何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

猿羽根山に登ってきた

猿羽根山地蔵尊。ここを目指して登ります

 というわけで猿羽根山(さばねやま)に登ってきました。猿羽根山は舟形町尾花沢市の境目にあります。
 古くは「避翼(さるばね)」と呼ばれ、平安時代には宿駅が置かれていたとされる由緒ある地なのですが、荒井にとっては、折に触れて何度も出入りしているようなところです。
 てっぺんに建つ地蔵尊には幼い頃からお参りに行ってますし、中腹にある歴史資料館もたびたび見学しています。農林漁業実習館は学校行事などでお世話になったものですし、猿羽根峠も幾度か探索しています。そして何より、かつて存在した遊園地には、子供の頃、父親に連れられて何度も遊びに行ったことを今でもおぼえています。ゴーカートとかミニ鉄道とかよく乗ったな*1

2006年当時の猿羽根山。まだ遊園地の廃墟が残っていた頃。
荒井の猿羽根山のイメージはこんなかんじです。

 こんな具合に子供の頃から身近な場所でありながら、実は…ここが登山の対象となる「山」であるというイメージが全くありません(おい)。なぜなら車でいともかんたんに行けるから。用事がある時は国道13号線の猿羽根隧道の脇から延びる車道を登ってくことがほとんどです*2
 ですから猿羽根山が「やまがた百名山」に選ばれた際には、全く意表を突かれました。名前こそ山ではあるけれど、いったいどこをどうやって登るんだ、果たして本当に「山」なのか、と。その昔合宿で実習館に泊まった際は、練習場所である舟形中学校まで、毎日国道を歩いて往復してました*3。まさか国道を歩いて登るというのか。
 というわけで一周回ってかえって興味が湧いてきたので、改めて登りに行くことにしたのでありました…前置き長ぇ!(おい)

西ノ前遺跡公園から出発。
残念ながらキャンプやバーベキューはできません。

 「やまがた百名山」に記載されたルートは、さすがに国道ではありません。JR舟形駅前から「東北自然歩道」を経て地蔵尊に至るルートが登山道として紹介されてあります。今回はもうちょっと登り応えが欲しかったので、舟形駅から少し離れた小国川のほとり、西ノ前遺跡から歩き始めることにしました。こちらの駐車場は広くて余裕があるので、車を置いとくに後ろめたさがありません(おい)*4

すずのがけ湧水。漢字では「清水欠」と書く。煮沸すれば飲めるかな

 西ノ前遺跡は八頭身土偶、通称「縄文の女神」が発掘されたところとして知られてます。近年遺跡公園として整備され、すっかり様変わりしました。公園の看板を見ると、すぐ近くに「すずのがけ湧水」なる水場があるというので、さっそくこちらに向かいます。あたりは湿地のようになっていて、稀少な動植物も生息しているのだとか。このへんは尾花沢新庄道路を通るたび目にしているはずなのに、この湧水や湿地には全然気がつきませんでした。
 登る前に湧水で水でも補給しようとかたわらの看板を見ると「飲用不可」の注意書き。途中でおなか壊すと悪いので、汲むのはやめときました(泣)。
 湧水裏の斜面を登ると、すぐ舟形駅の裏に出ます。そこから県道を渡り、ニコット*5の裏手に回ったところが東北自然歩道「縁結びのみち」の入り口です。

太平山から尾根道を経てスキー場跡へ。スキー場のあたりが最高地点。
さておき猿羽根山にスキー場があったなんて知らなかった。

 ルートは里山ならではのコンパクトさの中に、様々な変化があります。歩いて飽きるということがありません。杉林を抜け、太平山(たいへいさん)で小国川や舟形の町を見下ろしたかとおもえば、タムシバや山桜の咲く雑木林の尾根を進んだり。KDDIとNTTの無線塔を建て続けに経由するあたりでいよいよ最上川が見え始め、旧スキー場にさしかかると、神室連峰から船形連峰に至る山並みが見事に広がります。
 道は広くなだらかで、よく整備されています。要所要所には木段や案内標識もあります。「やまがた百名山」入りを機に、手が入れられたのかもしれません。里山ながら背の高い木があまりなく、全体的に見通しのよい尾根道が続くため、非常に気持ち良く歩けます。意外におもしろいじゃないか…

農林漁業体験実習館と裏からの眺め。登山道は随所で景観に恵まれている。

 実習館の裏は「やまがた景観物語」にも選ばれた景勝の地。コース一番の絶景が望めます。南に広がるのは葉山を背にした最上川と、川に囲まれた毒沢の田園風景。川に架かる赤色の猿羽根大橋がひときわ目立ちます。葉山の北隣に見えるはずの月山は、この日は雲の中でした。

すっかり整地された遊園地跡こと眺望の広場。
一段高くなったところに展望塔が建っていた。

 かつての遊園地跡はすっかり片付けられ、「眺望の広場」と名前を変えています。20年くらい前は荒れ気味の草藪で、展望塔や電車のレールが藪に埋もれながらまだ残っていました。これも「やまがた百名山」選定を機に、手が入れられたのかもしれません。遊園地跡から直接地蔵尊の前まで行けた鉄橋も、いつの間にか撤去されています*6地蔵尊に行くには、一度車道に下りなければなりません。

最後の石段を登る。目指す地蔵尊は目の前だ

 かくして西ノ前遺跡から歩くこと約1時間20分、ようやく地蔵尊に到着。ほぼ標準コースタイムどおりでした。周辺は整備された園地です。山頂であることを示すものがほとんどない上、コースの最高地点でもないので、山頂だというかんじはありません(おい)。「縁結びのみち」の名は、この地蔵尊が縁結びに御利益があることから名付けられています。
 帰りは来た道を引き返し、再び西ノ前遺跡へ。1時間ほどで無事帰り着くことができました。

太平山付近から見る小国川。山は最上川と小国川の境でもある。

 「やまがた百名山」の選定には、できる限りまんべんなく各市町村から山を選ぼうという意図を感じます。ですので「山」のなさそうな舟形からも、「猿羽根山」が選ばれたものとおもわれます。その裏付けとなったのが今回歩いた自然歩道「縁結びのみち」なのでしょう。いったいどこをどうやって猿羽根山に登るのか不思議におもっていましたが、なるほど、変化に富んだ実に好い道がありました。歴史の深さはお墨付き。風景といい、地域との結びつきの強さといい、改めて歩いてみれば、猿羽根山はまぎれもなく「名山」です。

展望の広場の桜。ここはまだ咲き残っていた。

 基本、町に近い低山なので、夏場は暑そうです。快適に歩くなら春か晩秋のどちらかでしょう。道が良く難所らしい難所がないので、トレイルランニングで走ってみたり、冬場にスノーシューで歩いたりするのもおもしろそうです。さらに歩きごたえが欲しかったら、猿羽根峠の旧道に足を伸ばしてみても良いでしょう。
 家に帰って地図を見てみたら、猿羽根地蔵尊のすぐ近くに三角点があることが判明しました…また見に行けということなのか…(おい)
 例によってコースタイム。


13:19/西ノ前遺跡公園駐車場-13:22/すずのがけ湧水-13:25/舟形駅裏-13:29/ニコット前-13:32/西ノ前アンダー-13:35/自然歩道入り口-13:45/太平山-13:59/KDDI基地局-14:01/NTTドコモ無線塔-14:07/スキー場跡-14:21/農林漁業体験実習館-14:25/眺望の広場-14:36/猿羽根峠-14:41/猿羽根山地蔵尊-14:44/相撲場-14:45/忠魂碑-
14:47/一里塚-14:53/眺望の広場-14:56/体験実習館-15:07/スキー場跡-15:13/NTTドコモ無線塔-15:14/KDDI基地局-15:26/大平山-15:33/自然歩道入り口-15:36/西ノ前アンダー-15:41/西ノ前遺跡公園-15:46/西ノ前遺跡公園駐車場



GR IIIで撮影(2枚目のみPowerShot A620)。Photoshop Elementsで縮小。

*1:ちなみにここで走っていたミニ鉄道は現在新庄駅ゆめりあに展示されていて、しっかり乗れたりするんだぜ。

*2:猿羽根峠を歩いた時でさえ、この車道で地蔵尊近くまで行って、そこから歩き始めてた。

*3:今から30年程前、実習館の隣に体育館はまだありませんでした

*4:舟形駅にも車が駐められることになってます。でも下見した際、ゆとりがなさそうだったのでやめときましたw

*5:となりのラーメン屋・雅さんけっこううまいですぞ。

*6:ついでに言うと地蔵尊の前にあった休憩所も、解体されてなくなってました。