
30年前の投稿プログラムにおいて、アーケードゲームの真似っこはおなじみのものでした。「アーケードの醍醐味を我が家のマシンで!」。当時はアーケードゲームこそがコンピューターゲームの最高峰であり、それらを模倣したなんちゃってアーケードゲームは、投稿プログラム界の一大ジャンルとなっていた感があります。
...とまぁ、当ブログや拙サイトで何度も書き散らしていることではありますが、今回ご紹介する「そこにビルがあるから」(Mファン89/8)は、そんななんちゃってアーケードゲームです。
本作はご覧のとおりの「クレイジークライマー」風アクションゲームです。主人公を操り、開閉する窓を手がかりにひたすらビルを上っていきます。閉じた窓に手をかけたり、手をかけた窓が閉まったらあえなく墜落死。このあたりは本家「クレイジークライマー」同様です。ただしMSXの2画面プログラムゆえ、数々のお邪魔キャラやお助けキャラは登場しません(おい)。

もっとも。最大の違いは主人公の操作方法でしょう。本家はツインレバーを採用していましたが、再現が難しかったのか、本作ではカーソルキーだけに変更されています。カーソルキーの左右だけで手の上げ下ろしと左右移動をこなすのですが、それぞれの操作をする際に「切り替え」を必要とするのがくせ者です。
登る際はカーソルの左右を交互に押します。ただしこの時は左右移動ができません。左右移動するためには一度カーソルキーの下を押し、モードを切り替えてやらねばなりません。左右移動後、再び登る場合はカーソルの上を押し、登るモードに切り替えます。
そのため操作がややこしいことになっています。登ろうとおもってカーソルの左右を押しても上を押し忘れて登れず、左右に移動しようにも下を押し忘れて移動できず...「切り替え」に慣れない限り、自在に動き回ることはできません。
「スペースキーを押しながら左右を押せば登る。離しながらなら左右に動く」「カーソルで登る。AとSで左右移動」といった具合に操作を簡略化すれば、かなり遊びやすくなるでしょう。ただしこのややこしい操作でなかったら、果たして面白くなるのか..という気もします。操作にクセがあるゲームとは、操作方法を楽しむゲームでもあるのです。

ところで本家ではツインレバーの直感的操作が大いに評価されました。一方モードを意識しなければならない本作の切り替え操作は、直感的操作とは対極にあるものです。ですのでおそらく、本作は本家とはかなり感覚が違うものとおもわれます*1。
「クレイジークライマー」に憧れたのに違うものができてしまったことについて、作者さんは「これはいけるぞーと思っていたんですが、日が経つにつれて自信がなくなって、あきらめてしまいました。」と述べています。
*1:残念ながら荒井は「クレイジークライマー」をやったことがないのです(泣)