何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「JETHERI」




 去年おととしとプログラム入力をサボりがちだったので、今年は少々まじめにやっております。果たしてこの調子でいつまでやる気が保つんでしょうかということで本日もMSXプログラムネタ。今回はベーマガ85年4月号より「JETHERI」です。
 作はかのたかしくん氏。「悟空」「かべ」「いってくる!」等の技巧に凝った、かつ不思議なルールの作品を得意とする投稿者さんですが、本作は不思議な方に属する作品です(おい)*1

ゲームスタート。ワイヤーでどんどん救助していこう。

 題名のごとくヘリコプターアクションゲームです。舞台はマグマ活動で沈みつつある島。そこに取り残された人々をヘリコプターで救出しましょう。しかし島の上空に浮遊する「マグマの化身」*2が妨害してきます。ぶつかればワンミスです。ビームで攻撃するなりうまく避けるなりして対処しましょう。ビームは一発撃つごとにスコアが10点減ります。

ビームは敵をひるませることができる。
ただし一度でも使うとカンストは難しい。

 ヘリは降下する際、下にワイヤーを下ろします。これで要救助者を捕まえると、自動で吊り上げて安全なところまで退避させられます。3人救助する度に島にいる要救助者の色が変わり、救出時の得点も上がります。
 ただし島は次第に沈んでいきます。一段沈む目安は要救助者が島に左から右端に到達するまで。沈みきると強制的にゲームオーバーですので、その前に助けられるだけ助けましょう。迅速な行動が攻略の鍵です。

愉快な動きは大きな見どころ。
助ける度デモを見せられるのはちょっとうっとうしいが(おい)

 チェッカーフラグでのDr.Dのコメントによれば、本作は動きを重視しています。そのとおり、要救助者のアニメ、救助成功時のデモ、次第に沈む島等々、動きを見せる演出にはなかなか力が入ってます。初見プレイ時には「おっ!」と目を惹かれました。ここが本作の大きな魅力でしょう。

残機を失いゲームオーバー。難易度はなかなかシビアだ

 一方でだからこそ、敵の挙動や自機の操作性が気になりました。動きがコマ落としのようにガタガタで、微妙な避けや機動はしづらいです。Dr.Dは「少しも動きに不自然さがない」と褒めてますが、それはベーマガ基準でのこと。もっとスムーズで微妙な操作が可能だったら、ますますおもしろくなったことは確かです。

エンディング。見るには一瞬も無駄にはできない操作が必要だ。

 スコアをカンストすると完全勝利となって、エンディングデモが見られます。挙動や操作性のおかげでシビアな難易度ながら、さりとて全く無理、というものでもありません。難しいなりにゲームバランスは決して悪くもなく、このあたりはさすが腕利きたかしくん、と感心させられます。

*1:同氏の作品ではベーマガ85年11月号掲載の「やまのカラス」あたりもオススメしたい。

*2:火山弾と違うのか

MSX2版「レプリカート」買っときゃよかった

 今年は巳年だということで、「ヘビが出てくるゲームといったら『沙羅曼蛇』だ!」と、SNS界隈では盛り上がっているのだそうです。
 しかしMSXユーザーの荒井、ヘビのゲームといったらなぜか真っ先にこいつがおもいうかばれまして(おい)


「CRAZY TOWER」

「見た目」は本当に悪くない、むしろ良い。

 何もすることがないつれづれに任せて、今年は正月からゲームプログラムを1本打ち終えてしまいました。というわけで本年最初のMSXプログラムネタ。ポプコム87年8月号より「CRAZY TOWER」です。
 一言で言えば、ビルを登っていくアクションゲームです。ゲームを始めると、画面に階層状のビルが表示されます。各フロア、左端からスタートして右端まで行けばその階はクリア。天井からぶら下がっているハンドルに捕まって、次の階に登ります。次の階も同様に、左端から右端へ…といったぐあいにどんどん登っていきましょう。

ゲームスタート。とにかく画面右端を目指そう。

 ただし、床はところどころに穴が空いています。さらにベルトコンベアのように流れます。黙っていれば左に流され、穴に落ちてしまいます。落ちればワンミスです。穴はジャンプで避けられます。穴を避けつつ、絶えず右端目指して走り続けなければ、次の階へは行けません。そればかりか、各階にはモンスターまで生息しています。これにぶつかっても当然ワンミス。残機を全て失えばゲームオーバーです。
 5フロア登り切ればラウンドクリア。ボーナス獲得の上、次のラウンドへと進みます。ゲームはエンドレス。登れるだけ登って、ハイスコアを競いましょう*1

狭い足場めがけてジャンプ! 踏みきるタイミングが肝心だ

 ルールは至って明快。ゲーム自体は「原始的な」プラットフォーマーアクションです。それを次々にフロアをクリアしていく形式に仕立てたのが、本作ならではの見せ方でしょう。
 見た目は上々。オープニングでは主人公がビルに突入したり、フロアクリア時にはハンドルに掴まって次の階に上るデモが見られます。文字もオリジナルのフォントに書き換えて使うという力の入れよう。音楽もプレイ中のBGMこそないものの、区切りに流れるジングルはけっこう手が込んでいます。キャラクターこそ小さいながら、外観はなかなか悪くありません。 

モンスターと衝突! 挙動は単純だが非常にイヤらしい

 しかし。プレイした感触はそれほど良くはありません。動きのぎこちなさが目に付きます。床のスクロールはガタガタ。自機の挙動も8ドット単位です。挙動がスムーズではないので、ジャンプの踏み切りのタイミングが掴みづらいです。無印のMSXなので1ドット単位のスクロールは無茶だとしても、よりスムーズな動きを実現した、同様MSXゲーム存在します。ジャンプで避ける動作は本作の肝であるだけに、もっと頑張ってほしかったところです。

ラウンドクリア。塔を登るゲームなのにあんまり登ってる感じがしない。

 それに加えてモンスターの動きが全くイヤらしいです。床とほぼ同じ長さで流れてくるだけなんですが、それゆえきわどいジャンプを決めるためのまさにその踏み切るポイント上に居続けることがしばしば。非常に邪魔でストレスが溜まります。もうちょっと動きに気を遣えなかったのか…と遊んで不満が募ります。
 本作の操作性は「反応が大雑把なのに繊細な操作をさせられる」というもの。「大雑把な感覚で繊細な操作ができる」という、理想の操作性とは真逆のものです。

あえなくゲームオーバー。もっと感触が良かったら!

 多少うまくなれば進めるようにはなりますが、とにかく弄っていて気持ちよくありません。感触が良くなくて、遊ぶうちにもういいや…となってしまいました。見た目や作りがなまじいいだけに、肝心な部分の作りの甘さが残念です。

*1:スコア用変数は整数型である上、カンスト処理をしていない。なので3万余点取った時点でOverflowが発生して止まるとおもう

だいたい毎日入力中学卒業

去年と同じ本数なのは偶然です

 というわけであれから1年今年もなんとかかんとか生き延びまして、このエントリを書く日になりました。毎年一年最後の日恒例、今年入力したMSXプログラムの総括です。なんとなく始めたMSXプログラムの写経作業も、いつの間にやら15周年ですよ。盗んだバイクで走り出す歳ですぜ(おい)
 今年入力したのは27本。なぜか去年と同じです。去年が少なめだったので、今年はもうちょっと入力する気満々だったんですが、終わってみれば去年と同じ数。気がつきゃ荒井も程なく五十です。入力自体はそれほど大変でもないんですが、動作確認&バグ直ししながらプレイして、そのレビューを書くのが骨折りになってきました。15年やってるにもかかわらず、文章書きはちっとも進歩していないらしいです。むしろ退化してるんじゃないか俺(号泣)


 今年はポプコム作品が多めでした。27本中15本。しかし印象に残った作品というのがあんまりありません(おい)。ポプコム作品が…なのか(おい)、荒井の記憶力が耄碌しているのか…はさておき、問題点は多いものの感触の良さで「赤い風船」、技術をカバーするアイディアの巧みさで「マルチプライ」、そつなく遊べる面白さで「ロック&ダイヤモンド」「ジャンケンロック」あたりがいいなとおもった作品です。
 ベーマガプログラムではなんといっても題名と雰囲気が素晴らしい「まさるくんパッチしよー」が秀逸。きのう入力したばかりの「SUPERジャンケン」も好印象です。

最高の天気の鳥海山と念願の泉ヶ岳。
知ってる山も初めての山も双方に良さがある

 山はあいかわらず隙あらば登ってました。今年登った山で特に印象に残ったのは、なんといっても最高の展望に恵まれた9月の鳥海山と、初の泉ヶ岳でした。季節やコースを変えて何度も同じ山に登れば、よりその山を知ることができます。初めての山には初めての新鮮さと未知のワクワク感があります。
 歳を取るとなかなか新しいことをしなくなります。さらにそろそろ五十にもなると、自分に残された時間は自分がおもうより長くはないと、嫌でも自分の人生の終わりを意識するようになります。
 秋に西川町の天狗山を歩いてきた際、たまたま出会った老夫婦の登山客さんが「初めての山はいいなぁ!」と仰ってました。年老いてなおこのように、未知を求めて已まない生き方ができればなぁと荒井はおもいます。


 最後に例によって今年入力したプログラム27本一覧。来年には残るポプコム作品コンプリートしたい。あと来年こそ栗駒山の神の絨毯拝みたい(おい)。


01:EATER vs WATCHERS
02:こんだてゲーム
03:トランプ3種
04:BONES VS
05:らっか!
06:忍者の苦行
07:PANEL
08:ロック&ダイヤモンド
09:マクベス
10:ゴーストハウス
11:バルーン・ゲーム
12:SEA DIVE
13:ジャンケンロック
14:RESCUE
15:ハングリー・スパイダー
16:マルチプライ
17:ディフェンスバリア
18:メテオ
19:ワードクイズ
20:キャリー
21:赤い風船
22:ギャラック
23:地底探検飛行
24:バトルズ
25:まさるくんパッチしよー
26:WHITE&BLACK
27:SUPERジャンケン

「SUPERジャンケン」

ジャッカルはチョキの5倍の威力があるんだ!(そんな手はない)

 というわけで本年最後のMSXプログラム。ベーマガ85年3月号より「SUPERジャンケン」です。
 荒井はコンピュータージャンケンゲームがあまり好きではありません。その理由はこれまで何度も述べたとおり、勝負が運次第になりがちで、プレイヤーの腕前で勝てないから。ここのところを工夫しない限り、コンピュータージャンケンはおもしろいものにはなりません。

何人で遊ぶか入力。
二人だったら直接ジャンケンした方が早いだろという指摘は早計だぜ

 本作はその味付けがなかなか難しいコンピュータージャンケンゲーム。「MSXこぞう」ことMSX相手に一人でも遊べますし、友だちを連れてきて二人で対戦、ということもできます。起動したらまずはプレイ人数とプレイヤーの名前を入力。その後何回勝負をするかを決め、あとはひたすら勝負! 互いに出す手を選び、勝負を繰り返します*1

人間対タコの対決! 手の勝敗は毎回変わる

 本作はただのコンピュータージャンケンではありません。まず手がグーチョキパーではありません。しかも4つあります。人・鳥・猫・タコ。いったいどれがどれに勝つのかわかりません(おい)。しかし勝ち負けの関係は常時画面上に早見表として表示されてますので、覚える面倒はありません。
 ユニークなのはここから。本作では勝負のたびにこれら手の関係が入れ替わり、毎回勝敗が変わるのです*2。つまりグーが常にチョキに勝てるとは限らず、むしろチョキがグーに勝てたりするのです。
 両者出す手を決めてスペースキーを押すと、画面上の勝敗早見表の中身が、ルーレットのごとく入れ替わります。そしてシャッフル終了と同時に勝敗が確定。勝った方は10ポイント追加。負ければ10ポイント剥奪です。そして勝負を繰り返し、最終的にポイントが多い方が優勝となります。
 なお、本作に「あいこ」のルールはありません。二人が同じ手を選べないので、毎回必ず勝敗が決まります。

見事ジョーカーが決まった! 全ての手をぶっ飛ばすぞ!

 本作の手は全部で4つ。三すくみから外れた手は「ジョーカー」となり、全ての手に勝てます。ジョーカーで勝った場合はボーナスとして30ポイント獲得。ジョーカーを引き当てると大幅に点差を付けられるので、最終的な勝利を目指す上で有利になります。

2人対戦モード。モード切替のタイミングによ っては
2P側の名前が変えられないのは仕様らしい。

 畢竟、本作も乱数次第ではあるのですが、毎回入れ替わる勝敗とジョーカーの存在が、勝負を格段に面白くしています。少なくとも三すくみをコンピューターで再現しただけのジャンケンゲームとは一線を画します。早見表のおかげで勝敗はわかりやすいですし、手のアイコンが常時アニメーションしたりで見て飽きません。
 好みに応じて勝負の回数を選べるのも素晴らしいところ。回数を少なくすれば飽きる前に手っ取り早く終了しますし、飽きるまで遊びたければ回数を増やしてじっくり対戦できます。また、毎回入れ替わる勝敗と得点のルールに、あえて人間同士二人がコンピューターで「ジャンケン」をする意義を見いだせます。文句があるとすれば、ルーレットの止まるのが遅いこと(おい)*3

結局乱数次第なのだが、単調に感じさせない見せ方が巧い。
ところでジャンケンって私に毎晩話しかけてくる妖精さんの名前ですか?(おい)

 ところで、本作はベーマガプログラムゆえ、デバグに迷いました。Mファンのチェックサムのようなものがないので、リストを誌面通りに入力できたか確かめる手立てがありません。特にテキストメッセージ等、演算処理に関係ない部分は「間違って」いてもゲーム自体は正常に遊べてしまうので、どれが正しいのかの判断がしづらいです。
 具体的には勝敗表のバッテンとテキストの長音記号。本来何の文字であるかが、リストを見ただけでは判断できません。アルファベットの「x」なのかグラフィック文字の「×」なのか、演算記号の「-」なのか、グラフィック文字の「ー」なのかが判別できません(汗)*4。荒井は早見表の「○」がグラフィック文字であるため、バッテンも長音もグラフィック文字と判断してますが、本当はどっちなのかわかりません(おい)*5
 また、320行の配列変数Nの添え字は、アルファベットの「I」です。誌面では数字の「1」のように見えますが、1にするとまともに動かないので要注意です。

*1:「後出し」できるじゃないかという指摘もまだ早計です。

*2:だからプレイヤーは「後出し」ができないのだ。

*3:ルーレットのウェイト調整は410行でやってるので、変えたければここに細工しましょう。

*4:本来のかな文字長音「ー」は、本作ではグラフィック表示のためのPCGキャラとして使用されているため、別の文字で代用しているのだ。

*5:Enri's Home Pageさんでは、アルファベットのxでした。

「WHITE & BLACK」

1面。1手でかんたんにクリアしよう

 年末になるとやけにプログラムネタがはかどります。いつもからこの調子でやれればいいのにということで本日もMSXプログラムのご紹介。ベーマガ85年3月号より「WHITE & BLACK」です。

3面。個人的には一番難しかった

 詰め将棋や詰碁というものはよく見かけます。言うなれば本作はそれのオセロ/リバーシ(長いので以下オセロと略)版。つまりオセロのルールを利用した詰めパズルゲームです。
 ゲームを始めると、いくつかの駒が載ったオセロ盤が表示されます。そこに新たに駒を置き、オセロのルールに従って全ての駒を白にしましょう。駒は黒白どちらも置けますが、各面手数が決められています。決められた手数で全て白にできなければやりなおし。成功すれば次の面へと進みます。ステージ数は全5面。オールクリアを目指しましょう。問題数が少ない、盤の色が化けるといった点は少々気になりますかね。

4面。エレガントな完成形

 ゲームの内容はそれだけです(おい)。ただし日本人なら誰もが知っているであろう、オセロというテーブルゲームゆえのわかりやすさと、パズルとしてのおもしろさを兼ね備えています。
 おもえば詰め将棋や詰碁はよく見かけるのに、詰めオセロというパズルはほとんど見たことがありません。理由はいろいろあるのでしょうが、手軽に遊べるコンピューターゲームとしては悪くないものがあります。詰め将棋や詰碁に比べて、簡単に解けるというきらいはありますが、ちょっと考えれば解けるという難易度は、軽い頭の体操にもってこいです。

最終面。意外とかんたんにクリアできる

 ところで気になって「詰めオセロ」でググってみたところ、オセロゲームの公式サイトにありました(おい)。ただしあちらは対戦中の盤面を題材に勝ちきる手を打つことがことが目的であるのに対し、本作は対戦中にはまず現れることのない盤面で、全ての石を白にすることが目的という違いがあります。やはり本作は厳密な「詰めオセロ」ではなく、オセロのルールを利用したパズルゲームと捉えるべきなのでしょう。

あっさりした全クリア画面。作者さんは面を増やす改造法を紹介している