というわけで先日触れたとおり、御所山に登ってきました。御所山は奥羽山脈の一座で、尾花沢と宮城の県境にあります。標高は1500メートルほど。山形の山ではわりと高い方で、このあたり一帯に広がる船形連峰の主峰なのですが、山奥にありすぎて里からさっぱり見えないせいか*1、どこかマイナーさがただよいます(おい)。
今回荒井が行ってきたのは東根の黒伏高原奥から仙台カゴ・楠峰の中腹をかすめて山頂に向かうルート、通称「観音寺コース」です。距離にして約5.5キロ、標準コースタイムは3時間(片道)。山形側からの最短ルートにあたりますが*2、そのわりにガイドブック等で紹介されてるのをあんまり見ません。登ろうとおもったのは、ひとえにこのコースの存在を知ったればこそ。
JANGLExJUNGLE前から登山口までは柳沢林道が通じており、そこまでは車で行けるようになってます。林道は整ったフラットダート。乗用車でも特に問題なく通れるでしょう。荒井のDJEBELなら走りやすいことこの上なし。途中、柳沢小屋の前の水場で水を補給しておきます。5キロほど分け入った林道終点が登山口。ここから歩いて山頂を目指します。
8:45分頃に登山開始。登山道はほぼ全行程が森の中です。かつては豊かなブナ林が広がっていたそうですが、近代以降の乱伐で大きく数を減らしたといいます。とはいえそれでも相当に深い森が残っていることに変わりはなく、ところどころブナの美林や巨木が現れます。勾配は緩やかで道跡は明瞭、森の作る木陰と標高の高さゆえ*3あたりは涼しく、いたって歩きやすい道中。森の切れたところから見える岩っぽいピークは、名前だけ知っていた最上カゴです。
30分ほどの歩きで粟畑に到着。山頂に至る登山道と、柴倉山・白髪山方面への登山道が交差する十字路です。標柱こそあるものの、四本の道が微妙にズレながら接続しているので、一瞬どこの道に入ればよいのか迷いました(おい)。
粟畑からは緩やかな下りが続きます。ひたすらダラダラと下りつづけるので、山頂目指して登っているのか疑わしくなりました(おい)。こりゃ帰りが大変だなとおもいつつ、仙台カゴ前・楠峰下と無事通過。標柱類が充実しているので、どれだけ歩いたか、次のポイントまでどれくらいか等は把握しやすいです。
とはいえこのへんには熊が出没するようで、気は抜けません。途中見つけた標柱には何かで削り取られたような痕が付いてましたし、帰り道では来たときなかった糞まで目撃。素手で熊を狩れば伝説になるかもしれませんが、荒井は熊殺しウィリーではありません(おい)。
楠峰のあたりで少し森が切れ、目指す山頂がようやく向こうに見えてきます。これくらい近づかないと姿が見えてこないのか、と山深さをおもいしりました。
御所山は宮城側では「船形山」と呼ばれます。ひっくり返した船底のような形なのでそう呼ばれるようになったのだと伝わっていますが、こちらから見る山容もまさにそんな形で、その説にも納得がいきます。
山形側で「御所山」と呼ばれるのは、鎌倉時代に承久の乱に破れた順徳天皇が、配流地の佐渡島から脱出してこの山のふもとに隠れ住んだからという伝説があります。とはいえ宮内庁管轄の禁足地の真野御陵と違って御所山は自由に登れるので、伝説はあくまで伝説なのでしょう。
粟畑から1時間ほどダラダラと下り続けて「仙交小屋分岐点跡」に到着。25年ほど前の案内本でも「跡」と記されているので、山小屋が建っていたのはかなり昔のことなのでしょう。さらにここで定義方面からの登山道とも接続していたようなのですが、こちらも廃道となって久しいようです。このあたりは森の中の広場で近くに水場もありまして、確かに山小屋を建てるにはうってつけだったことでしょう。
本番はここからです。小屋跡を過ぎるとこれまでのダラダラ坂が一転、急な登りに変わります。その高低差は約400メートル。急登は1254mピーク周辺の平場を挟んで前半と後半とに分かれます。前半部分は比較的登りやすいですが、後半は泥や石ころが目立つロープ場などもあり、滑らないよう気をつけなければなりません。さすが船形連峰の主峰にして最高峰、平らな山ではありません。ブナ林が背の低い灌木へと変わり、前方の空が開けてくると、山頂まではもう一息です。
かくして11:31分、ついに山頂到着。山頂には一等三角点が埋め込まれ、その隣に「宮城県立自然公園船形連峰」と刻まれた木製の標柱が立っています。山小屋や神社の祠などもあり、けっこう賑やかな印象です。
眺めは抜群。西の方には黒伏山や柴倉山をはじめとする船形連峰の山々が一望できます。夏の空気のおかげで遠くまですっきり見通せるというわけにはいきませんでしたが、東根や尾花沢の町がかすかに見え、さらには蔵王や鳥海山もなんとなく見えました。そこでてきとうなところに陣取って湯を沸かし、どん兵衛で昼食。おてがるなカップ麺も、絶景を眺めながらすするのは気分がよいものです。
昼食後は山小屋を見物したり、地図を広げてあのピークがこの山で、この谷が層雲峡、あのあたりが自分が歩いてきたところ...と、目の前の風景と見比べたりして過ごします。ふもとの方では気温30度を超えていても、山頂は涼しい風が吹き付け快適そのもの。休憩しているうちにすっかり汗も引いてしまいます。早めに登ってきて日がな一日この風景を見ながらうだうだ過ごし、山小屋に泊まるというのも楽しいだろうなぁとおもったのでありました。
御所山の名は「五所山」に由来するという説もあります。このあたりも山岳修験が盛んで、行者が五つの峰を渡り歩いて修行したのだとか。広がる山々を眺めると、どの山にも登りたくなってきます。「あの頂を踏んでみたい。」 多かれ少なかれ、修験者にもそんな感情があったのでしょう。
13時少し前に山頂を発って、再び登山口に戻ってきたのが15時過ぎ。休憩込みで6時間ほどの行程でした。「観音寺コースは尾花沢側より入山者が多い」という評判は目にしていたものの、道中行き会ったのは3人だけ。夏休み前の平日だからか、登山客もまだそう多くはなかった模様です。
帰りには以前来たとき目にして気になっていた水汲み場「黒伏観音水」に寄ってきました。黒伏高原の周辺は水場に恵まれていて、外飯の時など重宝しそうです。
今回は船形連峰の主峰にして最高峰の御所山に登ってきましたが、山頂から山並みを眺めれば、やはり他の山も気になってきます。次は黒伏山あたりにも登ってみたいものです。