
ようやく動作確認が終わったのでMSXプログラムネタ。本日はベーマガ85年4月号より「TinyCRNSK」(タイニーくらのすけ)です。
80年代のホビーパソコン全盛時代、「Tiny」(小さい)という英単語はマイコン少年には比較的なじみのあるものでした。おそらく由来はP6用の「タイニーゼビウス」あたりなのでしょう。オリジナルの完全再現が無理すぎていろいろ見送らざるを得なかった移植版や、一部機能を削ったりしたゲームが、しばしばこの語を冠して呼ばれたものです。「グレードダウン版」「簡易版」程度の意味で使われることが多かったようにおもいます。
というわけで本作「TinyCRNSK」は、以前紹介した月刊マイコン掲載作品「くらのすけ」の「タイニー」版です。
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作者はマイコン版と同じkimcoさん。半ば専属的に電波新聞社の雑誌で活躍された腕利きです。
本作は「タイニー」版であるだけに、マイコン版と比べて様々なところが簡略化されています。まずはキャラの大きさが16x16ドットから、8x8ドットと小さくなりました。それにともないゲーム画面も小さくなっています。面数は30から5面に大幅削減。マイコン版が判定処理等に一部マシン語を使用していたのに対し、本バージョンはオールBASIC。面数やマシン語サブルーチンがない分、リストも短く入力しやすくなってるのはいいですな。

内容は当然同じくアクションパズルゲーム。「ストッパー*1」でロボットの動きを停め、押してどかして所定の位置に収めるという、変則「倉庫番」とでも呼ぶべきものです。ストッパーでロボットを停めると別のロボットが動き出すとか、お邪魔キャラ・クレーンに捕まるとワンミスというのも一緒。マイコン版が実装していた、オリジナルステージを作って遊べる機能もしっかり搭載です。

「タイニー」ではあっても、ゲームシステムはマイコン版とだいたい同じものを実現しています。遊ぶだけなら遜色ありません。
ちなみに本作の発表はベーマガ85年4月号で、マイコン版は85年8月号。なぜかタイニー版の方が発表が先です。kimcoさんがこのタイニー版を下敷きにマイコン版を作ったのか、それともマイコン版の方が先にできていたのに何らかの理由で発表がタイニー版より遅れてしまったのかは、定かでありません。

罵倒していいのは「ガングリフォン」の新右衛門さんだけ(おい)
ルールはそれなりに工夫されているし、プログラムの書き方もきれいでわかりやすいです。リストの長さもほどほど。このへんはさすが腕利きkimcoさんらしいと感心させられますが、荒井が「くらのすけ」で不満だった部分まで再現しているのはいただけません(おい)。
「くらのすけ」への不満は3つ。キツすぎるクレーンの移動アルゴリズム、おもいどおりにコンフューザー/ストッパーを出し入れできない繊細すぎるキー反応、そしてミス時の罵倒。このおかげでアクションゲームとしてもパズルゲームとしてもどっちつかずになっている上後味も悪く、積極的に遊びたいという意欲が削がれます。
せっかくいい線行ってるのに最後の詰めの甘さで既存のものを超えられず大損しているゲーム、というのが荒井の「くらのすけ」に対する評価なのですが、「TinyCRNSK」もそこまで引き継いでしまっているのは残念です。