何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「トラ番記者のTAKE A CHANCE」




 トラ番記者とは、プロ野球阪神タイガース担当のスポーツ記者のことです。しかしこのゲームは果たしてそんなゲームなのか。というわけで本日ご紹介するのはMファン91年8月号掲載の「トラ番記者のTAKE A CHANCE」です。

ボールとカメラのフレームです(おい)

 プレイヤーはトラ番のスポーツ記者です。試合中の決定的瞬間をカメラに収めましょう。ゲームを始めると画面左から次々に球が飛んできます。四角い枠はカメラの測距点です。球が四角に重なったら、すかさずスペースキーでシャッターを切りましょう。枠内に捉えれば得点です。枠の中心でしっかり捉えるほど高得点。逆に外れると得点は低いです。1ステージは10球。各面10回撮影して合計点が70点に満たない場合、そこでゲームオーバーとなります。3回以上ど真ん中に捉えると、その回数に応じて得点に倍率がかかります。高得点を収めるには動体視力と反射速度が必要です。

野球撮影ゲームには見えない画面だが
ゲームに必要なものはもれなく表示されている

 …と、「阪神タイガース担当記者が、決定的瞬間をカメラに収めるゲーム」という設定があるのですが、ゲーム自体はそんなことをみじんも感じさせないほど抽象化されています。画面はやたら無機的で、ボールを投げる投手や球場の類いは一切登場しません。ボールも野球ゲームのごとく一球一球丁寧に投球のモーションが描かれるというものではなく、上から順に一球撮ると次から次へと飛んでくるという素っ気なさです。そもそも画面を見ただけでは何をするゲームかさっぱりわからないという(おい)。
 しかしこの抽象化された作りゆえ、本作は非常に軽快かつテンポ良く遊べてしまうのです。要は「飛んでくるボールが四角のところまで来たらスペースキーを押す」ゲームです。野球を題材とするゲームにありがちな冗長さというものがありません。面が進むほど球速が上がったり枠の位置がボールに近づくといった難易度が上がる工夫も忘れていませんし、何より、ど真ん中倍付けボーナスがアツいです。単純だからこそ何度でも遊びたくなる良作に仕上がっています。

あいかわらず素っ気ないエンディング。ステートセーブで見てやった(泣)

 全10面クリアでオールクリアです。オールクリアすると「六甲おろし」が流れてエンディングとなります。野球を題材としたゲームでありながら、野球に関するゲームだと作内で主張しているのはせいぜいここくらいのものです。


 もしこのゲームが、「激ペナ」や「燃えプロ」のような画面構成で、ピッチャーがモーションとともに一球ずつ投げるボールを、ファインダー内に捉えるなんてかんじのグラフィックを実現していたら、確かにトラ番っぽさは増していたでしょう。しかしここまで軽快で夢中になれる内容になっていたか、とかんがえると、そうでないような気がします。ですのでこのゲームは、このスタイルが正解だとおもうのです。