何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「ふにら」

f:id:fukenko:20210226095849p:plain
味のある題字とキャラだぜ

 今となっては昔のことでありますが、「デカキャラ」は憧れでした。「ゼビウス」「ザナドゥ」「THE功夫」(おい)等々。マイキャラの何倍もあるキャラクターが動くだけでも*1、80年代のマイコン少年は大喜びしたものです。それこそ画面内を所狭しと暴れ回っているように見えたものですが、今となってはそれほど大きくもないんですけど(おい)。
 てなわけで今回ご紹介する「ふにら」(Mファン89年11月号掲載)は、そんなデカキャラへの憧れをおもいださせる作品です。

f:id:fukenko:20210226095943p:plain
炎を噴くふにら。卵を産むからメスらしい。

 マイキャラ「ウルトラボーイ」を操り、大怪獣「ふにら」の卵を拾い集めるのが本作の目的です。ウルトラボーイといいながら、マイキャラは一文字「%」で表されます。それというのも「%」の文字が、某光の巨人の顔みたいだから(おい)。「%」を光の国から来た正義の味方に見立てるという表現は、徳間系のプログラムではしばしば見かけるものでありました。ちなみに卵を集める理由は「目玉焼きにして食べると旨いから。」 およそ正義の味方のやることではありません(おい)。
 もちろん、ふにらも黙ってはおりません。巨大なふにらはそれ自体が脅威です。さらに出し抜けに火炎放射で攻撃してきます。ふにらにぶつかればアウトですし、炎に焼かれてもアウトです。やられると「あんぎゃあ」という情けない悲鳴とともにゲームオーバーです。

 
 曲者なのはウルトラボーイの移動が先日の「PONPON」式であることです。左右は任意に移動できますが、上下方向は天と地の間を絶えずバウンドしているというやつです。ですので卵を拾うには、どのタイミングで地面=卵のある高さに到達するかを見越して左右に移動しなければなりません。もちろんふにらを避けたりおびき寄せたりといったことも勘案する必要があります。ここがゲームの駆け引きとなっています。


 それ以上に本作の肝となっているのは、やはりデカキャラ・ふにらの存在感でしょう。小さい敵を避けつつ「PONPON」式に卵を拾うゲームだったらただの凡作です。大きいキャラクターが動くからこそ本作はおもしろいのですが、80年代のホビーパソコンはたいてい、デカキャラを扱うのが苦手でした。

f:id:fukenko:20210226100045p:plain
動くとうれしいデカキャラ、動くと邪魔なデカキャラ(おい)。
デカキャラを動かすには技術と工夫が必要だった。

 ふにらはノーマルキャラとPCGを組み合わせて描かれています。つまり「文字」で構成されています。
 かつて、大きなキャラクターを表示させるのはなかなか大変なことでした。精細なドット絵で描画すれば、マシンパワーもメモリも消費します。そこでよく使われたのが、「アスキー文字」こと、コンピューターに内蔵されたデフォルトの文字キャラクターを組み合わせて大きなキャラクターを描くという方法でした。
 当時のコンピューターにはアルファベットやカタカナの他にも、四角や三角や罫線のパーツを描くためのグラフィック文字というものが内蔵されていました。これらを巧く組み合わせれば、アスキー文字だけでもそれなりに凝ったキャラクターをデザインできます。もちろん表示はPRINT文で済んでしまいますので、動作速度も期待できます。
 本作はもともとPC-8001がオリジナルで、それをMSXに移植したものです。原作のふにらは内蔵のグラフィック文字で描画されていたようですが、MSX内蔵のグラフィック文字は他機種のそれとはかなり違います。そこでP8のグラフィック文字風のPCGキャラをいくつか用意することで、そのグラフィックを再現しています。

f:id:fukenko:20210226101025p:plain
「ふにら」のアスキーキャラ設定。
PCG機能で一部を他機種のグラフィック文字風に書き換えて使用している。

 MSXではスプライトやPCGが扱えたため*2アスキー文字を組み合わせてキャラをデザインするという方法はあまり発達しなかったようにおもいます。一方P8やP6、MZ-700といった、デフォルトではPCGやスプライトが使えないハードでは頻繁に見かけた手法でした。その最たるものこそ、かの有名な「N-TYPE」でしょう。

参考までに「N-TYPE」。Bug太郎さんによるN-BASICの芸術品。

*1:「THE功夫」はマイキャラも同じ大きさだけどなw

*2:MSXのスプライト機能は便利でしたが、巨大キャラを表示するには貧弱さが目立つことも確かでした。