何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

栗駒山に登ってきたみたび

これが神の絨毯だい

GR III。PhotoShop Elementsで縮小・切り出し・色補正


 というわけで、またまた栗駒山に登ってきました。今年も隙あらば夏あたりにしろがね草原を歩きたいとおもってたんですが、なかなか隙ができず、気づけばまた10月になってました。
 しかし。10月の栗駒山といったら、最大の見どころ「神の絨毯」と称えられる全山紅葉が期待できます。この光景を自分の目で確かめたくて、これまでこの時期に2回登ったものの、雨合羽がお陀仏になる荒天に見舞われたり*1途中でガスってきて何にも見えなくなったりとで、いまだろくに見られた試しがありません。

去年のおなじところからの眺め。なーんも見えねぇ(泣)

 この時期行けるチャンスは年に1,2回。この調子では果たして荒井が生きている間に拝めるのか。そんなわけで今年こそは見てみたいものだ、と好天が期待できそうな10月初頭のある日、懲りもせず栗駒山へと向かったのでありました。しかも「山頂付近は見頃」という情報を掴んだからには。

朝6時半の須川高原温泉。秣岳からここに戻ってきます

 去年の天馬尾根歩きは素晴らしい体験でした。でもそのおかげで山頂が後回しになり、いちばんいいところでガスに邪魔されてしまってます。今年はその反省に立ち、須川高原温泉からいきなり山頂を目指します。天気が保ちそうなうちにさっさと山頂を目指し、先においしいところを頂いてしまおうという作戦です。ただし歩き応えも欲しいので、帰りは天馬尾根を下るという、去年とは逆のルートを採ることにしました。下山後、須川温泉まで3キロほど歩くことになるけどな(歩き応えが欲しかったんじゃないのか)。

地獄釜。石積みにかつての硫黄鉱山の名残を見る

 今年も6時半前に栗駒峠に到着。平日だからか、駐車場にはまだ相当な余裕があります。ラジオの天気予報を聴きつつ支度して、「東北地方は終日晴れ」の予報を確認してから出発。山頂の朝霧が切れるまで少し時間を稼ごうと、今回は賽の磧(さいのかわら)を経由していくことにしました。
 栗駒山は活火山です。その恵みが温泉ですし、須川温泉周辺ではいまだところどころから噴気が上っているのが見られます。昭和湖の近辺は有毒ガスで通行禁止中。そしてかつては火山活動の産物・硫黄が採掘されていました。

散乱するレンガ。かつて煙突に使われていたものらしい

 山中にはその遺構が残っています。「地獄釜」と称される旧噴火口のあたりが鉱山だったようです。周辺にはレンガが散乱し、人工的な石積みなどもありました。木製のレールも残っているというのですが、山頂が気になるので今回は割愛します。

賽の磧。これも間違いなく栗駒山の一面だ

 その少し先が賽の磧です。あたりは灰色の砂利が広がる荒涼とした場所で、目の前には剣岳こと、険しい岩壁がそばだちます。「神の絨毯」とはまるで異なる光景で、活火山栗駒山の荒々しい側面を見たのでありました。

山伏稜線をふり返る。宮城側もこれぐらい晴れていてくれよ…

 名残ヶ原に出て山頂方面を見上げると、てっぺんのあたりは雲で見えつ隠れつしています。晴れ予報とはいえ「二度あることは三度ある」の事態もありうるなと心構えだけはしておきます。そんな気持ちでゼッタ沢と三途の川を渡り産沼を過ぎ、山頂に至る長い登りをふり返ってみると、北側斜面はなかなか赤く色づいています。鳥海山までは見えずともいいから、せめてこのへんだけは。かくして山頂にたどり着いてみると。





 見事に晴れてました。やったぜ。


 去年おととしとまともに見えなかった宮城側が、今日はガスもなく、まっとうに展望が開けます。真っ先に飛び込んでくるのはもちろん真っ赤に色づき見事に仕上がった「神の絨毯」。3年待ち望んだ光景です。

新しい駒形根神社奥宮ふたたび。狩野英孝さんも出資したらしいぞ

 絨毯を横切るのは中央コースの登山道です。双眼鏡で観察してみると、登山客が何人も、途中の展望スポットで足を停めては紅葉を撮影しています。道の先には車で埋まった広い駐車場も間近に見えます。あれが宮城側の登山拠点・いわかがみ平。意外にここから近いようです。

山頂付近から秣岳方面を見た図。鳥海山まで見えるとは。

 周囲を見渡してみれば、薄雲の向こうにふもと栗原の町が見えますし、南には泉ヶ岳とおぼしき山並みも確認できます。反対側にうっすらと見えるのは早池峰山と五葉山。そして西の方には、なんと鳥海山も雲の上からてっぺんだけ突き出ているのが見えました。栗駒山は眺めが良いという評判は聞き及んでいます。その噂もようやく確かめることができました。これなら一等三角点が立っているわけですよ。

天狗平付近の紅葉。気づけばこの日500枚以上画像撮ってた*2

 念願の光景をひとしきりまぶたに収めたところで、天馬尾根へ。去年は何も見えなかった天狗平のあたりも、今年はくまなく見えます。上空では紅葉を取材に来たテレビ局のヘリコプターが飛び回っています。

この日の展望岩頭。山頂からこの辺までは足伸ばすのがおすすめ

 稜線上はどこもかしこも見事に赤く色づき、見どころばかりです。画像を撮ったり眺めに見入ったりとでなかなか先へ進めません。あちこちでは登山客がカメラを構え、この光景に夢中です。どこからともなく「全然先へ進めない!」「さっきから同じような画像ばかり撮ってるねぇ」と、苦笑する声が聞こえます。どうやらみなさん同じなようです。
 展望岩頭からは、去年以上に昭和湖がよく見えます。その隣にはさっき歩いてきた名残ヶ原。賽の磧は剣岳の裏側に隠れています。龍泉ヶ原のあたりは草紅葉が見頃を迎えつつありました。

栗駒のモン・サンミッシェル。神の絨毯は裏地に至るまで美しい

 展望岩頭を過ぎると、途端に登山者の姿が減ります。秣岳まで縦走する人は限られているのでしょう。ここからは静かな山歩き。ぬかる急坂を下り、草紅葉のしろがね草原を横断すれば、やがて「栗駒のモン・サンミッシェル」が見えてきます。このあたりの紅葉も見事なことは去年確認済みです。
 これほどの光景は、人間には決して作り得ないものでしょう。だから「神の絨毯」と呼ばれるのだろうとおもいます。

県道から展望岩頭と剣岳を見上げる。今日はいい山登りだった

 秣岳の登山口に下りてからは、県道で須川温泉に戻ります。県道から秣岳や展望岩頭を見上げると、ここから意外に高さがあることに驚きます。そして今さっきまであそこを歩いてきたんだなと、本日の山登りをふり返ったのでありました。

天狗平に向かう途中山頂をふり返る。
好い日に登れてよかったよかった

 下山してみればここ3年の鬱憤を晴らすような好天に恵まれ、大願の一つを叶えられました。この日の山頂付近は、口々にこの天気を喜び、絶景を褒め称えあう登山客の声で溢れ、幸福感に包まれていました。実に好い日に登ってくることができました。これも山登りというものです。


 最後にコースタイム。そのうちいわかがみ平からも登っておきたい。


6:20/栗駒峠駐車場-6:32/賽の磧分岐-6:37/旧噴火口・地獄釜-6:50/賽の磧-7:02/名残ヶ原-7:08/苔花台-7:22/三途の川-7:43/産沼- 8:19-8:47/山頂-9:09/天狗平-9:21/展望岩頭-10:22/しろがね草原-10:31-10:45/モン・サンミッシェル-11:00/秣岳-11:46/秣岳登山口-12:24/栗駒峠駐車場

締め。温泉を借りた栗駒山荘と須川高原温泉の野菜ラーメン。
栗駒山は下山後の楽しみも充実している

*1:単に老朽化してただけだ

*2:よくGRIIIバッテリー2個で間に合ったな…