こないだガソリンストーブ・スノーピークのギガパワーWGストーブをオーバーホールに出しまして、修理が終わって、今日手元に戻ってきました。
ギガパワーはドラゴンフライを買う前に使っていたもので、日本一周にも持っていった相棒のひとつです。旅から帰ってきた後も、だましだましOリングやらニードルやらカーボンパッキンやら交換しながら使っていたのですが、数年前に本体がディスコンになり、メンテナンスパーツも手に入れづらくなってしまいました。それでこれ以上メインバーナーとして使い続けるのは危険と判断し引退を決定、そういうわけでドラゴンフライを導入したことは、以前ネタにしたとおりです。以来ギガパワーは荒井の家の押し入れで隠棲していたのでありました。
しかしちゃんと手入れして消耗部品さえ定期的に交換していれば、めったなことでは壊れないのが山用火器のよいところ。ギガパワーも手入れさえできればまだまだ活躍できる状態でした。OHできればとはかねがね思っていたのですが、ドラゴンフライで間に合ってしまっているため積極的にOHに出す理由もなく、いつの間にやらギガパワーは押し入れの肥やしに(おい)。
いかにスノーピークが全製品の永久保証を謳っていても、保守部品がなくなればそういうわけにもいきません。このままではいかんと一念発起して、先日とうとうOHを依頼したという次第です。
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依頼にあたっては、こちらのblogさんのこのエントリが大いに参考になりました。2015年の1月に同じくギガパワーWGをOHに出したレポートです。これを見て今でも部品交換をともなうOHが可能なことを知り、だったら俺もそのうちやろうと思った次第。あれから1年以上経ったけどな(おい)。
スノーピークのユーザーサービス係に、OH可否の問い合わせメールを送ったのが8月23日でした。翌24日に返事が来て、廃番品なので現物を見て対応を検討したいとのこと。もっともなので、26日に現物をスノーピークに郵送*1。購入時期やこれまでの使用状況、要望や診て欲しい箇所等々を詳述したメモを添えておきました。具体的に要望したのはOリング・カーボンパッキン・ジェネレーター・へたったネジの交換。それと連絡は電子メールでくださいというものです。
品物が届きましたというメールが来たのが8月30日。見積もりメールが9月7日。これに対してゴーサインを出したのが8日午前2時でした。ちなみに支払いはクレジット。納期は約3週間とのことでしたが、本日21日に無事帰還。この間約1月でした。
さっきのblogさんでは、発送から修理完了・返却まで3日でしたが、これは冬場のシーズンオフ期に依頼したためでしょう。
お盆後は修理依頼が殺到するそうで、特に今の時期は修理に時間がかかるのだとか。スノーピークのサイトには、急ぎでなければ時期をずらしてもらえるとありがたい、という旨の告知もされています。今回時間がかかったのはそういうことと思われます。うぅ、スノーピークの中の人ごめんなさい。
さて、いざ仕上がりを見てみると申し分がありません。要望したことすべてはもちろんのこと、さらにサビサビになっていたウェーブプレート*2は全取っ替え、締め込みが甘かったスピンドルナット*3の締め込み調節、バーナーリングのクリーニング、試運転もやってくれてました。このあたりはさすがメーカーの仕事。しっかり診ていただいたようです。
交換前のパーツも返却されます。改めて見てみればOリングはボロボロで、ポンプ用のOリングには亀裂が入ってました。Oリングの破損は一見些細でありながら、燃料漏れにつながる危険な故障です。そりゃろくに交換もせず永年使っていればこうなるよなぁ(汗)
こちらは交換前のジェネレーター。本燃焼の前に液体燃料を気化させるためのパーツです。ギガパワーWGの大きな売りである一発青火燃焼に欠かせないものですが、消耗部品でもあります。十何年使っていい加減へたっているはずなので、これも交換しておきたかったパーツでした。
末端のネジのところから突き出ている針はスピンドルの先端。ギガパワーWG最大の特徴であるとろ火を実現するための重要なパーツです。
このスピンドルの根元にカーボンパッキンが填まっているのですが、クリンナップが微妙な上、このカーボンパッキンが鉛筆の芯のような素材でできていてもろいといったらありゃしません。ギガパワーWGの要でありながら、扱いに細心の注意を必要とするため、この部分はユーザーメンテ泣かせです。このへんの調整もやってくれたとのことですから、願ったり叶ったりでした。三条に足を向けて寝られません(おい)。
ありがたかったのはOリング各種にポンプ用スプリング、カーボンパッキン、ポンプユニット用のボール等々、消耗部品のスペアパーツが付いてきたことでした。これだけあればさしあたり、自分である程度の交換やメンテが可能です。
現行品だった頃には、これらパーツがセットで販売されていて、ユーザー自身で消耗部品を交換できるようになっていました。ところが今ではもちろん廃番なので、まとめて手に入れることができません。
MSRのストーブは、廃番品を含めて交換部品や消耗部品が、ネットでかんたんに買えるようになっています。スノーピークでもそういうサービスをやってくれると助かるのですが...
こんな具合にオーバーホールは至れり尽くせりの内容ながら、費用は送料込みでなんと2160円。スノーピーク大丈夫かと思ってしまうほど安くて済みました*4。その分元の値段が高いんだとはよく言われてますが*5、さすが永久保証を謳うだけのことはあります。メールの対応も至って丁寧で好感が持てました。スノーピークのアフターサービスの評判のよさはあれこれ耳にしていましたが、噂どおりのものでした。スノーピークさんありがとうございます。
...実はこれだけ書いておいて、まだ動作確認をしていません(おい)。
正直、ギガパワーWGストーブは扱いに相当気を遣うモデルです。プレヒート不要とはいうものの、点火後にスタートレバーを切り替えるタイミングを見切るには慣れが必要です*6。メンテナンス時も部品は多いし、スピンドルAssyやカーボンパッキンの扱い、ナットの締め込みにしくじると、機能回復どころか逆にダメになります。点火にしくじれば即火だるま。ドラゴンフライとどちらが使いやすいか?と聞かれたら、その答えは迷うことなくドラゴンフライです。ドラゴンフライはシンプルかつ大雑把なモデルですが、それゆえに扱いもメンテナンスも非常にラクなのです*7。
ギガパワーWGは大雑把ということを許してくれません。扱いには相当にナーバスなところがあります。手順や「作法」を間違えたら手痛いしっぺ返しが来ます。Amazon等でさんざんな評価が付いているのは、そういうことなのでしょう。
しかし繊細に向き合うなら、比類無き高性能を発揮してくれます。極とろ火も可能な得意の火力調節、風への強さ、火力効率、静音性等々...よくも悪しくも日本製らしい繊細さと高い性能を備えたストーブがギガパワーWGというモデルなのだと、十年来のユーザー荒井は考えています。
ガソリンストーブはそれぞれ長所・短所があって、短所が弱点とならずに魅力となってしまうという不思議な道具であります。ユーザーに必要なのは、特性を見極めて適した使い方をしてやること。そこが使い手の腕が問われるところで、また面白いところでもあります。
今後もドラゴンフライをメインに使っていくことは変わらないでしょうが、再び使えるようになったギガパワーにも復帰してもらって、またちょくちょく外に持ち出して遊んでやろうと思います。引退するにはまだ早いんだぜ。
とりあえず試運転がてら、近いうちギガパワーでまた米でも炊きたいなぁ。
*1:燃料タンクは当然空にしておかなければなりません。
*2:火を拡散するための部品です。
*3:火力調節用のスピンドルを押さえている六角ナットです...といってもどれだけの人が分かるかしら。
*4:かつて売られていたメンテナンスキットはこれと同じくらいの価格でした。メンテ部品とジェネレーター代だけでこれの倍以上の値段がするはずです
*5:もっとも、購入当時の価格が1万4000円ほど。現在のMUKAストーブやドラゴンフライよりも安かったりして。
*6:経験的に、ジェネレーターが十分温まってスピンドルから噴射される燃料が見えなくなったのを見届けてから切り替えるとうまくいきます。
*7:もちろん火を扱うものである以上、使用にはきちんと気を遣う必要があります。いい加減に使えば危険なものであることに変わりはありません。Respect Fire