何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

加茂と湯野浜と大山を巡る話


誰も期待していなかったでしょうが、約束通り、加茂坂峠のお話です。


そういうわけで昨日、鶴岡市の加茂坂峠に行ってきました。
加茂坂峠はこれまで何度か通ったり行ってきたことはあるのですが、
今回はこれまでとはひと味異なる訪問となりました。


峠の歴史を簡単に説明しますと、19世紀初頭に行者鉄門海によって開削されて以来、
明治・大正・昭和・平成と、改修を重ねながら加茂地区と大山地区を結び続けています。
今回見てきたのは、以前紹介した加茂隧道以前の古道で、地図には載っていません。
古道は幅3メートルはある立派なもので、ちょっと整備すれば立派な登山道として通用しそうです。
ただ、やっぱり廃道ですので、たびたび現れる倒木や道の真ん中に生える立木や若木、
シダの類に悩まされつつ登っていくこととなります。
春先でさえこうなのですから、夏になったら一体どうなるんでしょう。


さておき、大山側はつづら折りで斜面を登っていきます。木の合間からは月山を背景に、
庄内平野や下池、大山の集落がよく見えまして、登りの疲れも忘れる光景が楽しめます。


15分ほど登ると鞍部にたどり着きます。鞍部は3メートルほどの高さの切り通しになっていまして、
この道が人為的につくられたものであることが推測できます。
切り通しの上に登ると、日本海がわずかに見えまして、この峠が海に向かう道であることを感じさせます。


加茂側も古道に沿って下りていくことになります。
杉林が現れるあたりから若干道が分かりづらくなりますが、基本的には谷筋に道が開けています。
下る途中、うちこぼれた祠がありますので、これが道しるべがわりになります。
この道がまだ現役だった頃に、道を利用する方が寄進したものなのでしょう。
正しい道筋だとほっとすると同時に、現在の姿に時の流れというものを感じずにいられません。
加茂側の出口付近は藪と倒木だらけですが、これを突破して高館山に至る車道に出れば、
めでたく加茂坂峠踏破となります。
鞍部からここまでが約30分です。荒井はFM3A*1を弄りながらでしたので、
真面目に歩けばもうちょっと所要時間は短くなるはずです。
全体的に藪や倒木が多いですが、それ以外は勾配も緩やかで、非常に越えやすい道です。


大山に戻る時は加茂坂トンネルを抜けるか、あるいは来た道を引き返すかすることになります。
昔は加茂隧道ですぐに戻れたのですが、現在は閉鎖されているので、遠回りを強いられることになります。
荒井は来た道を引き返して*2大山口に置いてある車のところまで戻る羽目になりました。


加茂坂峠を越えた後、湯野浜と善宝寺を少し歩いてきたのですが、
どこもやけに寂れていて、活気がないのは寂しい限りでした。
今は春休みですので、湯野浜にはもっと人がいてもいいと思うのですが、
砂浜で遊んでいる人や足湯に浸かっている人こそ何人かいたものの、
温泉街を歩いている泊まり客はほとんど見かけませんでした。


湯野浜温泉や善宝寺、加茂水族館、高館山はもちろん、
荒井が歩いてきた加茂坂峠、笹立隧道跡、旧庄内交通湯野浜線遺構、旭峠などなど、
この界隈には非常に魅力的な史跡や街並み、道が揃っているというのに、
どうもその魅力が巧く引き出されていないように感じられます*3
加茂、湯野浜、大山でもっと連携して、こうした場所を少し手入れして、
散策コースとして売り出せば、きっとすばらしい見どころになると思うのですが...

*1:マニュアル露出なので、撮影にはけっこう手間がかかるのです。

*2:つまりもう一度峠を越した。

*3:年中老若男女で賑わう銀山温泉に匹敵する魅力が眠っていると断言してもいい。