何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「ワンダラーズ」で描かれたもの



やっぱり当サイトの記事で述べていますが、「ワンダラーズ」はストダート兄妹を中心に、魔王復活に絡んだ人間の愛憎を描いています。
兄チェスターは自分の村を滅ぼされた憎しみのあまり、マクガイア王の自滅を企み、古の魔王ガルバラン復活計画に手を貸すのですが、
アドルや妹エレナの重ね重ねの訴えのほか、
旧友ドギの「レドモントを世界一の街にするという夢はどうなったんだ。」という言葉に揺り動かされ、自分の過ちを悟ります。
結局チェスターは自分を犠牲にしてガルバランを封じ、レドモントに帰ってくることはありませんでした。
そして旅立ちの朝、アドルはレドモントの責任者、エドガーに一つ頼み事をして街を出て行きます。
曰く「僕がまたここに来る時には、一回り大きくなった街を見せてください。」と。


アドルは亡きチェスターの夢を町の人に託していったわけですが、
当サイトの記事用に「ワンダラーズ」をやり直して初めてこのことに気が付きまして、えらく感心したものです。
フェルガナの誓い」という副題に、荒井はこのチェスターが遺した「夢」を連想したのですが、
それを踏まえてのこの題名だとしたら、実に巧いと思います。
シリーズで古代文明から一歩離れて、人間の心情を描いた作品はこの「ワンダラーズ」だけですので、
物語部分の完成度を高めることができれば、有翼人文明一辺倒と揶揄されているシリーズに風穴を開ける可能性さえ望めます*1
ちなみに大場惑氏の小説版には「友に捧げる鎮魂歌」という副題が与えられています。
...これで「ワンダラーズエターナル」でなかったらどうしよう(苦笑)

*1:ナピシュテムの匣」では、ガルバランも有翼人文明の産物とされているが、個人的には蛇足だった。もしこの関連で有翼人なんてのが出てきたらもうどうしてくれようかと。