鶴岡のさる居酒屋さんで開かれた「オマエのオデュンはうまくナイ選手権」に行ってきました。
「オデュン」とはおでんのことなんですが、大根とかたまごとかさつま揚げとか、そういった定番のタネはありません。料理人さんがうまいかマズいかキワキワのところを狙ったオリジナルおでんダネを披露して、うまいマズいを審査しようという催しです。いちばんマズいおでんを作った人には、「オデュン像」こと特製トロフィーが授与され、店の一番目立つ所に一年間飾り続けなければならないという屈辱なのか栄誉が与えられます(おい)。
参加した料理人は9名。どなたも腕利きの面々が揃いました。その中にちょくちょく食べに行っているごはん屋さんとラーメン屋さんがいらしゃったもので、興味を持って食べに行った次第です*1。
タネは串に刺さって丼に入れられて出てきました。色も形もとりどりで、一見ちょっと変わった「おでん」です。しかし口に運んでみると、いずれも「見た目と食感が違う!」「予想してた味じゃない…」「これおでんに入れていいのか?」等々、期待をあらゆる意味で斜め上に裏切るシロモノばかり(おい)。うまいものに対する閾値が低くて大抵のものはおいしく食べられると自認する荒井でさえ、「これは微妙だ…」とモニョるほどです。「おでん」と呼ぶには、一般に知られるおでんとはあまりにかけ離れており、なるほどこれは「オデュン」としか名状できないな、と妙に腑に落ちたのでありました。
料理屋さんに行けばおいしいものが出てくるのが当たり前の現在、お金を払ってまでうまいかマズいかわからないものを食べに行くという体験はなかなかできるもんじゃありません(おい)。居合わせた参加客どうし「これはかくかくしかじかだからマズいんだ」「これはこうだからまだイケる」等、うまいマズいの理由をわいのわいの言い合いながら食べる会は、新鮮で刺激的です。
たまたま隣になったお客さんは「この串はマズいけれど、おでんに合わない食材であからさまにマズさを狙っているのが安直すぎるので、『マズい』に入れたくない」と仰っていました。それを聞いて、この催しは、「おでんとはこういうものだ」というおでん観を問われているのではないか、旨い不味いの先入観というか価値判断というものを揺さぶられているのでないか?という気にさえなりました。いや、そんなたいそうなもんじゃないか(おい)。
新しいおでんダネを探そうとか、おでんに合わないタネを探そうという企画は、そのむかし「タモリ倶楽部」で見たような気がします。あれをプロの料理人が全力でやるとこんなかんじになるのかもしれません。おいしいものを食べようという食べ物イベントとはひと味もふた味も違うこの催し、実は今回が2回目で、なんと開催告知後程なく全席完売、満員御礼という大盛況。めちゃくちゃおもしろかったことは期待以上で、非常に楽しく食べてきたのでありました*2
荒井が何かを食べるときに求めるものは、おいしさ以上に楽しさです。