何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

ポプコムプログラム「GEM」




また一本MSXプログラムを打ち終わったのでご紹介。
今回紹介するのはポプコム86年4月号掲載、
田中浩太郎さん制作のアクションゲーム「GEM」です。


主人公は宝石の国の王子ジェム、
ある日王様から「デビルボールを討ち取れば王位を譲ろう」と言いつかり、
悪魔の森にある仇敵デビルボールの居城に向かったが...という物語。
ゲームではデビルボールの城でのジェムの奮闘が描かれます。





作者曰く、本作は「リアルタイムアドベンチャーロールプレイングもどき」。
ですから当時大人気だった「ドルアーガの塔」や「ハイドライド」の影響が見られます。
各面制限時間以内にドアを開け、部屋から出れば面クリア。
そのためには様々な謎を解いていかなければなりません。


さらに本作を独特なものにしているのは、主人公が「宝石」であること。
丸い宝石なので転がって移動するというわけですが、移動には慣性が働き、
さらに硬さを示す「ソリッド」パラメーターが存在します。
勢いを付けてぶつかることで、壁を破ることができるので、
謎解きやアクションに利用してくださいというわけです。
最終目的は、最終面で仇敵デビルボールを倒すこと。
そのためには高い体力とソリッドが必要となるため、
最終面に向け、いかにパラメーターを持っていくかという、
リソース管理の面白さも盛り込まれています。





謎とは言いますが、実はドアは各面「隠しスイッチ」を踏むだけで開きますし、
アイテムも壁にぶつかるたび一定確率で順番に従って出現するだけ。
このあたりが「もどき」と称したゆえんなのでしょう。
わかってしまえば何のこともないのですが、本作の巧いところは、
複数の条件を満たさなければ、スイッチが押せなかったり、
ドアに入れないようにしているところ。
特にソリッドを上げるには、パワーが低い状態でソリッド上昇アイテムを
取らなければならず、時にわざとパワーを減らすといったことも必要になります。





ひとつひとつのルールやアクションは単純なのですが、
「ドアを開けて脱出する」「そのために隠しスイッチを押す」
「そのために隠されたアイテムを手に入れる」
「そのために壁にぶつかってアイテムを出現させる、壁を壊して道を作る」
「そのためにソリッドやパワーを高める」といった具合に、
それらを組み合わせることで、謎解きをそれらしく見せ、
ゲームの奥行きを出しているところに、特に唸らされます。






驚きなのはこの内容がオールBASICで、かつ16Kバイトに収まっていることです。
リストを読めば技術的に難しいことは何一つしておらず、
ルールを素直にBASICに落とし込んでいる印象があります。ゆえに改造も簡単です。
問題があるとすれば、本作はけっこう難易度が高くて、
さらにコンティニュー機能がないこと。
特に高次面ではシビアなキー操作が求められる場所もあります。
解法がわかった状態でプレイしたのですが、
エミュレーターのステートセーブ機能を使っても相当に苦戦しました。
それを考慮しても本作はルールのまとめかたが実に巧みで、
非常に楽しめる作品だと言えるでしょう。


「GEM」のゲーム自体は、86年当時から知っていて、
ずいぶん気になっていたのですがリストが手元になく、
遊びたいのに遊べないという状態が永年続いていました。
それが最近、親切な方からリストの提供をいただき、
めでたく遊べるようになったという、念願の作品でもあります。
最後になりましたがリストを提供してくださった松原圭吾様に
この場を借りて改めて感謝とお礼申しあげます。

8192階分飛び跳ねられます




某所でたまたま「投稿プログラムにおけるステージデータ格納法」
みたいな話をした関係でなぜかこのゲームの話題が出てきたもんで、
気になって入力してしまった次第。
MSX・FAN読者の間では有名なジャンプアクションゲーム、
NAGI-P SOFTさんの「8192階建ての塔」(90/4)です。


昔の投稿プログラムでは面データの圧縮というのは重要な技術で、
これができるとできないとでは、ゲームのボリュームや入力しやすさに
大きな違いが出るというものでした。
本作ではMSXのRND関数が疑似乱数であること、
つまり一見バラバラであっても、毎回同じ順番で同じ数が出てくることを利用して、
プレイする度に同じ地形が出てくる仕組みになっています。
疑似乱数を利用して同じステージを作成することで、
面データを省くという手法は、当時の自作PCプログラムでは
割とよく見かけるものでした。


ところで、毎回違った数が欲しい場合は、RND関数初期化の際に、
毎回異なった引数を与え、乱数系列を変えてやるのが一般的でした。
MSXユーザーおなじみ、R=RND(-TIME)というやつですな。


さておき、ゲーム自体はシンプルなワンキーアクションゲーム。
マイキャラを適当なタイミングでジャンプさせ、
奈落の底に落ちないよう足場を飛び移りながら上の階に上っていきます。
ジャンプの高さはキーを押している「溜め」の長さで決まるのですが、
長く押し続けていると溜めがリセットされ、ジャンプ力が落ちます。
さらにマイキャラは自動で左右に往復し、プレイヤーが動かせないのが味噌。
プレイヤーにはマイキャラの位置を見極めながら、
適切なタイミングと高さでジャンプする技が求められるというわけです。
素敵に面白いというほどではありませんが、
やられる度に悔しくて、ついつい何度も遊んでしまうスルメのような作品です。
題名の「8192」とは、どうやら階数が変数の限界を突破して
Overflowを起こす数らしいのですが、果たして本当なのかしら荒井でした。

「THE GHOST」




また一本MSX用プログラムを打ち終わったのでご紹介。
今回紹介するのはポプコム87年11月号掲載のアクションゲーム「THE GHOST」。
作者は以前紹介した「SPIRIT」シリーズや「CHAS!」の制作者でもある松原輝彦さんです。





以前住んでいた城にへそくりを隠していたことを思い出した主人公のGuy君、
幽霊のすみかとなっている城から無事へそくりを取り戻せるか...という、
真面目に考えたのかふざけているのかよくわからないストーリーがあるのですが、
要は敵をうまくよけつつ各面のゴールを目指すというゲームです。
画面構成や敵の動き等はもろ「SPIRIT II」ですが、
強制横スクロールを採用しているのが「SPIRIT」シリーズとの大きな違いです。






敵にぶつかれば体力が減り、体力がなくなればゲームオーバーとなります。
プレイヤーに攻撃手段はなく、敵はなるべく避けて進むことになるのですが、
「SPIRIT II」と同じ処理をしているのか、画面左端が安全地帯になってます。
ゆえにできるだけ左端をキープするように進むことになるのですが、
左端でも池や剣山といった地形由来のダメージは無効化できず、
さらにそこでスクロールする地形に挟まれると即ゲームオーバーになるので、
油断ができないという寸法です。
さらにところどころジャンプテクニックを試すような箇所もあれば、
袋小路、崩れる足場等の罠もありまして、不用意に動くとハマるという作りは、
同氏の他の作品に通じるものがあります。
特に「SPIRIT II」と共通する部分が多く、「CHAS!」と並んで
その前身となったことは間違いないでしょう。






プログラム自体はよくできているのですが、惜しむらくはそのゲームバランス。
操作性はお世辞にも良いとは言えず、足場を飛び移るのも一苦労。
さらに敵を倒すこともできませんし、やられてもコンティニューできないため、
遊んでいると欲求不満が積もります。
自作ゲームプログラムとしての出来はいい方ですが、
まともに遊ぶとなれば、苦労することになるでしょう。

例によってYouTubeに動画をアップしたのでどうぞご参考に。
本来は5面構成ですが、プログラムを弄って1面とエンディングだけを収録してます。

8bit時代は超高級品

タイの大洪水による影響が日本の消費生活にも広がっている。 パソコンのハードディスクドライブやプリンター、カメラ、冷蔵庫、眼鏡レンズなどが品薄になったり納期が遅れたりしていて、一部で値上がりが続く製品もある。このままではかき入れ時のクリスマス、年末商戦にも影響が及びそうで、小売店では気をもんでいる。 「1万3980円」。東京・秋葉原のパソコン部品店では3日夕、店内に掲示されているハードディスクドライブ(HDD)の値段表が全面的に貼り替えられ、これまで7980円だった容量500ギガ・バイトのHDDは約1・8倍に。ほかの製品も軒並み、1・5倍前後に値上がりした。 タイは、HDDの一大生産拠点で、生産停止によりこの店の仕入れ値は1か月で2〜3倍に跳ね上がったという。

20年以上前、十数メガのHDDが十万円以上で、
熱転写式プリンターが数万円した頃を知るオヤジとしては、
今がやたらと安くなりすぎたのだという気が。
洪水被害に遭われたタイの方々にお見舞い申しあげます荒井でした。

オリジナルはミツミのベルトドライブです

ソニーは30日までに、韓国の電機大手サムスン電子との液晶パネルの合弁事業を解消する方向で検討に入った。赤字が続くテレビ事業の立て直しのため、より安価なパネルの外部調達を増やし、コスト削減を図る。日韓の世界的な電機メーカーが手を組んだ合弁だったが、パネル価格が急落するなど事業環境が急変し、その役目を終えた。




うちのF1XDJにはサムスンのダイレクト式FDドライブが移植されている荒井でした。

KUNFU CHAN




 またプログラムを一本打ち終わったのでご紹介。今回は電波新聞社の「MSXMSX2プログラム大全集」掲載のアクションゲーム、「KUNFU CHAN」(カンフー・チャン)です。初出はベーマガ85年9月号ですが、その後大全集に収録されたものです。






 悪党チンタオ族から村を守るため立ち上がった主人公チャン、迫り来る敵を撃退せよ...という物語で、内容はご覧のとおりのアクションゲーム。プレイヤーは拳法使いチャンを操り、跳び蹴りとパンチを武器に敵を倒していきます。各面10人のチンタオ族戦士を倒せば面クリア。逆に敵にぶつかったり堀に落ちれば1ミス。残機を全て失えばゲームオーバーです。
 ...まぁ、作者さんは「スーパーチャイニーズ」を作りたかったのだと思います。


 さておき跳び蹴りはリーチ・当たり判定・威力とも申し分なく使い勝手がいいのですが、その分敵を倒しても得られるスコアは低めです。パンチは間合いをとるのが難しいかわり、決まったときのスコアが高め。さらにパンチだけで面クリアすると、ボーナス&エクステンドが得られる特典があります。
 跳び蹴りで安全に進むか、パンチでボーナスを狙うかはプレイヤーの好みと腕次第。さらに敵が上下方向から迫ってくるのに対し、チャンが攻撃できるのは横方向のみ。高次面になるとマップが複雑になり、むやみに跳び蹴りを繰り出すとすぐやられます。うまく敵を引きつけ、有利な間合いで戦うことがゲームのポイントです。





 アイディアや操作系はよくまとまっているのですが、多くのベーマガ作品がそうであるように、BASICゆえの遅さや操作性の悪さが目立つのが残念。当時は面白く遊んでいたはずなのですが「マシン語で作り直したものを遊んでみたい!」とか思ってしまうのは、その後様々なゲームに慣れてしまったせいでしょうか。