
80年代当時の数あるホビーパソコンの中でも、MSXは手軽に買えるハードでした。そのため他機種から乗り換えたとか、買い増したというユーザーも多かったようです。今回はそんなベーマガ常連投稿者の方が製作した作品のご紹介。ベーマガ87年6月号より「PEAマン『アルバイト大乱闘』の巻」です。

ユーモラスなキャラデザがまず目を惹く。
「PEAマン」(ピーマン)とは制作者Takaちゃんソフトさんのオリジナルキャラクターです。本作はそのPEAマンが主人公のアクションゲーム。MSX2を手に入れたPEAマン*1は、さらに周辺機器を揃える元手を稼ぐべく、商店街のシャッター開けのアルバイトをすることにしました。しかしその仕事はライバルキャラ・ひーしがすでに請け負っていて、彼奴に負けじと張り合いながら仕事を始めるのだが…というのが本作です。ジョイスティック専用ですので、あらかじめ接続しておきましょう。
というわけで、プレイヤーはジョイスティックでPEAマンを操り、ひーしに負けないよう、商店のシャッターをどんどん開けていきましょう。店は全部で20軒。全てのシャッターが開いたらラウンド終了です。この時点で開けたシャッターがひーし以下ならクビ、ゲームオーバーとなってしまいます。

よう、ひーし。遅かったな!
ラウンドクリアだけなら、7面くらいまではそれほど難しくないでしょう。ひーしの動きは気まぐれで、まじめに働く気配がありません。そんな商売敵を尻目に黙々とシャッターを開ければいいだけです。ひーしもよくこんなんでバイトが務まってたな…

このように、まじめにシャッターを開けるスタイルでプレイするうちは、変化に乏しい退屈なゲームに過ぎません(おい)。
しかし。高得点を狙いだした途端、飛躍的にアツくて痛快なゲームへと変貌します。

本作では、「プロレス技」で相手を妨害できます。技のかけ方は、適当な間合いにひーしが入ったときにトリガーボタンを押すだけ。成功すると「COMMAND」欄のルーレットが回り始めますので適当なところで再びボタンを押すと、そのとき表示されていた技が、アニメーション付きで発動します。
高得点のカギはこのプロレス技です。技が決まると得点なのはもちろん、相手は気絶してしばらく動けなくなりますので、その隙にシャッターを開けまくれるのです。さらに連続で同じ技をかけ続けると点数に倍率がかかります。
一方、間合いを誤った状態で仕掛けると、逆にひーしに技を決められてしまいます。こうなるとPEAマンはしばらく硬直してしまい、かえって不利になってしまいます。より高得点を狙うには、確実に技を決める見切りのテクニックが必要です。

尻に火でも付いたのか、面が進むほどひーしは本気で仕事にとりかかってきます。こうなると技でひーしを足止めしてシャッターを開けに行くという戦術がますます重要になってきます。
PEAマンがひとりで20軒全てのシャッターを開けるのに成功すればパーフェクトボーナス獲得。ふつうにクリアするよりも格段に点数が入ります。

ボーナスの存在がゲームをより面白くしている。
実はまじめにシャッターを開けるよりも、ひーしに負けない程度に仕事に励みつつ、ライバルを妨害しまくる方が、高得点が得られます(おい)。プロレス技を軸にした魅力的なボーナス要素のおかげで、攻撃的なプレイをするほど得点が伸びる作りがなかなかエキサイティング。痛快さを上げるのに一役も二役も買っています。

本作の真価はアグレッシブにプレイしてこそ。
プログラムの主要部分はマシン語化され、動作速度と操作性は申し分がありません。フィールドは気持ちよくスクロールしますし、シャッターが上がるアニメーションもスムーズです。なによりPEAマンとひーしのユーモラスなキャラデザとプロレスのエフェクトが秀逸! 本作の痛快な楽しさを下支えしています。
やはりよくよく吟味すると、飽くまでゲーム自体は変化に乏しく、先を見たくなる展開には恵まれていません。各面スタートが遅いとかキャラのゴミが残る等の粗も散見されます*2。しかし痛快さは抜群! 捨てがたい魅力のある作品となっています。

…てかお前ら、ケンカなんかしないで真面目に働けよ!
制作者Takaちゃんソフトさんは、もともとセガのSCシリーズ向けの作品で知られる投稿者でした。PEAマンも当初はSCシリーズ発祥で、製作者さんは彼が登場する作品を同機種でいくつか発表しています。
本作はそのPEAマンMSX初登場となる作品です。SCシリーズで鳴らした彼がMSXでPEAマンシリーズを発表することになったのは、曰く愛機「SC-3000が使い物にならなくなってしまった」から。そのため性能が似ているMSXシリーズで作品を作ることにしたのだそうです。

問題点はあるものの、この痛快さは素晴らしい!
当時ハードの乗り換えといえば、廉価な入門機から、御三家ハードに代表される高級機、というのが定番ではありました。しかし一方で、MSXに移行したという方もそれなりに多かったようです。MSXは廉価ハードの代表格でありながら、入手しやすさとゲームプログラミングのしやすさ、普及台数において、他のハードより優位な部分がありました*3。MSX2を買ったのはPEAマンばかりではなく、作者さんご本人のことでもあったのでしょう。
Takaちゃんソフトさんは本作を皮切りに、以前紹介した「LITTLEサーキット」等、その後もMSXで何本か作品を発表しています。その中にはPEAマンシリーズもありますので、こちらもそのうち入力したいとおもいます。

ところで。本作のリストには、ところどころに唐突に「A=LOG(1)」という、計算命令が挿入されています。にもかかわらず、その計算結果はプログラム中では一切使用していません。
なぜこのような一見無意味な計算をしているのかというと、それはウェイト稼ぎのため。一般的にはFOR~NEXTループで書くべき処理を、リストの文字数を節約するためか、より短く記述できてかつコンピューターにそれなりの負荷をかける―つまり処理に時間がかかる―対数関数計算で代用しているわけですな。あまり行儀がよいとはおもえませんが、なるほどと感心する書き方ではあります。