何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「フランス料理の作り方」

ビーフシチューはフランス料理なのか。そのうちトトマビさんに訊いてみよう。

 ちょっと珍しいゲームプログラムの入力が完了しました。というわけで本日は「フランス料理の作り方」のご紹介です。
 本作はアスキーMSX叢書・ポケットバンクシリーズ『アドベンチャーゲームブック』に掲載された作品です。その内容はお料理アドベンチャー。料理を作るAVGです。
 目的はおいしいビーフシチューを作ること。制限時間は30時間。クラスメイト・フランソワーズに乗せられて、パーティ用の料理を作ることになった主人公イベール。意中の女子・ジョルジュも出席するというので発奮するのだが…というストーリーが書籍に載っています。

まな板で野菜をカット。一見して料理のゲームだとはおもえない(おい)

 ところが起動すると現れる画面が、およそAVGらしくありません。無機的なアイコンやウィンドウがずらりと並び、ゲームというよりOSのコンソール画面のようです。
 操作も同様、極めてシステマティック。カーソルを動かしアイコンをクリックしながらゲームを進めていきます。
 例えば肉をボウルに入れたい時は、まずカーソルを肉の所に持っていってスペースキーを押します。するとカーソルが肉に変わるので、今度はそれをボウルの所に持っていってまたスペースを押します。するとボウルのアイコンの脇に肉を表す略称が表示され、中に肉が移ったことになります。煮炊きしたい時は材料を鍋に入れ、「FIRE」のコマンドをクリックしてから鍋をクリック。こんなあんばいです。

フライパンで小麦粉と野菜を炒め合わせる。
点火したらMOVEで鍋を煽るのがコツだ。

 見た目こそやたら無機的ながら、このUIが非常に良くできています。操作は実に合理的かつ機能的。あたかもきちんと整頓されたシステムキッチンで作業をするかのごとくです。食材のアイコングラフィックもよく描きこまれてあり、遊ぶのに物足りなさを感じさせません。下手に台所を模したグラフィックや画面構成だったら雰囲気は出ていたかもしれませんが、きっと凡庸な印象になっていたことでしょう。

結果発表。フランソワーズも満足の出来。どんなもんだい!

 料理が完成するとエンディング。フランソワーズが現れ、できばえを評価してくれます。攻略法は、とにかくレシピに忠実に! プログラム解説にはレシピも載っています。これをきっちり守って作れば、そうひどい減点はありません*1。料理の状態は、フラグと文字型変数で管理しています。手順通りの食材とコマンドを選ぶことで加点され、完成時の得点に応じて最終的な評価を決めるという作りになっているようです。

リスト冒頭に輝く「GAME ARTS」の署名。
残念ながら本作はガビガビ音声でしゃべったりはしない(おい)

 ちなみに制作はかのゲームアーツ。本作について「このゲームはアドベンチャー・ゲームと言って良いかどうか、実のところよくわからない。ただ、未知の物事やからくりを試行錯誤して解いていくという意味では、アドベンチャー・ゲームと言えるのではないだろうか。」*2と解説文で述べています。
 本作が掲載された『アドベンチャーゲームブック』には、さまざまな形態のAVGを紹介するという側面がありました。同書には全部で4本の作品が収録されています。その中でも本作は題材・システムともに特殊さが際立ちます。それはこういう形のAVGもありうるんだぞ、というゲームアーツの提案だったようにおもわれます。

*1:漬けこんだ材料をちゃんとザルで漉すのが高得点の秘訣です

*2:紙面で「ただ」が「だた」と誤植されていることに今さらながら気がついた(おい)