何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

それを可能とするもの

慈恵病院の蓮田太二理事長は「ポスト設置の目的は、相談してもらうこと。預けられた数ばかりが報道されていますが、それよりも増えているのは全国からの相談です」と、ポストの意義を強調する。  慈恵病院によると、赤ちゃんポスト設置が報道された一昨年12月から昨年12月までの約1年間に、同病院が設置した24時間対応の電話相談「SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口」に、427件の相談があった。うち、「陣痛が始まった」などの深刻な相談は188件。同病院の手配で出産に至り、迷いはあったが、自分で育てることにした人が24人、特別養子を希望した人が24人いた。  相談のうち7割が県外からだ。大阪府内から電話をしてきた女性は、出産期が迫っていたため、東京のボランティアに連絡。府内では受け入れ病院が見つからないため、新幹線で東京都内の病院に運んだという。  蓮田理事長は「病院の相談機能については、熊本市も熊本県も高く評価してくれているはず。はたして、ゆりかごは一つでいいのでしょうか」と問いかける。田尻由貴子看護部長も「ひとつの病院では限界がある。全国で協力者を増やしたい」と話す

松戸市が「すぐやる課」を創設した際、
全国から多くの自治体がこれを視察に来て、そしていくつかは
これを真似して似たような部署を設けたのですが、
元祖松戸市の「すぐやる課」が順調に運営され続けているにもかかわらず、
真似っこ部署はことごとく失敗してしまったという話があります。
その理由は、うわべだけを真似したことにありました。
元祖「すぐやる課」では、即座に動けるよう、
他部署の承認を待たずに行動できる仕組みを作っているのですが、
ところが真似っこ部署は「はんこや書類」がなければ動けない、
従来の「お役所仕事」の範疇で作られていただけなので、
「すぐやる」ことができず、結局頓挫したのだということでした。


それともう一つ、実際に現場を見てきた友人から聞いたお話。
今や全国的な知名度を誇る湯布院温泉が町おこしに成功した理由は、
町民の教育意識の向上が大きかったとのことです。
我々はどうしても「仕掛け人」や「敏腕プロデューサー」に注目しがちですが
まずは町民の間で自分たちの町を自分たちで何とかしたいという欲求が高まって、
町民の間で町作りに参画しうるほどの教育や勉強が積み重ねられたことが、
湯布院町が町おこしに成功した一番の秘訣であると彼は教えてくれました。


慈恵病院の件も、ポストだけに目が向きがちですが、
他に相談窓口がきちんと用意されてあって、
悩める親子の受け皿として機能しているということは、
恥ずかしながら、実は自分も初めて知りました。
どうしても見えるところに目が向きがちですが、
それを可能としているものは目立たないところにあって、
目に見えるところ以上の役割を果たしているということを、
我々はもっと肝に銘じておくべきなのかもしれません。