
ちょっとの積み重ねで、ゲームは抜群に面白くなる。そんなことを感じさせる作品です。
というわけでMSXプログラムネタ。本日ご紹介するのはベーマガ85年6月号より「DEEPGON」です。

主人公は深海に棲む怪獣ディープゴン。こいつを操り、上から降ってくるエサを食べまくるというゲームです。制限時間は各面1000カウント。その間にエサを20個食べればステージクリア。時々エサに混じって機雷が落ちてきます。ぶつかったり踏んづけると頭を吹っ飛ばされてワンミスです。どんどん食べてハイスコアを目指しましょう。
…と、言うなれば、ゲーム&ウォッチの時代からよくある「上から落ちてくる物体をひたすらキャッチするゲーム」です。ゲーム自体は定番中の定番、悪く言えばありきたりなやつなんですが、本作はその中でも突出して出来が良いです。それというのも味付けが非常に上手いのです。

起動してまず目を奪われるのは、背景に降るマリンスノーです。マリンスノーはタイトル画面やゲーム中の背景で、なんと1ドット単位でスムーズに降るのが見られます。
このアニメーションは、VPOKEでリアルタイムにVRAMの数値を書き換えることによって表示しています。ゲームのルールや操作自体には関係なくとも、インパクトは十二分。見た目の楽しさをぐっと高めています。

次に注目すべきは「エサを食べるには飛びつかなければならない」というルールです。エサは身体のどこでも受けられるという仕様ではありません。エサはちょうどディープゴンの口吻の前に来た瞬間に、一歩前に出て「飛びつく」ことで初めてキャッチできます。エサを食べるのにワンアクションを必要としたことで、タイミングを計るほどよい難しさと面白さが加わると同時に、「飛びついて食べる」というフィジカルな感覚も再現できています*1。

そして絶妙なのは、機雷も食べられるようにしたこと。機雷はぶつかったり踏んづけるとミスになる上、放置すると海底が機雷だらけになって動ける範囲が狭くなってしまうという厄介者。ただし、エサと同様、食べてしまえるのです。食べれば、足の踏み場がなくなって不利になるという事態を防げる他、なによりけっこう高得点(おい)。口以外の所にぶつかれば当然お陀仏というリスクを冒してでも、積極的に狙いに行きたくなる動機付けが実に心憎いです。

かわいそうだがどこかユーモラス。
他にもキャラクターのアニメーション、複数あるエサの移動パターン等々、随所に小技が効いています。動作速度・操作性も良好。遊んでいてあまりストレスを感じません。
これら工夫や小技自体は、いずれも本当にちょっとしたものです。単なる「上から落ちてくる物体をひたすらキャッチするゲーム」であれば、これら要素がなくとも成立します。しかし、一見シンプルでそれこそ似たようなものが数作られたタイプのゲームでありながら、本作が抜群に面白くなっているのは、まさにこれらちょっとの工夫を積み重ねたおかげなのです。これには全く脱帽するしかありません。
数々の名作をものにしたスタープログラマー・内藤時浩さんはそのむかし、「ゲームが80%完成しても、もう一歩頑張れ。最後の詰めを怠るな。」といったことを仰っていました。遊び手のことを考え、少しの工夫を積み重ねることで、作品全体を飛躍的に面白くできる。小品ながら、まさにその具体例を見るような佳作です。