何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「カエルの虫とりゲーム」

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 打ち終わったプログラムはもう一本残ってます。というわけで今回ご紹介するのはポプコム86年2月号掲載「カエルの虫とりゲーム」です。
 掲載されたのはポプコムですが、投稿ゲームとは毛色が異なります。それというのも本作は、雑誌巻末に連載されていたプログラミング講座まんが「らくらくマイコン」の作例として登場した作品なのです。


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 当時はホビーパソコン人口が拡大した時期です。ユーザー最大の関心事は、なんといってもゲームプログラミング。当時のパソコン雑誌は、コンピューターの世界に足を踏み入れたユーザーがプログラミングを学ぶ場、という性格を色濃く帯びていました。思うままにゲームを作れるようになりたい、という欲求に応えるため、各誌では毎号のようにプログラミング講座記事を掲載したり、ゲームプログラミングのテクニックを紹介していました。「らくらくマイコン」もそうした記事のひとつ、ということになりましょうか。


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 内容はいたってシンプルなアクションゲーム。カエルを操り、ジャンプで天敵ヘビを避けつつ、舌を伸ばしてどんどんトンボを食べまくります。スクリーン2のLINE&PAINTで描かれた背景はなかなかよい雰囲気。カエルやヘビ等のスプライトキャラもリアルタッチでよく描きこまれています。


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 掲載されたのは連載最終回。講座の総仕上げとなる作品ゆえ、リストはBASICにして330行程度とけっこう長めで、まんがの登場人物も口々に「長い!」と驚いています。ただし「:」で複数の命令を続けて記述するマルチステートメントをあまり使っていないため各行は短く、行数のわりに容量は食っていません。
 マルチステートメントが少ない上、技術的にも難しいことはやっていません。多少無駄は目立つものの、基本的な命令だけで素直に組まれているので、プログラムは相当に入力しやすいです。要所要所にREM文も入っているので、どこで何をやっているのか、どんな処理をしているのかも一目瞭然です。こんな具合に明解に書かれているのは、やはりこれがプログラム講座の作例だからでしょう。


 ただし作りが簡素すぎて、内容は練り切れていません。画面両端はなんと完全な安全地帯。そこでジャンプして舌を出し続けていれば、ヘビに喰われることなしに、延々とスコアが稼げてしまいますので、アクションゲームなのにアクションが不要です(おい)。
 それよりよくないのは、ミスしても得点がリセットされないこと。ヘビに接触するとミスになって「葬送行進曲」まで流れるんですが、ゲームオーバーになるでもなく、得点そのままでゲームが続けられてしまうため、ミスに意味がありません。ゲームとしては大いに難ありです(汗)。


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 それと残念なのは、リストに誤植があって、誌面のとおりに入力すると画面が正常に表示されず、ゲームにならないこと。具体的には背景を描くLINE文用座標データが一部欠けてまして、そのまま入力すると変なところのデータを読み出すことになって、Illegal function callが出てプログラムが止まります。訂正情報は手元になかったのですが、データの方を適宜訂正して、それらしく表示されるようにしてみました。訂正箇所は上記のとおりですので、よろしければご利用ください(おい)。


 ゲームとしては残念なところが目立ちますが、そこを自分で改良するというのもプログラムの勉強にはもってこい。プログラミングが身近だった80年代らしい素朴な一本です。