がやけに耳に残ります

「NUMO」

タイトルロゴが飛び出すオープニングデモ

 例によって打ち込んだMSXプログラムネタ。本日はMファン90年8月号より「NUMO」のご紹介です。
 NUMOとは作者さんによる造語で「New Undefined Monstrous Object」の略、新奇怪物体という意味のようです。とにかく本作はその謎の宇宙生物NUMOと戦う3D風シューティングゲーム。NUMOはそのままだと長ったらしいので「ぬも」と呼ばれています(おい)。

こいつがNUMOです

 自機を操りNUMOを捕捉し、照準を合わせてビームで撃破しましょう。画面上には自機からの視界が表示されています。NUMOは宇宙空間を漂う緑色の球体です。画面下の矢印はNUMOの居所を示すレーダーです。矢印の方向に移動すれば、じきに視界に入ってきますが、なかなかすばしっこいです。外すと大幅な時間のロスとなるので、落ち着いて確実に狙いを付けましょう。

ビーム発射! 実は溜め撃ち可。

 NUMOには耐久力が設定されています。こちらの攻撃が命中すると下がり、0になると撃破です。一方NUMOとの間合いは効果音の高さで示されます。高くなるほど接近していることになり、限度を超えると衝突してしまいます。衝突するとこちらの耐久力が減ってしまい、0になるとゲームオーバーです。

見事命中! 多くのNUMOを仕留めて高得点を目指そう

 本作ではZ軸方向に任意に間合いを詰めたり離したりすることができません。実質、効果音の高さは残り時間を示しています。3Dではなく飽くまで「3D風」であるゆえんです。しかし効果音と共に高まる緊張感や、手負いになると逃げ出すNUMOの挙動など、それらしい雰囲気は十分出ています。いたずらに敵の種類を増やさず、NUMOのみと対峙するゲームにした潔さが、本作の遊びやすさに一役買っています。

ゲームオーバー。高得点を目指そう